1月6日(日)の日記の続き……
世田谷美術館からその足で豊島区東池袋の劇場「あうるすぽっと」で行われている邦楽演奏会に向かった。
豊島区邦楽連盟のS先生からは、毎年この時期の演奏会にご案内をいただいているのだ。
もとより邦楽の素養はまったくないのだけれど、そろそろお暇しようかなというタイミングで耳にした、第二部の山田流筝曲「春の曲」(吉沢検校作曲/松阪検校手事増補)、生田流筝曲「桜川」(光崎検校作曲)を聴きながら、ああ来てよかったと思い、最後の長唄「連獅子」(河竹黙阿弥作詞/二代目杵屋勝三郎作曲)を聴いて心底感動してしまった。
言語は人間に特有のものであり、言語に付随して、音楽、数学、アートといったものも人間に特有のものであるらしいのだが、日本人と西欧の人々ではリズム感に違いがあるのだろうか、といったことを劇場の暗がりで考え込んだ。
「連獅子」の笛、小鼓、大鼓、太鼓の創り出す独特のリズムは実にスリリングで心楽しく浸り切ってしまったのだけれど、西洋や中東、アフリカなど、異なる文化圏の人々にとってこうした音はどのように聞こえるのだろう。
虫の音、特に蝉の声をフランス人は聞き分けることができないといった類の俗説があるように、文化の違いによって、音楽の受容にも差異があるのかどうなのか。
日本人にしか理解できない音階やリズムがあるとしたら、逆に、クラシック音楽を東洋人が真に理解することは可能なのか、あるいは教育や生育の環境によってそれらは習得可能なものなのか。すでに確定した理論があるのかも知れないのだが、そんなことを誰かと話したくて仕方がなかった。
さて、同じ「あうるすぽっと」のホワイエでは、漫画家の桐木憲一さんらによる「東京シャッターガール 原画&写真展」が開催されていた。
「東京シャッターガール」は、桐木さんの連載漫画で、カメラ片手に都内を街歩きする写真部の女子高校生・夢路歩が、行く先々で人情に触れながら、隠れた名所や文化を見つけていくというストーリーだが、この連載はカメラ雑誌に取り上げられ、漫画ファンだけでなく写真愛好家の間でも話題となった。
昨秋、町田市にあるギャラリーが、漫画に登場する街をテーマに写真の公募展を企画したところ、初心者からセミプロまでたくさんの応募があったという。
今回の「原画&写真展」は、都内の街歩きを題材にした漫画の原画と、漫画に登場する街を28人の写真家が撮影した写真を一緒に展示するもので、漫画表現と、写真家の視点の両方を楽しめる……と紹介されている。
その桐木憲一さんだが、本作の第8話で、椎名町の「トキワ荘」を題材としたことがきっかけで、地元の商店主や町会、ボランティアの人々による地域文化活動「トキワ荘通り協働プロジェクト」に参加することになった。そればかりか、トキワ荘跡近くのアパートで、赤塚不二夫さんが仕事場兼住居とした「紫雲荘」に住み込みながら創作活動を続けている。加えて、公募で選ばれて同じアパートに住むこととなった漫画家の卵たちのデビューを後押しするというプロジェクトにも関わっている。
私もほんの少しだが、このプロジェクトのお手伝いをしたことがあり桐木さんとは面識があるのだ。会場には、桐木さんと「紫雲荘」オーナーのOさんや写真出品者のカメラマンの方たちがいてしばし歓談。ちょうど、邦楽演奏会に来ていた豊島区の高野区長と一緒に作品を見て回った。
会場には、写真約50点と、原画約20点が展示されていたが、漫画と写真が刺激し合って独特の世界を創り上げている。中には、主人公の女子高生になり切った自身をモデルにした写真作品もあって実に面白い。
桐木さんの丁寧な絵作りと原画の美しさは一見の価値あり。14日(月・祝)まで。
夜、TBSテレビの「情熱大陸」を見る。書家の紫舟を特集。
彼女は、単に紙に書いた作品のみならず、書いた文字を鉄の彫刻にして光と影により立体化した作品や、メディアアートとのコラボにも積極的に取り組んでいる。
番組では、シンガポールでの個展に挑戦する彼女に密着。その言葉が記憶に残った。
「文化の壁をアートで超える……」
世田谷美術館からその足で豊島区東池袋の劇場「あうるすぽっと」で行われている邦楽演奏会に向かった。
豊島区邦楽連盟のS先生からは、毎年この時期の演奏会にご案内をいただいているのだ。
もとより邦楽の素養はまったくないのだけれど、そろそろお暇しようかなというタイミングで耳にした、第二部の山田流筝曲「春の曲」(吉沢検校作曲/松阪検校手事増補)、生田流筝曲「桜川」(光崎検校作曲)を聴きながら、ああ来てよかったと思い、最後の長唄「連獅子」(河竹黙阿弥作詞/二代目杵屋勝三郎作曲)を聴いて心底感動してしまった。
言語は人間に特有のものであり、言語に付随して、音楽、数学、アートといったものも人間に特有のものであるらしいのだが、日本人と西欧の人々ではリズム感に違いがあるのだろうか、といったことを劇場の暗がりで考え込んだ。
「連獅子」の笛、小鼓、大鼓、太鼓の創り出す独特のリズムは実にスリリングで心楽しく浸り切ってしまったのだけれど、西洋や中東、アフリカなど、異なる文化圏の人々にとってこうした音はどのように聞こえるのだろう。
虫の音、特に蝉の声をフランス人は聞き分けることができないといった類の俗説があるように、文化の違いによって、音楽の受容にも差異があるのかどうなのか。
日本人にしか理解できない音階やリズムがあるとしたら、逆に、クラシック音楽を東洋人が真に理解することは可能なのか、あるいは教育や生育の環境によってそれらは習得可能なものなのか。すでに確定した理論があるのかも知れないのだが、そんなことを誰かと話したくて仕方がなかった。
さて、同じ「あうるすぽっと」のホワイエでは、漫画家の桐木憲一さんらによる「東京シャッターガール 原画&写真展」が開催されていた。
「東京シャッターガール」は、桐木さんの連載漫画で、カメラ片手に都内を街歩きする写真部の女子高校生・夢路歩が、行く先々で人情に触れながら、隠れた名所や文化を見つけていくというストーリーだが、この連載はカメラ雑誌に取り上げられ、漫画ファンだけでなく写真愛好家の間でも話題となった。
昨秋、町田市にあるギャラリーが、漫画に登場する街をテーマに写真の公募展を企画したところ、初心者からセミプロまでたくさんの応募があったという。
今回の「原画&写真展」は、都内の街歩きを題材にした漫画の原画と、漫画に登場する街を28人の写真家が撮影した写真を一緒に展示するもので、漫画表現と、写真家の視点の両方を楽しめる……と紹介されている。
その桐木憲一さんだが、本作の第8話で、椎名町の「トキワ荘」を題材としたことがきっかけで、地元の商店主や町会、ボランティアの人々による地域文化活動「トキワ荘通り協働プロジェクト」に参加することになった。そればかりか、トキワ荘跡近くのアパートで、赤塚不二夫さんが仕事場兼住居とした「紫雲荘」に住み込みながら創作活動を続けている。加えて、公募で選ばれて同じアパートに住むこととなった漫画家の卵たちのデビューを後押しするというプロジェクトにも関わっている。
私もほんの少しだが、このプロジェクトのお手伝いをしたことがあり桐木さんとは面識があるのだ。会場には、桐木さんと「紫雲荘」オーナーのOさんや写真出品者のカメラマンの方たちがいてしばし歓談。ちょうど、邦楽演奏会に来ていた豊島区の高野区長と一緒に作品を見て回った。
会場には、写真約50点と、原画約20点が展示されていたが、漫画と写真が刺激し合って独特の世界を創り上げている。中には、主人公の女子高生になり切った自身をモデルにした写真作品もあって実に面白い。
桐木さんの丁寧な絵作りと原画の美しさは一見の価値あり。14日(月・祝)まで。
夜、TBSテレビの「情熱大陸」を見る。書家の紫舟を特集。
彼女は、単に紙に書いた作品のみならず、書いた文字を鉄の彫刻にして光と影により立体化した作品や、メディアアートとのコラボにも積極的に取り組んでいる。
番組では、シンガポールでの個展に挑戦する彼女に密着。その言葉が記憶に残った。
「文化の壁をアートで超える……」