今回は、音楽記事です。
前回は、映画Godzilla のエンディング曲としてデヴィッド・ボウイの名前が出てきましたが……あらためて確認してみると、この映画は劇中で使用されている楽曲がなかなか豪華です。
たとえばエンディングは二曲のリレーになっていて、Heroes の前にはパフ・ダディがジミー・ペイジをフィーチャーした Come with Me という曲が使われていました。この曲はツェッペリンの「カシミール」をもとにしたもので、そこにジミー・ペイジが出てきているわけなので、そこだけ見ても豪華でしょう。
劇中では、当時はやっていたジャミロクワイが出てきたかと思えば、もとが日本の怪獣ということでかラルクの曲なんかも使われています。
そして、それらのなかでもひときわ輝くアーティストが、Rage against the Machine です。
というわけで、今回のテーマは、Rage against the Machine。
映画Godzilla では、No Shelter という曲が使われていました。
Rage Against The Machine - No Shelter (from The Battle Of Mexico City)
あらためて歌詞を見返してみると、曲中にGodzilla
という単語があります。
ゴジラのサントラで初めて発表された曲であり、そのためなんでしょう。
ただ、なにしろレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンです。歌の内容は、およそローランド・エメリッヒの映画に似つかわしくない過激なものになっています。
「第四帝国」という表現が出てくるなど……
歌の内容としては、マスメディアと商業主義のあり方を批判するものというのが一般的な解釈で、そうするとエメリッヒの映画なんかはむしろその批判の対象なんじゃないかとも思えます。この点については、あえてそのサントラに曲を提供すること自体が一種の皮肉という見方もあるようです。エメリッヒのほうも、深く考えずに受け入れたかもしれません。
ただ、映画ということでいうと、007のシリーズの何かでこの曲が使われていた記憶があります。
Rage Against The Machine - Sleep Now In The Fire (from The Battle of Mexico City)
これも、歌詞を読むとおよそ娯楽映画で流されるような内容ではありません。
ベトナム戦争で米軍が使用した枯葉剤を意味する「オレンジの代理人」という言葉が出てきたかと思えば、それに続いて「ヒロシマの司祭」という言葉が出てきたりします。それが何を意味するか日本人にとってはあきらかでしょう。
あと、私事ではありますが……もう十年以上前、投稿生活をしていた私がはじめて予選通過という成績を出せた作品が「炎のなかで眠れ」というタイトルだったんですが、このタイトルは Sleep Now in the Fire からとったものでした。そういう意味で、私にとっては思い入れの深い曲です。
そんなこともあるほど、レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンは私のストライクゾーンど真ん中をせめてくるバンドです。
もちろん世間的にも高く評価されており、90年代最強バンドの一つといっても過言ではないでしょう。
ついでなので、代表曲をもう一つ。
Rage Against The Machine - Know Your Enemy (from The Battle Of Mexico City)
この上なくヘヴィなサウンドにラップを融合させたというところと、そのラップの内容が、ヒップホップというものが本来そうであったはずのラディカルさを持っていたこと……ここが、最強のゆえんです。
政治的にラディカルという点ではなかなかのものがあり、たとえばチョムスキーと対話したりもしています。
Rage Against The Machine - Interview with Noam Chomsky (from The Battle Of Mexico City)
ただ、そういった最前衛をいきながら、きちんとロックンロールのルーツにも根差しています。
Renagade というカバーアルバムを出していて、そこではボブ・ディランをカバーしたりも。
Rage Against The Machine - Maggie's Farm (Audio)
原曲の面影をほとんどとどめていませんが、歌詞も労働者の搾取といった部分をより強調するものに一部改変されているようです。
60年代ロックにさかのぼる例では、他にもローリング・ストーンズの Street Fighting Man やMC5の Kick Out the Jam なんかをカバーしています。ストーンズなんかはむしろ批判の対象にもなりうるんじゃないかと思いますが、Street Fighting Man は路上の政治闘争を歌う歌。そういう観点でチョイスしたのでしょう。
また、ブルース・スプリングスティーンの The Ghost of Tom Joad もカバーしていました。
スタインベックの『怒りの葡萄』をモチーフにした歌で、やはり労働者への搾取ということが問題意識としてあり、チョムスキーとの対話で話していたNAFTAの件なんかともテーマ的につながってきます。
バンドとしてのレイジのバージョンではありませんが、レイジのギタリストであるトム・モレロがブルース・スプリングスティーンと共演した動画があります。
Bruce Springsteen and Tom Morello perform "The Ghost of Tom Joad" at the 25th Anniversary Concert
この組み合わせでは結構いろんなところに顔を出しているようで、以前クラッシュの曲をカバーしている動画を紹介しました。
ちなみにトム・モレロは、この記事の最初のほうで紹介した Come with Me にもギターとベースで参加しているということです。プロデューサー的な役回りだったそうで、ということはジミー・ペイジとも一定のからみがあったでしょう。
ディラン、ストーンズ、ブルース・スプリングスティーン、ジミー・ペイジ、クラッシュ……活動を追っていると、こんなふうにロック史に残るレジェンドの名前が次々に出てくる。そういう、ある種ロックの王道をきちんと踏まえているというところもレイジにはあります。ゆえに、レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンは最強なのです。