ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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クリスマス2024

2024-12-25 22:40:40 | 日記

今日は12月25日。

クリスマスです。

というわけで……毎年恒例となっている、クリスマスソング特集をやりたいと思います。

今回は、カバー曲特集といった感じ。
最初からそうしようと思ってたわけじゃないんですが、動画を集めていたらなんとなくそんな感じになってました。スタンダードナンバーや、有名なクリスマスソングのカバーが中心となってます。


Do They Know It's Christmas?
のっけからカバーといえるか微妙なものになりますが……1984年に発表されたチャリティソングです。その後10年ごとに新たなバージョンが作られてきいて、今年は40周年ということで新たなミックスバージョンが公開されています。過去3回の音源をミックスして、一つのバージョンに仕上げたもの。ライブエイドの発起人でもあったボブ・ゲルドフ、ミッジ・ユーロのコンビに加え、トレヴァー・ホーンもこのプロジェクトに参加しているということです。

Band Aid - Do They Know It’s Christmas? (2024 Ultimate Mix / 40th Anniversary Video)


今年リリースされた編集盤的作品ということでもう一つ、カーペンターズ。
クリスマスソングを集めたアルバムが、今年リリースされています。タイトルは、『クリスマス・ワンスモア』。そのなかの一曲、クリスマススタンダードのWhite Christmasを。

White Christmas (2024 Mix)


ヴィンス・ギル。
昨年、この人がイーグルスのファイナルツアーにサポートで参加しているという話がありました。
彼はクリスマスアルバムをリリースしていて、そのなかで娘のジェニーとともに Let There Be Peace on Earth を歌っています。娘さんもプロのミュージシャンとして活動しているようですが、これを録音したのはローティーンぐらいの頃で、イノセンスを感じさせる歌声です。

Let There Be Peace On Earth


シカゴ。
彼らがクリスマスアルバムとして発表した『シカゴ25』というのをいつか紹介しましたが、その後にもクリスマスアルバムを出していました。
そのなかの一曲、What the World Needs Now Is Love。

What the World Needs Now Is Love

必ずしもクリスマスソングではないかもしれませんが、バート・バカラックの手になるスタンダードナンバーで、いろんな人が歌っています。このブログでも一度、亡き高橋幸宏さんのバージョンを紹介しました。


ボス、ブルース・スプリングスティーン。
クリスマススタンダード「サンタが街にやってくる」をライブでやっている動画です。

Santa Claus Is Comin' To Town (Live in Houston, 1978)


ここで日本代表を一曲。
先日、中山美穂さんについて書きましたが、彼女の代表曲の一つであるクリスマスソング「遠い街のどこかで…」を、倖田來未さんがカバーしたバージョンで。
今頃の季節になるとあちこちで聴こえてくる、日本のクリスマスを代表する一曲でもあるでしょう。

倖田來未-KODA KUMI- Digital Single『遠い街のどこかで…』


最後は、Happy Xmas(War Is Over)。
毎年載せてると思いますが、今年はアリシア・キーズによるカバーで。

Alicia Keys - Happy Xmas (War Is Over) (Official Visualizer)



中山美穂 /「世界中の誰よりきっと」

2024-12-21 22:26:18 | 音楽批評


今月に入ってこのブログでは、「死んだ男の残したものは」ということで今年世を去った方々についていくつかの記事を書きました。

死んだ男の……ということで男性についての記事でしたが、つい最近になって、女性アーティストの衝撃的な訃報がありました。

もちろん、中山美穂さんのことです。

これは、大変なショックでした。

私は結構リアルタイム世代であり……思い出す曲がいろいろついります。
代表曲といっても候補がいくつか考えられますが、Youtubeの公式チャンネルにあったこの曲を。

中山美穂 /「世界中の誰よりきっと」MIHO NAKAYAMA CONCERT TOUR '93 On My Mind

およそ30年ほど前に、WANDSとのコラボで大ヒットした曲。
懐かしいかぎりです。

同期には、南野陽子、本田美奈子、斉藤由貴、森口博子、浅香唯、石野陽子、井森美幸……といった錚々たる顔ぶれが並んでいますが、そのなかにあってもトップレベルで、女性アイドル史において確かに一時代を築いた人といえるでしょう。
冥福を祈りたいと思います。




楳図かずお『漂流教室』

2024-12-14 20:52:40 | 漫画


先日、「死んだ男の残したものは」という記事を書きました。

そこでは、今年亡くなった偉大なフォークシンガーと詩人について書いたわけですが……ちょうど谷川俊太郎さんが亡くなったのと同じころ、漫画の世界においても訃報がありました。
 
楳図かずお先生です。
 
88歳ということで、大往生といえるでしょう。
 
実に個性的で、偉大な漫画家でした。
ホラー漫画というフォーマットで深い文学性を感じさせる作風には、唯一無二のものがあったと思います。
 「深い文学性」という点で、私がまず思い浮かべる楳図作品は、『漂流教室』です。
 ヴェルヌの『十五少年漂流記』をモチーフにしているというところがポイント。
 そしておそらくは、その『十五少年漂流記』のパロディとして描かれたゴールディング『蝿の王』も意識していたものと想像されます。
 映画版『蝿の王』のDVDジャケットに楳図かずお先生のイラストが使われているというようなこともあって……
 
『漂流教室』は、その結末において、『十五少年漂流記』とも『蝿の王』とも違う展開を見せたところもポイントです。『蝿の王』とは、真逆といってもいいでしょう。詳細はネタバレになるので伏せますが、『蝿の王』のエンディングが一見救済に見えて救済ではないのに対して、『漂流教室』は、救いのない絶望のようでありながら、実はそこにこそ希望があるというエンディングでした。未来は何もない荒涼とした世界――しかし、だからこそ、そこに希望がある。絶望を希望へと鮮やかに転回させる、力強い結末です。

こういう、ホラー漫画を追求してその枠組みを超越した作品を書くかと思えば、『まことちゃん』のようなギャグマンガも書く。そんなレンジの広さも、楳図先生のすごいところでした。
漫画『地獄先生ぬ~べ~』に登場する“まこと”は、『まことちゃん』へのオマージュという部分があり……偉大な漫画家ゆえに、そういうふうに継承されていくものがあったということでしょう。そんな大家に、哀悼の意を表したいと思います。



国家総動員法

2024-12-08 23:33:53 | 日記


今日は、12月8日。

真珠湾攻撃によって、太平洋戦争がはじまった日です。
ということで、毎年恒例となっている、近現代史シリーズ記事です。

前回このジャンルでは、昭和12年の盧溝橋事件をとりあげました。
時系列に沿って、今回は昭和13年に進みましょう。


昭和13年という年は、前年にはじまった日中戦争が泥沼化の様相を見せ始めた時期でそんななかで出てきたのが、悪名高き国家総動員法です。

その名のとおり、戦争の長期化を見据えて、国家の総力を戦争に振り向けるための法制度。
ちょうど、いまロシアがウクライナに侵攻し、泥沼化の末に戦時体制に舵を切ったというふうに考えると、理解しやすいでしょう。
人や物資の調達だけでなく、価格の統制といった経済的側面や、言論の統制もそこには含まれており、まさに国民生活全般に影響するものでした。

戦争なのだから、総力戦体制にするのは当然という考え方もあるかもしれませんが……ここで問題になるのは、内閣が議会に諮ることなく物資を調達できるとしたこと。これは、立法府としての国会の権能を侵すものであり、「立法と行政を一体化する」ということにつながります。
当時日本の同盟国であったドイツのヒトラー政権が作った全権委任法も、同様に立法と行政を一体化させるものでした。そのうえ憲法に違反してもいいとしていたドイツの全権委任法ほどではありませんが、日本の国家総動員法も、全体主義国家の基礎になってしまったとはいえるでしょう。立法権と行政権が切り離されていなければ、その国家は不幸な目に遭う……モンテスキューの警告していたことが現実となるわけです。

後の大政翼賛会もそうですが、これが近衛政権下で行われたというのも、問題の根深さを感じさせます。

国会での審議段階では、足元で進行中の日支事変(日中戦争)にこの法律は適用しないというのが近衛内閣の基本姿勢でした。
ところが、ひとたび法案が可決成立すると、その直後に国家総動員法は一部発動されてしまうのです。
つまりは公約違反。
一般には、法案を成立させるために政権側が嘘の説明をしたというふうにいわれますが、近衛政権の側からすると、軍部の圧力でそうせざるをえなかったということになります。このへんはなかなか複雑で人によって味方が分かれるところではあるでしょうが……法案の成立からその実施に至るまでの過程で、軍のごり押し圧力が相当に働いていたことは間違いありません。国会で政府側委員として法案の説明に立った軍務局長がヤジを飛ばした議員に「黙れ!」といったという有名なエピソードがありますが、法案の発動に際しても、陸軍の情報部長が国家総動員法発動の必要性を説く談話を勝手に発表するということがありました。軍の独走に政治の側が引きずられていくというおなじみの構図が、ここにも見えるのです。
見ようによっては、国民に人気があり、(当時の基準でいえば)進歩的ともみられていた近衛文麿を隠れ蓑にして、軍が自分たちの望む軍事独裁政権を実現させているようでもあり……そう考えるならば、後の大政翼賛会もまさに同じでしょう。


話は変わりますが、先日、韓国で戒厳令が発動されるという騒動がありました。
非常事態とか緊急事態に対応する法制度というものは、一歩間違えれば、権力者に恣意的に使われてしまうおそれがある……そういう危険性を感じさせるできことでもありました。
一部報道によれば、尹大統領は、軍の情報機関に与野党の政治家を逮捕するよう指示し、情報機関の責任者がその命令を拒否すると、更迭してしまったのだとか。選挙に敗れ、スキャンダルで窮地に追い込まれた指導者が、そういう無茶苦茶なことをやってしまう……おそろしいことです。


緊急事態のための法制といえば聞こえはいいかもしれませんが、日本でもドイツでも、立法と行政が一体化した体制は延々と続くことになり、その末に国家は焦土と化してしまいました。その歴史を考えれば、この手のシステムがいかに危険かということは意識しておく必要があるでしょう。



死んだ男の残したものは

2024-12-01 21:25:51 | 日記

2024年も、いよいよ12月を迎えました。

ちょっと気が早いようですが、今年一年を振り返ってみると……
日本のフォーク界における巨人が相次いで世を去るということがありました。

一人は、高石ともやさん。
そして、もう一人は、谷川俊太郎さんです。
ちょうど、ピート・シンフィールド死去という記事を書いたのと同じころのことです。
谷川さんは、ピート・シンフィールドとはまた違った意味で、偉大な詩人でした。フォークソングなどの歌詞でも知られていて、このブログで何度かそれらの歌をとりあげてきました。
とりわけ有名なのは、「死んだ男の残したものは」でしょうか。
この歌は、いろんなアーティストに歌われていますが、高石ともやさんも歌っていました。

死んだ男の残したものは

フォークのレジェンドといえば、小室等さんもこの歌をとりあげています。
小室等さんが50周年ライブをやった際には、谷川俊太郎本人もそのステージに登場して自身の詩を朗読するということがありました。
その音源がYoutubeにあったので、載せておきましょう。

モナ・リザ~いま 生きているということ

高石ともや、谷川俊太郎という二人が今年亡くなったというのは、何か時代の曲がり角というような感じもします。そしてその曲がり角の先に待っているのは、決して明るい未来ではないような……
歌の趣旨とはまた違ってくるでしょうが、死んだ男の残したものは、ということを考えさせられます。
偉大なアーティストたちの残したものを、この国の社会が、文化が、魂において受け継いでいるのかということです。

最近のいろいろなできごとを見ていると、先ほどの動画にもあった「いま生きているということ」の一節が思い起こされます。

  かくされた悪を注意深く拒むこと

この歌も、谷川俊太郎さんの詩をもとにしています。
SNSでインプレゾンビが徘徊し、アテンションエコノミーが言論をカオス化させていく世界……谷川俊太郎という詩人のメッセージが今ほど必要とされる時代はないんじゃないでしょうか。