「木下黄太のブログ」 ジャーナリストで著述家、木下黄太のブログ。

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東京電力の会見から希望は見えてくるのか

2011-04-18 11:22:21 | 福島第一原発と放射能

 更新が遅れてすいません。専門家の先生ときのう僕がうまく話ができなかったこともありますし、僕の個人的な都合もあって遅れました。

 まず、僕が思ったことは、事態収束と言うレベルには、半年から九ヶ月の時間は最低限かかるということです。安全に一定程度冷え切ると言う、この状況にならなければ、原子炉を制御できているとは言いがたいものがあります。とすると、東京電力の思っている最善の状況が展開したとしてこの秋から来年の初頭まで、現況のような一進一退の状態が続くと言うことです。これだけでもシビアな問題です。これは、東京の経済にも大きな影響を与えるのは、間違いないだろうと思います。ただし、時間のメドが、現実にどうなるのかは別として、示されたと言うことは大変に大きいと思います。最善であれば、こうした流れになるということが、国民の頭に入ったと言うことは、今後の皆さんの展開を考える上で、重要なファクターだと思います。

 さきほど、小出先生ともお話をしました。先生は「木下さん、このとおりの工程で、うまく収束できるのなら、本当に望ましいです。私もそれを期待はしますよ。まず、そう思っていることは伝えます」とおっしゃいました。その上で、今回の工程に関しての評価をうかがったのですが、「まず、正直に言って、東京電力がこれまでおこなってきた対応が、うまく展開したと私が思えたケースはほとんどありません。ですから、この工程もうまくいけばよいですが、このような希望的な観測で東電が事態の推移をきちんとできるとは僕には思えません。こういう感じでうまく事が進められるなら、とっくに状況は改善しているはずですから」と、概説的にお話になります。さらに、「具体的なプランを見ていくと、元々僕が思っていた格納容器と圧力容器との間に水の循環をつくるということは、よくわかります。ただし、格納容器をきちんと水で浸すという考え方は、現実に対応可能なのか、私は疑います。格納容器は、損傷が激しいものもあるのです。放射能がかなり高濃度の中で、格納容器を補修するということが、どれだけ現実性があってできることなのかと言うことです。できるなら、もっと早く対応していることですから、ここまでそういう風にできていないことをどうやったらできるのかと言う見通しが具体的にあるのなら、まだわかりますが。そうした見通しがある中で出てきている話ではないと思います」とおっしゃっています。格納容器の損傷のレベルをどう考えるのかなど、東京電力にとっては、一貫して歯切れよく語らないストーリーとなっていますから、ここをどうするのかと言うことの具体論に、リアリティがあるのかと言う疑いは僕も持っていましたが、小出先生も同様の見解でした。この流れは、できるのなら、とっくに行われるはずの事についてのやりとりですから、何をいまさらなのです。「木下さん、作業員の皆さんの線量と体力気力を考えたときに、格納容器の修復と言う、危険でかつかなり手間がかかる作業を、どうやったら現実化できるという感覚が、きのうの工程から伺えませんでした。私は、今の状態も、かなりシビアだと強く思っています。危険は差し迫っているままなのに、この流れでどうやったら改善できるのかという考えが、はっきりしません。今回の工程を見ていても、強く思いますよ。」と。原子炉の建屋の中の線量は高いままです。1号機は原子炉の建屋の内側だと少なくとも、毎時二百五十ミリを超えているそうですから、ほとんど何もできる状態ではありません(1号機は本当に大丈夫なのかと懸念します、従来、このブログのコメントなどでも、懸念が続いてる情報が寄せられているのは、1号機のことのようです、危険な状態が続いていることだけは間違いありません)。こうした点から考えると、いったいいつになったら線量が下がるのか。そして、高被曝を覚悟して作業員が破損箇所を点検して、無理やり何とかすると言う話だと思います。兵站も含めて、超えなければならないステップが何段も何段もあります。そのステップの一つでさえ、適正に越えられる見通しがよくわからない中で、一体どうするのかというお話な気がします。これで、菅総理は「少し前進できた感じがする」と述べたそうですが、この点についても小出先生と話しましたが「木下さんの方が分かっていると思うけど、菅さんは何も考えてきめていかないから、物事の本質が分かっていないのですよ」と。勿論、この工程の発表と言うのは、政権が東京電力に見通しを示させるようにした訳ですから、政府の意向が大きく影響をしていることは間違いありません。僕からすれば、本来東京電力がこういう素案をまとめて、政府部内や原子力安全委員会で検討して、政府として見通しを国民に伝えると言うのが本来あるべき姿であって、まずそれを政府そのものから語りかけずに、東京電力に発表させておいて、「少し前進した気がする」という他人任せなコメントになるのは、本当に菅総理らしいなと思います。

 福島第一原発も担当していた技術者の友人は、まず1号機については心配をしていて、1号機給水のノズル温度も高いし、圧力容器も高いと見ています。線量もかなり高いことを考えると危険な状況なのだが、減速材入れるしかないだろうしとも。今後の展開は予断は許さないと言います。また、どの号機も、水が漏れ続けているのであるのだから、これをいったいどうするのかと言うことの解決がかなり難しいかもとも、その上で六ヶ月から九ヶ月というのは水で格納容器を満たせればどうなるのかということなんだけれども、きちんと冷温停止にもっていけるかどうかまで考えるとなかなか大変だろうと言います。彼に言わせれば、少なくとも、東芝や日立のメーカーの工程表が今回の話のベースであるのだから、最低限の蓋然性はあるのだろうと。ただし現場の状況、例えば、瓦礫どうやって、どこにどける作業から見るだけでも、今の東電の見立てよりも、恐らくそれ以上にかかるだろうとは思うとも。確かメーカーの工程はもう少し長いスパンだったから、どちらにしても、ちょっと余分にかかるはずですよと。そうすると、結局そこに到達するまでの間が綱渡り的な状況になることは間違いないだろうとも。冷却を考えると、給水ノズルの温度を百度前後にできるのかと言うこともそうだし、とにかく水で満たして冷却するというのは、漏れを止める方法をどうするのかということになる。そのためには、まずこういう工事をやれるかどうかの基礎的な情報はあるのかないのかと言うことから考えなければならないし、本当に見立てどおりに工事が進行していくのかどうかというのは、現況の情報ではわからないと話しています。これは、現場レベルの細かい情報がないと判断がつかないということです。ただ、この工程を聞いて、「大丈夫」と確信を持てるような感じではないということだけは言えるだろうとも。

 今、官邸のスタッフとも話しましたが「本当は、ネガティブ、深刻な事態を想定すべきで、その場合はこうなるといった見立ても言わなければならないのに、会見では楽観論に終始したと思うよ。彼らの言説から爆発と言うワードがないのが不思議だけど、官邸の内部でも同じような感覚で、爆発可能性という感覚は内部には全然ない。楽観的見通ししかない。まだ数ヶ月は爆発は回避できているわけではないのに、それを伝えない。何かあったら、こうなるかということを伝えると言う感覚もない。みんな、収束収束モード。もう官邸の内部では、危険性を言うこと自体がタブーになっていると私は見ている。菅さんもきのうのコメントからすれば、信じ込んでいるんじゃないかな。大丈夫と。」

 希望的な観測が正しくて、危機を指摘する声がおかしいのであれば、確かに望ましいかもしれませんが、現実はどちらにあるのかが、見通しがどこまで立っているのかを正確に捉えられている感じがしたのなら、安心ができるのですが、その方策を聞いているだけでは、安心と言う言葉とは、少し遠い現実が浮き彫りになっている気がします。きょうの朝刊各紙が報じているように、現地の皆さんは「疑心暗鬼」というワードでくくれるような対応だろうと思います。道筋の立つ説明でなければ、人は納得ができませんし、大変な状況で避難を余儀なくされている皆さんですから、心労はいかばかりかと思います。こうした人々に対して、あの程度の説明ではとても納得というものではないと僕も思います。一つの目安を示したということは事実ですが、根拠が見えない目安が提示されたと言うことでしかないのかもしれません。クリントン国務長官はアメリカの専門家の見解として「福島第一原発の事故は前代未聞の規模の危機と認識している」とのべています。こうしたときに、外交の正規のやり取りの中で、こういう文言が出てきていることは冷静に私たちは捉えなければなりません。アメリカ政府の見立ては今回の問題に対しては、一貫して厳しい見立てが続いています。いまだに八十キロ圏内は立ち入りをさせていません。つまり、日本政府の見立てよりも、さらにシビアにアメリカの目があると言うことです。前代未聞の規模というのは、今後起きることも想定していくと、過去の経験値を超えた状況が、どういう形にせよ、おこりうる可能性があるという認識を、アメリカ政府はもっているということだと思います。専門家見解の紹介と言う形をとりながら、こうした見解をアメリカの国務長官が伝えている現実を、日本政府よりも、皆さんに知っていただきたいと思います。

 

「追記」

メールはバージョン変更で返信できるようになりました。ご迷惑をおかけしました。

 

米国務長官来日 原発事故、収束へ支援(産経新聞) - goo ニュース

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産経新聞2011年4月18日(月)08:00

 クリントン米国務長官が17日、来日し、都内で松本剛明外相と会談した。クリントン氏は会談後の共同記者会見で、東京電力福島第1原子力発電所の事故について「米国の専門家は前代未聞の規模の危機だと認識している」と指摘した。東電が同日公表した事故の収束に向けた工程表について、松本氏から内容分析を依頼されたクリントン氏は「できる支援はすべて日本に提供したい」と述べた。

 松本氏は東日本大震災や原発事故への米国の支援に対し謝意を表明。クリントン氏は「日米の非常に強い友好の絆を示すために来日した」と応じた。

 会談では震災復興計画の具体化に際し、両国が官民一体で推進していくことで合意した。クリントン氏は「復興の過程でも揺るぎない支援を約束したい」と述べた。

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高線量、大幅に作業制約 1号機建屋、1時間で被曝上限(朝日新聞) - goo ニュース

朝日新聞) 2011年04月18日 13時05分

 福島第一原発の原子炉建屋で高い放射線量が計測された。特に1号機では出入り口の扉ごしに毎時270ミリシーベルトあり、作業が一切できなくなる作業員の被曝(ひばく)線量の上限(計250ミリシーベルト)をわずか1時間で超える値だった。原子炉建屋内の計測は事故後初めて。人間が作業するには極めて厳しい環境だと分かった。

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東京電力が政府の指示で事故収束の見通し会見を午後三時からおこないます。

2011-04-17 13:07:09 | 福島第一原発と放射能

本当に事故収束の見通しが出てくるのなら、望ましいですし、一定程度の放射性物質の漏洩は続くと思いますが、最悪の事態の回避なども含めて、事故収束の見通しが本当につくなら、嬉しい限りです。もちろん、本当に見通しがつくならということでは、ありますが。会見の中身を確認して、今の政府と東京電力の状況から、僕が危惧していることよりも、状態がもし良くなっているのなら、望ましいことです。会見後は、一度考えてから、更新する形にしようと思います。


官邸のホームページをみて、驚きました。

2011-04-17 00:06:56 | 福島第一原発と放射能

まず、下記を読んでください。

官邸のホームページの引用です。

 

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チェルノブイリ事故との比較
平成23年4月15日

チェルノブイリ事故の健康に対する影響は、20年目にWHO,
IAEA
など8つの国際機関と被害を受けた3共和国が合同で発表し、
25年目の今年は国連科学委員会がまとめを発表した。これら
の国際機関の発表と福島原発事故を比較する。

原発内で被ばくした方
*チェルノブイリでは、134名の急性放射線傷害が確認され、3
週間以内に28名が亡くなっている。その後現在までに19名が
亡くなっているが、放射線被ばくとの関係は認められない。
*福島では、原発作業者に急性放射線傷害はゼロ、あるいは、
足の皮膚障害が1名。

事故後、清掃作業に従事した方
*チェルノブイリでは、24万人の被ばく線量は平均100ミリシ
ーベルトで、健康に影響はなかった。
*福島では、この部分はまだ該当者なし。

周辺住民
*チェルノブイリでは、高線量汚染地の27万人は50ミリシーヘ
゛ルト以上、低線量汚染地の500万人は10~20ミリシーベル
トの被ばく線量と計算されているが、健康には影響は認められ
ない。例外は小児の甲状腺がんで、汚染された牛乳を無制限に
飲用した子供の中で6000人が手術を受け、現在までに15名が亡
くなっている。福島の牛乳に関しては、暫定基準300(乳児は100
)ベクレル/キログラムを守って、100ベクレル/キロ
グラムを超える牛乳は流通していないので、問題ない。

*福島の周辺住民の現在の被ばく線量は、20ミリシーベルト
以下になっているので、放射線の影響は起こらない。

一般論としてIAEAは、「レベル7の放射能漏出があると、
広範囲で確率的影響(発がん)のリスクが高まり、確定的影響
(身体的障害)も起こり得る」としているが、各論を具体的に
検証してみると、上記の通りで福島とチェルノブイリの差異は
明らかである。

長瀧重信 長崎大学名誉教授
    (元(財)放射線影響研究所理事長、国際被ばく医療
協会名誉会長)
佐々木康人(社)日本アイソトープ協会 常務理事
     (前 放射線医学総合研究所 理事長) 

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この官邸のホームページに記載されたペーパーは福島は実質チェルノブイリレベルではなく、チェルノブイリも直接の被害はたいしたことがないというお話だと思います。きょうも官邸のスタッフと話しましたが、官邸の中は、とにかく、危険を指摘する話を聞かないことが、正しい状態とされているといいます。細野補佐官が原発情報をまとめていて、彼が総合的に判断して大丈夫だというと、総理以下、大丈夫と追認する状況で、危機につながる発言をする人間が、ほとんどペシミストよりもおかしい人として扱われていると聞きました。同じように危機を訴える僕も、世間からまともに相手されていないレベルの人間ですから、二人で俺たちが本当におかしくなってしまったのかどうかだなと、半分笑いながら話しました。まあ、実体の背景がこうだから大丈夫という整然とした話があるようではなくて、一時のような混乱もないし、水は入れているから大丈夫だという説明をして、それが全体のコンセンサスになっている感じのようです。深く考えている様子はないし、いろんな危機意識を有している感じは、今の官邸の中にはほとんどない感じがするということなんです。

 こうしたことも踏まえて、九州大学の吉岡先生に、このホームページの中身を伝えたところ、「チェルノブイリの本当の実体は、あの時代背景のソ連できちんとトレースされていないの歴史的な常識だろう」と言葉を失っていました。「僕はこんな話を平然と官邸がホームページに載せるとは思わなかった。原子炉の推進側の学者がある程度きちんと反省をはじめているのに、まさかこんな話をはじめるなんて。原子炉の学者よりも、こういう人たちの方が何の実像もきちんと確認せずに話をしてきているのは、僕には常識ですよ。信じがたい」と。危険が本当に回避できている状況も不十分な中での不確かな発言。「三号機も一号機もどのくらいもつかどうかが、相変わらずぎりぎりの状況なのに、原子炉のことだけでもわかっている学者の方が、まだましだよ」とまで、言われます。「木下君、君と話すたびに絶望が深まるよ」と言われ、「いや、まあこういうのが今の日本社会だからしょうがないよなあ」と。さらに先生は「僕は楽観主義者で、まあ、もしも爆発しても、近い場所でなければ時間はあると思うよ。最短なら六時間くらいだけど、この前の感覚なら、一日か二日くらい都内でも時間があるんじゃない。それから逃げても間に合うと思うよ。殆どの人は、危機感が無いから、パニックもおこらないし、渋滞にもならないんじゃないかなあ。逃げる体制さえ、自分が整えておけば大丈夫なんじゃない。危機感が本当にある人は、たぶんほとんどいない。ほんとに、ごくごく少数。しかも決断ができる人はさらに少ない」ともおっしゃいます。

 ここ数日、「逃げる」ことについてブログの読者や知り合いからたずねられます。財務省のあるキャリアが尋ねてきたのには少し驚きました。「あなたのラインなら、自分で官邸に確認すれば分かるでしょう。僕なんかに聞かなくても」と言うと、「そんなことないよ。今の官邸から意味ある話が具体的にこないなんてお前もわかるだろう。俺の立場でも判断できる材料が無いから、お前のブログを見て、お前の判断が聞きたいんだよ」とも言われました。もちろん、現場の技術者たちにも正確な見通しは難しいでしょうから、そういう心情になる政府側の人間がいるのも分かる気がしますし、聞いてくる人の本音は、自分よりも、家族を守りたいという想いですから、物理的に可能な範囲では、誠実に答えるしかありません。それは、もちろん皆さんにここでお伝えしていることと、基本的には同じ事で、次に爆発事象が起きた場合にどうするのかということと、近隣のモニタリングポストが数マイクロに、突然上がりはじめるかどうかと言う事につきます。僕はこの場合は、自分の判断に迷いはありません。自分や家族を大切に思うなら、福島第一原発より遠くに逃げることしか、基本的な方法はありません。僕の信念は「人は放射能には勝てない」ということです。

 僕のような判断をしている人間は、異端でしょうし、昔なら非国民扱いされる人間であることは間違いないと思います(今でもそうかもしれません)。さらに、僕の恐れているようなほどの危機にならず、結果的に官邸の言うとおりに、ある程度の放射性物質の拡散でとどまり、原子炉全てが数ヶ月で収束することも、もちろん考えられます(この場合でも完全に封印するまでには数十年に近い単位にはなると思いますが)。こうした場合でも、内部被曝による晩発性障害が、一定以上は、出てくると僕は思っています。現在の政府の立ち位置ですと、これを認めるまでにも、長い年月がかかる事は言うまでもないでしょう。こうした状況の中でも、危険を言うことができるかどうかは、僕には問われていると思っています。言った事により、昔なら、殺害される可能性もありますから、そういう時代ではない中で、自分が言い続けることは、自分にとっては大切なことだと思っていますし、自分が関わってきた社会に対しての責任の果たし方だとは思っています。



福島第一原発の汚染水対策としてのゼオライトへの僕の疑問

2011-04-16 10:16:42 | 福島第一原発と放射能

 福島第一原発の汚染水としての吸着剤として、ゼオライトの話が出ています。ゼオライトは鉱物なのですが、中の構造が極めて複雑で、小さな中にものすごく長い距離のトンネルがあるイメージのものですが、放射性物質を吸着することができる機能はある程度はあるそうです。ものすごく性能のよいスポンジのイメージですから、放射能を無害化するというよりも、中にある程度放射性物質を取り込むことができる可能性があるということです。ただし、僕が最初にこのゼオライトについて聞いたのは、このゼオライトをかなり使った浄水器があるのだけれども、この騒ぎの中で、どうやったらうまく売り込めるのかと言う相談に近い話でした。高性能をうたう高額な浄水器が今回の原発の騒ぎで売れ出しているけれども、それよりもはるかに安い金額の浄水器がある、これがゼオライトを使ったもので、放射性物質の吸着ができるのだと。ゼオライトの効用と言うのが、放射性物質対策に本当に役立つもので、浄水器としても機能するのが確実なら、意味があるとは思いますが、その売込み話を聞いている限り、一定程度は効能はありうるのですが、様々な核種に対応しているかどうかもよくわからないし、仮に内部にどんどん吸着するとしても、無害化できる訳でもないし、さらに仮にかなり多くの放射性物質を吸着できるとしたら、それごとに、ゼオライトのフィルターを毎回替えないと汚染はあんまり変わらない気がしました。そんな使い捨て対応の出来るものでは全くなさそうです。そのときの売り込み話の宣伝文句は、アメリカが放射性物質の捨て場として、ゼオライトが多く含有している山の中のトンネルにおいているという話がありました。僕はこの話の真偽もよくわかりませんが、そういう山があるとして、その中に置いておくのは、他の場所よりは、確かに一定程度は意味があるかもしれないのですが、ゼオライトの効用と言うのは、そのくらいに考えるべきものでしょうし、浄水器の話も、かなり半信半疑でしか聞いていませんでした。このときに、ゼオライトを使って、福島第一原発のまわりに撒けばよいとも言われたのですが、撒いたらどうなるのかの具体的なイメージも不明な話だなあとしか思えませんでした。こういう、未経験の状況がおこると人はいろんなことを考えますし、そういう人々が、怪しげなものを売り込もうとするのは、珍しい話ではありません。そのレベルであれば、ああまたかとおもったのですし、今月ゼオライトを使ったという偽薬を販売した人間が逮捕されていますから、僕は今でもそのレベルの話と思っていました。ですから、今回、東京電力が汚染された水の除去にゼオライトを投入すると言うことを聞いて、多少でも意味があるのなら、やるなとまでは思いませんが、高性能スポンジの中に閉じ込める作業しかない訳ですから、本当に無害化することはできないはずなのにと、不思議に思いました。というか、まともな話と受け止めるべきなのかどうなのかをそもそも悩むレベルの話であるゼオライトのことが、汚染水の対策として、東京電力の具体的な対応に入ってきたという状態そのものが、僕の中でどう考えるべきなのかとも思いました。スリーマイルで使われた実績があるのなら、意味があるのかもしれませんが、何と言うか、何に頼るべきなのかということが、もうかりハードルが下がっていくしか、具体的な方法が乏しくなっている気もしています。放射能の除去ということが、東京電力の得意技では無い訳ですから、こうした方面についても、東京電力にある種の丸投げにしていることそのものが、限界だろうと思います。いい加減、国で専門家チーム(原子力安全委員会に除去の専門家はいません)を作って、汚染対策の具体策のワーキングチームで、全てを決めていく様なスキームが必要だと考えます。こうしたことを一つずつ、政府が権能をもって確定させていかないと、多分決定的な対応はできません。場当たり的な応対に終始することになります。ゼオライトという、僕のところにはもう数週間前に、浄水器の売り込み話としてだけ、聞こえてきたストーリーが、ある意味汚染水対策の切り札として、ニュースとして聞こえてくる状況をどう受け止めるべきなのか、いささか悩むところではあります。このニュースを聞いて、またゼオライトを使った商品に飛びつく人がいるのも容易に想像がつきます。見えないものへの対策は難しいですから、こうしたことを人が志向して行く回路は分かりますが、恐らくそれで、物事は何も根本的には解決しないということです。これは一般の皆さんに言う話でもありますが、実は、東京電力にも同じ事を言うべきなのかもしれません。高濃度汚染水の処理がこれでできると言うことが確実と思うならまだよいですが、ある種の場当たり的な処理をすることを、大きく報じさせるというスタンスそのものが、この大きな事故が継続している中でも、続いているのは本当に僕には理解できません。

「追記」

メールの返信は作動しないままです。メールは読めますが、現在返信できません。返事が必要な方は必ず電話番号を明記してください。そうでない場合、対応ができません。


原子力発電に詳しいある知人の防御策

2011-04-15 04:40:28 | 福島第一原発と放射能

 まず事務連絡です。このブログのメールアドレスが、送信がきのうよりなぜかできなくなってます。個人的な知人には別途ご連絡いたしますが、ブログを読んでいらっしゃる皆さんで、僕から何かご返事を返す必要があるという方は、必ず電話番号を明記してください。明記されない場合、当面何もリターンできない可能性があります。受信はできているので、全て読んではおります。技術的な問題と思いますが、まだわかっていません。

 僕の知人に技術翻訳をおこなっている知人がいます。久しぶりに話しました。全く別のことでの知り合いなのですが、知人が翻訳などで優秀な人で、特に技術系の翻訳に長けていることだけは、元々知っていましたが、きょうお話しをしてみると、そのうちのある程度の部分の仕事が、実は原子力発電に関しての仕事だとはじめて知りました。東京電力などの原子力の話に、技術的な文献のみならず、いろん具体的なことも含めて大変によく知っていらっしゃることがわかりました。というか、素人ではなくて、ほぼ玄人のレベルで情報を認識していて、今の現状も、これからどうなるかという想定も、そして自分が東京でどういう風に身を守っているのかという話も聞きました。電力会社の原発の現場ともつながりがあり、感覚もよくわかっている人の話ですから、なんとなく、東京に今いらっしゃる、皆さんに、どこか参考になるような気がしましたので、知人とのトークを書いてみたいと思います。

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 木下さん、私はいろんなことで、翻訳をしたり通訳をしたりしているのは、ご存知と思いますが、たまたま原子力の仕事はかかわりが深くて、いろんなことをやっています。個人としては、原子力推進と言うわけではないのですけれども、行きかがり上、この仕事を引き受けることが多くて、原子力発電にくわしいと思います。いろんなマニュアルを翻訳したり、分かった上で、会議に出たりしますから、マニュアルも含めた、いろんな内部の文書を読んでいてます。こうした中身を通訳や翻訳する立場であれば、一定程度認識するのは当たり前です。今回の地震が゜おきたときに一番心配したのは津波です。なんですぐそう思ったのかと言うと答えは簡単です。いろんなマニュアル的な想定の中で、津波の想定がほとんどなかったということです。ほんとに記述が無いんです。全く、詳しく書き込まれていないものしかない。原子力発電所が海べりにあって、津波と言うことも考えられるのに、そこに注意を業界全体としてほとんど向けていなかったということです。今回、津波へのそもそもの対応が考えられていないのは、そうした文書からも当たり前のことだと私は思います。電源のことも何重の防衛策ではないんです。一定時間の停電はわかっていて、非常用のバッテリーがあれば、数時間したら、復旧するという想定のものしかないということなのです。電源設備が本格的にいかれてしまうという想定はそもそも殆ど考えられていませんでした。こうした中で、実質的にマニュアルなしで、一ヶ月もたせている状況はすごいと判断しています。これは、現場の技術者と作業員が優秀だからだと思います。

 アメリカはスリーマイル以降、原子力発電を基本はとめていきますから、核開発と言う武器としての核には、かかわりがあっても、原子力発電所への対応は実は難しいと私はみています。というのも、原子力発電について英語圏で技術的な意味合いで、重要と見られる文献が少ないのです。だとしたら原子力について詳しいのは、実は日本とフランスだと思います。現実に数多くの発電所を管理している日本は、そのためにフランスと並んで、実際に原子力発電所の使える人材が多いというのは、実はわかりますよね。だから、とりあえず、原子炉がここまで、一ヶ月もったのは、私も知っているような優秀な人々がぎりぎりの戦いをしているからですね。ただし優秀な人の蓄積がすごく多いわけではないというのがマイナスですが。アメリカか小手先の概念しかなくて、原子力発電の優秀な技術者は少ないんです。だから、逆説的に言えば、まだ日本だからまだ、最悪の状態にならないように、とりあえず一ヶ月もっているということなのでしょう。フランスは最近、中国への売込みがいそがしく、技術文献が中国語は作られていたりもします。

  また、原子力発電と言うのは巨大なアナログシステムです。間違ったイメージだと、超ハイテクの近未来感覚が原子力発電所かも知れませんが実際のところは、ボタンスイッチに代表されるように、古くて巨大なアナログシステムなんです。ハイテクな対応よりも、実は泥臭い作業を必要とするシステムなのです。こまごまとした具体的なことを一つずつこなしていかなければならなかったものが、いろんなことでうまくいかないまま、並列して危険な状態が続いていることになります。上からただ海水をぶち込むような荒っぽい作業もおこなわれるような物なのです。最新に見えて、実は古くさいのが原子力発電所です。

 今回の原発の作業で、今後苦しくなってくるとしたら、まず大きな要素は、気温かもしれません。暑くなると原発で作業をするのは難しいです。防護服は暑いのです。涼しい気候ならまだよいのですが、これから暑くなると大変ですよ。脱水どで倒れたり、なくなる場合もありうるのです。兵站と言うことで言うと、管理区域内で、線量をみながら作業をさせる人間は、ライセンスが必要で、その人たちの数が少なくて、全国から集めて、仕事をさせられるのが、一定数しかいません。この人達の被曝総量を一定までに抑えると、実はもう数が持つのかなということを私もずっと心配していました。一緒に仕事をしたことがある人もいるので、実は心配もしています。彼らがギリギリまで闘うプライドの高さはありますから、士気も高いと思います。地方の原発の関係者はそうなんですよ。でも、それも一ヶ月以上が経過して゜、どこまで持つのかと考えないと駄目かもしれません。本当に人間の極限状態だろうと思いますし。

 ただし実際になんとか一ヶ月持っているだけであって、事態がまったく好転していないのは、現場感覚がある人なら、推進側でも、反対側でもほぼ同じ見解だと思います。私も木下さんの友人の技術者の方とまったく同じ感じの見解で、ちょっとずつ、ちょっとずつ悪くなっていると言うことです。大爆発にならないようには、祈るしかないかもしれませんし。これを考え出したら、東京で日常生活がおくれないと思いますから、普段は考えないようにつとめているんですが。

 まあ、そういう意味も含めて、小さなお子さんとか、妊婦は逃げられたら逃げるほうがよいのです。私は、都内の友人から相談されたら、「行く先があれば、行ったほうがよい」といいます。今の線量だけで都内で問題があるとまでは思いませんが、今度何か爆発的な事象がおきたら、都内にも高濃度の放射性物質が降ってくる可能性は普通にあります。

 こうしたことが背景にあると、東京でも漠たる不安の中に実は皆はいると思います。私も都内でかなり気をつけて大変な生活です。いざと言うときに対応できるように、いろんなものを持ちながら動いています。傘や合羽は不可欠です。雨は放射性物質をどうするのかを考えると、一番気にしなければと思います。食べ物と水に最も警戒しながら、摂取しています。ポリ袋のようなものも常時持ち歩いていますし、マスクも簡便だが一般の市販の中で最も放射性物質を通しにくいものを買います。水を含ませていると、放射性物質からの防御になる場合もあるので、実はスプレーで簡便に水を噴霧できるようにもしています。子どもたちの泥遊びもご法度だし、地面の放射性物質も気にしなけれはならないと思います。

 私は、仕事の関係が、原子力発電周辺に拡大しているため、知人も電力会社まわりにも多く、こういう状況を認識していても逃げないと言う選択肢になっています。行く末をなんとなくわかりながらも、ぎりぎりまで見定めたいのです。それでも、次に爆発的な事象がおきたら大変ですから、それは気づいたら逃げようと心にはきめています。夜寝ているとき大きな爆発が起きて、気づかないのが一番怖いです。都内だと放射性物質が落ちてくるまで六時間くらいの余裕があるとはおもいますから。早く分かれば、何とか逃げられます。そう、思っています。

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原子力発電の実務側と関係が強い知人(都内在住)が、状況を正確に十分に認識しながら、何を気にして、どうしようとしてるのかという話は、東京のみなさんにも心構えや具体的にどうするのかという対応策としては、参考になると思います。

 

「追記」

下記は、一日でころころ変えるのが、まず不信感を招くもとです。子どもを守ることが前提にはありません。

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学校再開の被曝量目安、安全委が撤回(朝日新聞) - goo ニュース

2011年4月14日(木)21:26

 原子力安全委員会は14日、前日の記者会見で学校再開の目安を「年間被曝(ひばく)量を成人の半分の10ミリシーベルト程度におさえる」と示したことについて、委員会の決定ではないとして撤回した。理由は、学校の安全基準は文部科学省が検討しており、それに影響を与えないため、としている。

 前日、目安を示した代谷誠治委員は14日の会見で「委員会として10ミリが基準と決定したわけではない。うまく言葉が伝わらなかった」と述べた。文科省からの助言要請を待って、正式に委員会を開いて考え方を決めると話した。

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また、復興構想会議で、梅原猛さんが「原発問題を考えずには、この復興会議は意味がない」と発言をしたのは当然のことです。梅原さんをこの会議に入れるために、相当な努力を一部の官邸関係者がしていたことを僕はよく知っています。そして、原発を外して、復興がありえないという当たり前の現実を、菅総理や政府が見ようとしていないと言う状況を、老哲学者は見過ごせなかったと思います。当たり前の言説が少しでも世の中に多くなることを期待します。

 

 


政府内部より、「福島第一原発から作業員が逃げはじめている」という情報

2011-04-14 05:04:29 | 福島第一原発と放射能

 「福島第一原発の作業員のうち、逃げはじめている者がいる。現在の状況では、やっていられないと、逃げ出していると聞いている」という話です。政府内部より夜遅くに僕に聞こえてきた話です。僕は情報の信憑性は高いと判断していますが、ただし、なぜこうなっているのかという細かい具体的な説明はありません。もちろん、作業員は相当な負荷を掛けられて、ぎりぎりの状態で対応していますから、被曝線量の問題を中心に、人間としての限界状態にあることは間違いありません。すでに一ヶ月が経過しました。通常の状況でない極限の世界で、その場で作業を続けろと言う方が無理だろうと、僕も率直に思います。作業員も人間ですし、メンタルでも限界に近づいているだろうと思います。こうしたことが現場でおきはじめていることは、実は想定内の出来事ですし、強制させてその作業をさせる法的な義務はないとおもいます。さらに下請けの作業員には強制させることにはかなり無理があります。僕は何度か「兵站」というキーワードをこのブログで書きました。というのも、僕の友人でこの福島第一原発に関わっていた技術者も、信頼できる原子炉の専門家も、異口同音に「兵站」というワードを口にするのです。原子力はもちろんきれいごとの世界ではありません。原子力施設の様々な事柄を実際にこなしていくのは、具体的な技量を伴った作業員がやるしかない訳で、彼らの日常は、一定程度被曝をすることを前提とした作業なのです。もちろん、その見返りとして、通常よりも多いギャランティーがある訳ですから、そこは需要と供給のバランスで成立している世界ともいえます。その意味で「多少の危険」は織り込み済みで、通常は仕事をしていると思います。今回の福島第一原発で起きている事態はそうした、おりこみ済みの約束事の世界を、はるかに超えた状態で事は進行し、僕も含めたほとんどの人々の予想を裏切り、一ヶ月以上もこの状況が続いています。こうした場合、心配になるのは、この作業員がどこまで続くのかと言うことであり、だからこそ「兵站」が問題になるのだろうと思います。逃げ出しているのはほんの一握りで、全体としてうまく進行しているのなら構わないのですが、苛酷な状態に耐えられない作業員が一定数、そうなっているのなら、事態は切迫してくるのではという憂慮をしています。この福島第一原発の数回の爆発状況を振り返り、今までオープンになっている映像や写真を確認すればすぐにハッキリすると思いますが、こんな崩壊状態で、ここのことをよくわかっている作業員のうちで、逃げはじめている人がいるのだとすれば、事態の解決へ向けた努力が進んでいるというより、実は厳しい現況にあるのではないのかという疑念が僕の心の中で、どうしても強まります。人をどう使うのかということで解決できる状態であればまだよいのですが、全くそうした状態でなくなっているのが現状なのであれば、いろんな可能性を僕らも考えていかなければなりません。この事態を正確に捉えている人であればあるほど、「兵站」が最後の鍵となるという認識を持っていますから、そこがどうなるのかが、大きなメルクマールなのです。

 勿論、こういった情報だけで判断する話ではありませんが、実際にどういう見立てが各号機にたいしてあるのかが判然としない状態が続いています。原子力推進側の学者のペーパーでも爆発可能性がほとんど書かれている状態も含めて、一体どの号機が安定して大丈夫なのかどうかさえ、一号機から三号機まで、明言できない状態です。しかも、今度は四号機の使用済み燃料プールの温度があがりはじめていて、水温が90度まで上昇していて、毎時84ミリシーベルトの放射線量になっています。放射性物質も出てきており、燃料棒が部分的に損傷した可能性があるようです。こうなってくると、東京電力の社長が「少しずつ安定に向かっている」という説明を額面どおり聞いてよいと断言はできません。僕の友人で過去に福島第一原発を担当していた技術者は、「四号機のプールでうまくいっていないのは、もしかしたら余震も含めた地震で、プールに何か問題がおきているかもしれない。使用済み核燃料がこの状態が続いて、極めて大きな状態を招くことはないけれど、ここで何か起きてしまうと、これがトリガーになって、他に別のシステムの作業に影響が出るようなことは想定できる。気になる話だ」と言われました。毎日、毎日、何か気になる情報が出続けていることには間違いなく、レベル7ということが簡単に収束する事柄ではないのだと覚らされます。あるファクターとあるファクターがどのようにつながっているのかが、大規模システムではもともと見えにくいという弱点があります。今回のような複合的な事故は、そのシステムの根本が立ち行かなくなっていると言う現実を認識します。こうした原発に安全性を高めると言う議論こそ、根本からナンセンスだとしか僕には思えません。危険の連鎖が見えにくくなっていて、危険が結果として甚大であるものを、安全度を高めればシステムとして大丈夫という仮説が成立する根拠を僕は知りたいくらいです。

 石巻の小野沢先生の記事は反応がとても多かったのですが、久松さんと言う翻訳家の方から次のメールが届きました(一部割愛しています)。このメールを見ながら、僕が気になっているのは、このメールの中で複合災害(放射能と津波と地震)と広域災害(被害エリアが広すぎる)というファクターがはっきり出ているということです。

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僕も3月25日から31日まで石巻にボランティアにいっていました。僕らボランティアが担当したのは、自宅や知人宅で避難している人たちを探し出し、物資を届けることでした。多くの人が、避難所までいけず、倒壊しかけた家の、2階で、10人、15人、と避難していました。物資自体は、自衛隊や赤十字、ピースボートなどの集積所には、随分豊富に送られてきていたように思うのですが、それを避難所以外の場所で、避難している人に送り届ける方途がない。僕たちの仕事は、そうした個人的に避難している人たちを見つけ出し、そこに物資を届けることでした。そのため、地区を決め、瓦礫の中を歩いている人や幸い被災を免れたお宅や地区長さんのと ころで、被災者の有無を聞き取り調査をしたりして、個別に避難している人を見つけ出し、物資を渡すという作業でした。どこか、緊急支援を必要とする人が連絡できるような電話を設置し、ラジオとかで流し、そこに物資を届けるにすれば良いのにとも思ったのですが、市の職員も罹災し、大分亡くなっており、とても手が回らないようです。小野沢先生の言われるように、津波の被害はあまりに広域で、自分も罹災者である地方自治体の力だけで、復興など出来ないように思えました。多くの方が肉親をなくし、また毎日大きな余震があり、女川の原発の恐怖や罹災者の方々の疲労と心労は、極限に近づいているのでは心配しています。
  政府は、一体何をやっているのでしょうか?政府は、決して国民を守るためにあるものではないことが、よく分かります。帰り道は、福島の二本松に立ち寄り、ヨード剤を現地の人に手渡してきました。ガイガー・カウンターを持っていたのですが、二本松でも、5から6マイクロシーベルトとかなり汚染されていました。郡山あたりから大分放射線の空間線量は、多くなっていました。でもファミレスに入ったら、若い女の子たちや家族連れが、無邪気に談笑していたり、何もないかのような日常で、痛みもない眼に見えない放射能の「恐ろしさ」は、格別なものと感じました。

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 僕は、この中で、ガイガー・カウンターの数値がとても気になりました。機械自体は国立大学の物理の先生がお持ちの、かなりきちんとした機械で、帰りがけに定点的に測り続けたそうです。郡山、二本松、さらに栃木にかけてもモニタリングポストより高い数値が続き、大変気になったと言います。もちろん同心円的に高い訳ではないようですが、高いエリアはあるということです。この点で少し考えるのはモニタリングポスト、というのは元々は排気というものの放射線量を測るために比較的高い場所にあるということです。しかし、今回は、すでに大量の放射性物質が降下していますから、地表に多くの放射性物質が落ちている可能性が高く、人の位置や地表に向けて測るとモニタリングポストより高くなるのは当たり前かもしれません。「雨がたまるようなところは高かったですし、地面すれすれに測るとやはり高いんですよ」と言う話もありました。何十台かガイガーカウンターを集めて、民間で定期観測ができないのかと検討もしているそうです。     

「追記」

下記のニュースは、学校の再開基準にとどまるべきではありません。子どもは年10ミリシーベルト以上のところには、いられないのだと原子力安全委員会が言っているに等しい話です。子どもは、公衆被曝の年間1ミリシーベルトは超えるべきではないというのが僕の立場ですが、仮に年間10ミリシーベルトまでとしても、内部被曝を考慮せず、日数と時間で単純に割れば、毎時1.14マイクロシーベルトの被曝量がひっかかります。福島市内も郡山市内も、福島県内のかなりの地域で、子どもをそのままにすることが難しいということでしかないという話になります。事態は切迫しているのに何をごまかし続けるのか、僕には全く理解できません。子どもの安全を守らなければならないといけません。もはや「疎開」という概念を思い出すしかないかもしれません。

学校再開基準、年10ミリシーベルト以下 原子力安全委(朝日新聞) - goo ニュース

             


レベル7を真剣に考えていない人々とどう向き合えばいいのか

2011-04-13 00:44:16 | 福島第一原発と放射能

 今回、菅総理の会見は本来、前日に予定されていたのが、大規模な余震のため、翌日に延期されました。震災一ヶ月の会見ですので、日付の設定はおかしくはないのです。しかし、レベル7に原子力保安院がするという情報が報じられたのは、会見が設定されていた時間よりもあとですし、実際は、きのうレベル7は公表されました。つまり、何が言いたいかというと、本来であれば、菅総理の一ヶ月会見の翌日に、レベル7を公表するつもりだったのではないのかということです。これは、根幹的なことで、この福島第一原発でおきている事象の、現段階での評価を、長らくレベル5と言い続けた訳ですが、それを突然、レベルを二段階あげる判断を示すのが、総理の一ヶ月会見の後に、もともと設定されていると言うことが、この政権のいい加減な対応を端的に表していると私は思います。今回の震災の被災者に対する話と同時に、この原発災害についてのきちんとした見識を示すことが、国のトップである総理大臣にまず求められているところであって、強い余震がなければ、実はスルーするつもりだったのかという構えが分かると、どうしても真剣におきている事柄を考えようとはしていないんだなと思います。官邸の中でも「大丈夫、収束できる」というワードは飛び交っていますが、こうだから大丈夫なんだというきちんとした背景説明をともなった話がないんだと、僕は内部から聞きました。

 レベル7というのは、大変な状況なのですが、小出先生に言わせれば「もともと、出ている放射性物質の量の概算で、数週間前からレベル7という判断をするのが、おかしくもなんともないんですよ。今更なにをいっているのかなあと。国際基準に普通に当てはめれば、すぐに終わる話を、どうしてだまっているのか」という次元の話だそうです。吉岡先生は、「レベル7の発表は、地震から1カ月が過ぎ、原発による避難民キャンプ状況が維持することが現実に難しくなり、ある種の疎開を進める時期が来たと官邸関係者が認識し、そのための露払いをしたのではないか」と解釈していたともおっしゃいました。そんな前向きの判断であればまだマシなのですが。きょう官邸のスタッフに僕が聞いてみても、今回のレベル7をきちんと考えて想定して動いていた感じがまったくしないとこぼされたり、経産省の陰謀のようなワードまで聞こえてきて、レベル7という事象の深い意味合いを正確に捉えて、国民にいち早く公表しようというような積極的な意思表示はどこにも存在しないようだということだけが分かった感じがしています。

 原子力安全委員会も、自分たちは3/23からレベル7と思っていたが、保安院の仕事なのでこちらからは、口を挟まないと言うような、意味の分からない言い訳を続けています。こういうことが事実なら、現実に起きていることを専門家たちが隠蔽していただけですし、政府とメディアの大勢がそれに加担したのも間違いないと、私は思います。危険が大きなものであることを言わないように自粛したメディア関係者は、今回のレベル7という事実を厳粛に受け止めるべきです。事態は、チェルノブイリと同程度の災害になる可能性があったのですし、さらに、今でもその危険は継続しているのです。このことは、僕は何回でも言いたいですし、そのことを言わなかった報道の人間は、自分が、日本社会の安全に寄与すると言う基本的な事柄さえも、守ることのできないレベルだということを痛感するべきです。上に言われてルーティーンワークにしたがっていることで、許されたりは絶対にしません。あなた達個人個人の人生に、必ず大きな陰を落とすことになると、僕は思います。「専門家か安全だから、安全と言え」と指示を出していたメディアの大幹部はそれどころではありません。人間の屑です。

 チェルノブイリは広島型原爆のおよそ五百発分ですから、福島第一原発でおきたことはすでに広島型原爆のおよそ六十発分の放射能を現時点までに撒き散らしていると言うことなのです。そして、これからまだまだ増えていきます。地中に染み込んでいった放射性物質はさらにわからないのです。もう並の話ではないという現実をなぜ認識しないのでしょうか。しかも東京電力の言い方では、最終的な放射性物質の拡散量はチェルノブイリを超える可能性まで話をしだしています。

 このところ、原子力安全委員会の言い訳口調のみならず、推進側の現役、OBの学者にせよ、現状認識について、紙をまとめる作業をしていて、世間に公にしています。僕はこの行動が、事態がなんとか最悪の状況だけは回避できたものの、放射能の被害を拡大させた責任について、いちはやく言い訳をしておこうという感覚ならば、まだ許せると思っていました。つまり事態はようやくなんとかなるなら、言い訳だけしておこうと言うレベルであるならば。しかし、今回、現役の皆さんのペーパーを呼んで驚いたのは、割合に率直にお書きになっていて、今の爆発の危険も書いていることなんです。推進側の現役の中心的な学者の方々の本音がよくわかります。危険は去っていないのです。

 この中身を小出先生に確認していただき、聞いてみると「雁首そろえて、何を今更」という感じでしたし、「こちらが指摘していることを追認しているレベル」という感じでした。吉岡先生も格納容器・圧力容器の同時破損の事実と、水素爆発やドライベントが起こる危険性を、みとめている点で同じとされています。ただし推進側の皆さんが、メルトスルーの危険性に言及していないことや、核燃料損傷の比率の推定根拠が不明とお考えのようです。

 どちらにしても、危険が去っていないどころか、「今、そこにある危機」という状態なのも間違いありません。こうした流れの中で、僕らは今があるという苦い現実をもう一度噛み締めるほかはないと私は思います。

 さて、このところ、ブログへの個別の問い合わせがあったうちで、次の書き込みのことが気になっています。「政府関係筋からの情報があり、圧力容器に亀裂が入り、かなり爆発の可能性が高まっているとのこと。もう制御不能だということです。レベル7の情報はそれを見越した上での処置だそう。どこまで正しいか分かりませんが、現場の人間はその辺の認識でいるようです。」

 レベル7がそれを見越してかどうかと言う点については、専門家は否定的ですし、官邸内でも裏付ける情報はありません。そんなにきちんと思考している形跡がそもそも見つけられません。ただし圧力容器の亀裂は、専門家でも同じような判断をしている方もいますし、爆発可能性がありうるということや、制御不能も、ある程度はそうではないかという推定をされている方もいます。政府が収束方向と言っているのとは異なる見立ては複数あります。ただ、現況でかなり爆発の可能性が高まっているかどうかについては、裏付ける情報はありません。この点は、今夜、いろいろと取材しましたが、プラスもマイナスも、情報と呼べる話は僕のところには入ってきていません。ただ、大変に気になりますし、あたっていれば、大事ですので、引き続き取材は続けるつもりでおります。

 なお、最近情報提供のメールを多くいただいておりまして、大変にありがたいです。情報交換はできる場合はお電話で話したいと思います。お名前と電話番号を明記していただき、中身がきちんとしたメールならこちらから必ず連絡いたしますので、ご協力いただければ大変にありがたいです。僕自身、木下黄太、一人で全てをこなす状態ですので、行き届かない点が多々あろうかとは思いますが、お許しいただいて、教えていただけば、大変にありがたく思っています。よろしくお願い致します。





チェルノブイリ並みのレベル7という苦い現実を噛み締めて下さい。

2011-04-12 02:20:42 | 福島第一原発と放射能

以下はロイターの記事。共同も同様。レベル7はチェルノブイリに並ぶ。危険視していた大爆発が、いまだに起きておらず、ただ放射性物質がだらだらともれているだけで、この状況という認識を政府が認めはじめています。さらに原子力の推進側の現役が書いたペーパーが下記のアドレスです。危険性の指摘は、率直で、ペーパーに書かれている事態は、このブログでお伝えしていることを事実上追認していると思います。小出先生や吉岡先生などと、僕が連日、話していたストーリーと大筋で変わらないと思いました。危険は去っていないし、既にチェルノブイリ並という苦い現実を、僕は改めて噛み締めています。

http://sites.google.com/site/nuclear20110311/

↑今確認しましたがサイトはつながらなくなっています。データが消去されています。(4/12 13:59現在)

その後、コメント欄に書き込みがあり、アクセスできなかったため、代用のサイトが示されているようです。

↓下記で確認してください。

http://sites.google.com/site/nuclear20110311sub/

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最大で1時間1万テラベクレル

2011年 04月 12日 01:28 JST
 福島第一原発の事故で、原子力安全委員会は11日、原発からは最大で1時間当たり1万テラベクレル(テラベクレルは1兆ベクレル)の放射性物質が放出されていたとの試算を明らかにした。政府はこれを受け、原発事故の深刻度を示す「国際評価尺度(INES)」で最も深刻な、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故に並ぶ「レベル7」とする方向で検討に入った。
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僕から一言だけ言っておきますが、「人間は放射能には勝てません」。
こんな単純なことくらい、日本のさまざまな組織の中核的な立場の人々は、
いい加減、認識するべきです。
あなたの判断の誤りが、多くの人々を苦しめ、傷つけることになりかねません。
 
あなたは、責任を負うのですか?
 
 
 

石巻の避難所で救援活動にあたっている医師からの警告

2011-04-12 00:14:42 | 福島第一原発と放射能

石巻の湊地区でおきている事を、ある医師からメールで伺いました。ここでおきていることと、福島第一原発についておきていることは、今の社会の、国の根幹に底が通じることだと思いました。まず小野沢医師のメールをお読み下さい。ほぼ原文のままです。この後小野沢先生に取材もしています。

この記事の内容をそのまま拡散しているメールが大量に流れていると聞いています。ブログの中身を転載されるのは構いませんが、必ずこのブログのアドレスを明示して、ここからの転載だと明記してください。小野沢先生のメールと僕の記事を混濁してメールが流れているようですので、常識的な引用のルールをきちんと守ってください。過剰なことになるとご迷惑になりかねません。メールも考えて出して下さい。 (追記 2011/4/15 15:50 木下黄太)

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石巻にて、怒りと悲しみを込めて

亀田総合病院 小野沢です。
先月29日から石巻に入っています。4月6日、遊楽館という避難所で当直をしていました。
ある男性が、苦しそうだと言われ、診察をしました。すでに呼吸停止、共同偏視があり、
何か大きなイベントが起きたことは明らかでした。救急車の到着は30分後、彼は泣き崩れる妻の脇で口から血を流しながら息を引き取りました。

湊中学という避難所に行きました。リウマチの女性が手首を腫らし、痛みに耐えていました。受診の手続きを取りましたが、彼女はその避難所から沖縄への移住を希望しました。沖縄は県をあげて受け入れをしていると、あるMLで知ったからです。沖縄の担当者に連絡をすると、『罹災証明申請書のコピーが必要です』『沖縄の受け入れは、災害救助法ではなく県の予算なので、5人まとまったらはじめて飛行機に乗れます。飛行場までは自分できていただく必要があります。そこでチケットをお渡しします。』『申込書はインターネット上から、書式をダウンロードしていただき、印刷して書きこんでください』と、担当官に告げられました。非常に困難な条件で、少なくともパソコンをプリンターを持った援助者と、飛行場までの足、罹災証明書の申請を行うために市役所に行くという手順をその足が腫れた女性が手配しなければ不可能なのです。責任者の方とお話ししましたが、埒があきませんでした。

湊中学は、瓦礫の中にあります。入り口にはニチイのデイサービスセンターの車が3台、見るも無残な形で横付けになり、津波に洗われたホコリとヘドロがそのままになっています。そこでは避難途中の方がかなりの数亡くなられたとのことです。近辺には人影はまばらで、地震から1ヶ月ほどたった現在でも、車が家に突き刺さり、魚の腐った匂いが立ち込めています。湊中学避難所には電気も、水道も、下水もありません。便はダンボール製の看護師手作りの便器にして捨てています。一ヶ月経とうと言うのに。

果たして、これを市の職員が中心になって解決できるのでしょうか。
彼らも罹災しているのです。明らかに疲弊しきっています。毎日、市民から多くの非難をあびながらの仕事です。
あまりにも広範です。あまりにも人数が多すぎます。未だに、自宅避難者の詳細も分かっていません。

市内の3地区の在宅避難者の調査をします。ボランティアを東京、千葉、宮城などから60名集め、市の保健師さんに情報をもらいながらの仕事です。しかし、市内のごく一部なのです。このデータが市全体の被災者の推計に使用でき、少しの被災者のためになり、そして一番には今後の計画の助けになればと考えての行動です。

ふと、これは私の仕事だろうかと思うことがあります。

国会議員の皆さん。是非、立ち上がってください。やっている、と思われるのであれば、そのやり方がどこか間違っているのです。上手くいっていません。非常事態宣言を地区を限定して発するのもひとつの方法でしょう。

とにかく、物事が遅きに失しています。

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このメールをもらって、官邸の参与にメールを転送し、直接目を通して、現状を伝えてほしいといつものように話しました。彼は「こういう話は次々、ぼくのところにも来ているのですよ。なんとかしたいけど、まったくここは動かない。菅は決めないよ」と嘆き節ばかり返ってきます。

そして、小野沢先生とも話しました。

 石巻の湊地区にいます。木下さん。避難所は学校が始まりだすこともあって、教室で閉鎖が始まっているのですよ。そしたら、体育館しか使えない。体育館は寒いんですよ。疲れる。市内から650人があぶれていて、かなり狭いんです。避難民のうち、特に高齢者は限界に達していて、ノロウイルスの蔓延は防ぎようがない感じがします。特に体育館はさっと広がる。お年寄りや幼い子どもからやられていく。防ぎようが無いんです。そんなレベルで蔓延すると一つの体育館で一人が死ぬようなこともおきるんです。教室なら数人規模ですから、まず蔓延はとまるけれど、体育館は一人患者が出ると防ぎようがないのです。皆さん、体力が落ちているんです。メールで書いた人は脳出血で亡くなったと思います。

 こういう言い方をすると大変失礼にあたるかもしれませんが、尋常な状態で皆さんないんです。極端に言うと、地下街の浮浪者にだんだん近づいてきている感じです。避難所は、石巻において、特に湊地区は最もひどくなりつつあります。ゴーストタウンのような感じです。屋根上に大きな駐車場があるスーパー、エレベータホールに二十人の方が住んでいるままで、仮設トイレを設置はしているんですが。ところが、ちょっとはなれたところでは被災していないエリアもある、普通にホテルは営業しているんですよ。ちょっと行くと普通なんです。二、三日交代でくる公的な機関の支援者が借り上げていてそういうところに泊まっているんですよ。なんで被災者が体育館に寝て、公的な人達がホテルに寝るのか理解できません。こういうホテルや遠隔地のホテルを国が借り上げて、被災者を泊まらせたほうが話が早いんです。

 こういう場所から思い切って全面的に離れたほうがよいとは思いますよ。でもなかなか離れたがらない。居たいんです。その理由は、家のかたづけと頻発している物取りの対策なんです。それでも遠隔地のホテルから週二回でも現地にいけるなら、本当はさらなる避難を承諾すると思います。最初はこの地を離れないといっていたんですが、一ヶ月たってずいぶん変わってきました。国がホテルの予約を全部借り上げて、徹底してやればいいんです。ハッキリ言って今も非常事態は継続したままなんです。私有財産権も一部制限をかけるしか現地では方法はありませんよ。なんで東日本壊滅と総理自らが言い出した癖に、今、非常事態宣言もしない感覚が理解できません。

 ここにいて、原発のことも凄く気になっているんです。僕は今回、すこし遠隔地に避難させるスキームをやろうとして東北にいますが、その点から考えても、原発もシリアスな状況です。僕らは、もともと千葉の鴨川ですが、福島第一原発の不測の事態を考えると、関係者の子どもたちなどを西日本に避難させられる様に拠点の準備だけは既にしています。当然だと思います。さらにこの状況で浜岡原発を止めないと、万が一、何が起きてもおかしくないんです。あの立地はさらにシビアです。今、こんなことが続いているのは本当に理解できません。

 僕の見ているところでは、ウンチを紙で丸めて捨てている人がいる、なのに近くの温泉旅館では普通に宴会をしていてるんです。温泉旅館には被災者が行くべきなのに。日本の社会はなんなんだろうと思いますよ。民主党を応援していたけど、もうこんなことを一ヶ月近くも放置しているのを見ていて、ほんとに耐えられないんですよ。避難所を体育館でもきちんとした設備のある地域まで移動させる、人々を強制的に安全な場所へ移す。「バスで送ってください。もう一ヶ月も経っているんですよ。」と。さっきの余震もかなりゆれました。まさに現地は”DAY AFTER TOMORROW”の世界です。阪神大震災は木下さんは現地に行かれたならわかりますよね、あの時はボランティアがかなりいましたよ。緊張していたけど、人間が信じられた。今回もいるんだけど、エリアが広すぎて、目立たない。分散しているからかもしれないけど。だから、荒涼とした空間に、悲惨な状態が続いているんですよ。映画でしか見たことのないような世界が広がっていて、漠たる不安が収まらないんです。避難ということが津波の被災地でもきちんといまだに行われていないのです。さらに原発もおさまらない。これが現状なんです。

 

小野沢先生は遠隔地避難や避難拠点の構築という観点もお持ちの医師で、こうした津波の悲惨な現場でぎりぎりの活動を続けている方です。避難という観点から見た場合、今の政権が、津波の避難所の構築も機能していないという認識を聞くと、原発も含めたトータルとしての避難という考えに到底たどりつかないだろうという現実をさらに思い知らされます。津波による恐怖が続いていることと、原発震災の恐怖も、その原因のみならず、対応についても全く同じ感覚があるのだということを思い知らされました。本当に恐ろしい話です。





速報「きょうの地震で福島第一原発の危険について小出先生の見解」

2011-04-11 17:58:18 | 福島第一原発と放射能

 

京都大学の小出先生の話です。

1号機から3号機に電源がつながらず、水が注水できていないということですよね。水を入れなければ、炉心は溶けますから、とにかく、水をいれるしかない。なんとも状況がよくわからないが、現況でもかなり発熱をしている。すでに一ヶ月たっても発熱量は一定以上なんです。僕の類推では一号機でも三千キロワット、二号機から三号機も四千五百キロワットは少なくとも発熱が続いている状態です。冷やせないと、炉心の状態が、なんとも困った状態になるだろうと思います。一日何もできないと、炉心が本当に溶けきります。つまり、水蒸気爆発による破局、木下さんも私も最も恐れていた事態になる可能性が出てきます。大変な状態になりかねません。とにかく、一刻も早く水をいれてください。真水でも海水でもかまわない。とにかく、冷やすしかない。さらにもっと溶ければ破局に向かいます。何時間で大丈夫とはいえくません。一日近く、放置されれば大変なことになります。大変緊張する状況です。

福島第一1~3号機、外部電源切れ注水一時停止(読売新聞) - goo ニュース


福島の浜通り地域で震度6弱です。第一原発の外部電源つながらず要注意。

2011-04-11 17:51:51 | 福島第一原発と放射能

福島第一原発の周辺でまたしても強い地震です。

現在東京電力の会見によればモニタリングポストの数値に変化はないようですが、作業員が退避している状況で、現在詳しい状況は不明です。これだけ強い地震が続く状態は、福島第一原発に何らかの影響が出ないか大変に心配です。そして、今ほわかりましたが、福島第一原発の1号機から3号機に注水するシステムへの外部電源がつながっていないようです。要注意です。要注意です。

 

福島・茨城で震度6弱、茨城沿岸に津波警報(読売新聞) - goo ニュース


計画的避難地域とするのがあまりに遅すぎるし、まだ不十分です。

2011-04-11 16:33:01 | 福島第一原発と放射能

福島県葛尾村、浪江町、飯舘村、川俣町の一部、南相馬市の一部を計画的な避難地域に設定するということです。非常に曖昧な形で推移していたことが、多少前進したことは評価したいと思いますが、はっきりいってまだ足りないです。年間二十ミリシーベルトは外部被曝のみに限っても毎時2.28シーベルトです。郡山市や福島市などの人口を抱えたエリアをどうするのか、そしてもちろん内部被曝を考慮に入れた場合は、さらに様相が異なります。当然ながら年間1ミリシーベルトを超えるべきではないという、公衆被曝という従来あった話は放置されたままです。そもそも、年間二十ミリシーベルトというラインがあると感じるなら、なぜ発生一週間程度でこの判断をしないのか、高濃度に汚染されている地域の住民を政府が一ヶ月放置していた現実だけは認識してほしいと思います。

20キロ圏外に「計画的避難区域」設定へ(読売新聞) - goo ニュース


逃げたくても逃げられない人々に対して何ができるのか

2011-04-11 05:23:17 | 福島第一原発と放射能

 きのうもいろんな方々と電話していてつくづく思ったのですが、危険がどいう形で明確に有るのかということが、明示して具体的に示すことが本当に難しい状況が続いていると思います。もちろん、モニタリングポストで一定程度数値が出ていることは、当然、一つのメルクマールになりますから、毎時数マイクロシーベルトの数値が出ていれば、実は危険が迫っていることはあきらかなのですし、それ以上の数値であれば、僕からすると判断の余地はほぼないのですが、それすら、「直ちに」というごまかしの言葉を使って、国から放置されるのが現状と思います。こうなると、国が避難させる事を定めた地域以外に居住していて、現在の状況が固定化したと考えた場合にも、一定程度の被曝が想定される方々のうち、ほとんどの人々は逃げることは現実に難しいとおもいます。もちろん避難するとか避難しないとかは、個人の責任に帰着するものともいえるのですが、これは逃げてみたら実際によくわかることかもしれませんが、逃げるためには相当な覚悟のみならず、資金も人脈も含めていろんことが必要とされるのです。何を言っているのかというと、「逃げたくても逃げられない人」が、福島第一原発の近隣のエリアでも相当な数、いらっしゃるのではないかと思ったのです(前からそうだろうとは思っていましたが)。特に、妊婦や子ども、若い女性など被曝による影響が出やすいと考えられる人々であっても、そのまま居続ける以外の選択肢がないという現実をどう考えるのかと言うことです。もう少し言うと、その人々の間でも、危険性の認識が何もないのなら、居続けるのは、ある意味そういうものかなとも思います。でも危険がわかっていても、いろんな手段を得る方法がなくて、居続ける選択肢しかないケースもあるだろうなと思ったのです。本来であれば、国がきちんとした避難指示を出すと言う判断があると思うのですが、その指示がいずれにしても為されない事を前提として考えた場合に、次なる策として何が考えられるのかということです。

 これは、策というレベルのものではないのかもしれませんが、福島県内の少なくとも毎時数マイクロシーベルトの線量が出ている、自治体の住人の中で、特に妊婦や子どもなどを優先的に、避難を希望して、申し出がある家庭を、避難させる策を講じると言う方法論はあるのではないかと思いました。国が自治体を通じて、住民の意向を確認するというのか、広報をして、住民から申し出があった場合に、対応する考え方です。こうした場合には、避難させる先が必要になりますから、例えば単純に一時的に体育館やホテルに置くというスタイルではなく、西日本の、例えば過疎のエリアの空き家や公営住宅を用意して、一年以内から場合によっては数年間を想定して、考えていくやり方はどうだろうと思った訳です。福島県内の内陸部で震災の被害が大きくなく、モニタリングポストの数値も県内の中では大きくないところは、日常がかなり戻っていると言う話の中で、逃げているのは、わずかの人々をと伺ったことからも、逃げる人と逃げない人という区分けというよりも、「逃げたくても逃げられない人」という存在を考えないといけない気がしたのです。先ほどの西日本の特に過疎のエリアであれば、居住可能だけど、空き家になっている場所は少なくはありません。こうした環境でも、避難することを優先したいと考える人々、特に原発から近接している地域、具体的には福島県内の人々に対して、次善の策として考えられないのかと言うことです。勿論、こうした避難の場合、資金的に全て国におんぶに抱っこという方法では無理かもしれませんが、こういう方法もあり、自身の選択したい人に適応するべきです。やり方も人脈もわからないし、多額の資金は無いと言う人でも、一定程度の覚悟と多少の資金はある人々に対して、国や自治体が協力して対応する方法論です。自主的に避難させるエリアを拡大させるのは愚の骨頂で、避難できない人を多数を放置するというとんでもないことになりますから論外です。避難すべきエリアは具体的に定める(これも半径何十キロで定めるのに加えて、例えば飯館村のように突出して高いエリアを抱える自治体は、その自治体ごとにでも、エリア外であっても国として認定していく)。このエリアは全て国が責任をもって退避させる。このエリアに含まれていないが、福島県内の近隣エリアで、先ほどのから言っているようないわゆる「あっせん避難」というスタイルを作ることはできないだろうかという提案です。

 こうした避難の前提になるのが、結局どの程度、放射線の数値があるのかと示す、モニタリングポストの増設で、僕に近い官邸のスタッフは五十キロ圏内で簡易的なモニタリングポストの増設を提案していて、これだけは、なんとか前向きだと話していました。勿論、こういう機械の増設はすすめて頂くしかないのですけれども、一番難しいのは、いくら機械を増設しても増設しても、その数値の解釈分析をだれが行うのかということです。何度も書いている、内部被曝という観点から考えた場合には、モニタリングポストの数値だけでは、判断が難しいでしょうから、併せていろんな放射性物質の値をはかる作業も拡大して行う必要があります。こうした作業が継続してきめ細かに行う体制が整うことと、「逃げたくても逃げられない人」に対しての、何らかの対応策を考えていくことも、表裏な事なのだろうとは思います。

 しかしながら、官邸の中は、現況の危機がある程度の固定化を示していると感じているようで(僕にはその根拠は全くわかりませんが)、なんとなく安定しているような感覚が蔓延しているとも聞いています。福島第一原発についての危機意識をペーパーであげている人達が、「ペシミスト」呼ばわりされている感じの状況とも聞いています。具体的に危機が回避できている担保があれば、「万歳」と叫んでしまいたくなりますが、そういうわけでもないのに、何かそのことの危険を言う人々がペシミストとされる状況が官邸の中にあるという現実だけは、お伝えしておきます。こうした中で、いろんな方々から意見を集めて、危機がありうるという状況を伝える努力を継続している方々の意識が、どこまで維持できるのかということも心配しています。

 反原発のデモが都内であり、一万五千人(主催者発表)のデモだったそうです。デモという形式が現在の日本になじみにくいスタイルとなって、大衆の意識の中で固定化してから一体何年が経過するのか僕にはわかりませんが、こうした現状があっても、意思表示をする人の方が、世の中から異端視されるくらいの数でしかないのが日本の現実と思います(遠いドイツでは今回数十万人規模ですから)。勿論、デモの参加者で全てを考えるわけにはいきませんが、漠たる不安が広がる中で、声を伝える方法も、声を受け止める方法も、困難になっている現実が続いているのだなと思います。西日本の田舎に居て、僕ができることをもっと思いつかなければならないと、毎日自分の心には問い続けているのですが、できることにも、思いつくことにもいろんな限界を感じながら、このブログを書き進めています。ブログをご覧いただく皆さんが、万単位にはなっていて、大変にありがたく思いますが、できましたら、いろんな声を、特に具体的な話をメールでもいただければ大変にありがたいと思っています。よろしくお願いします。

「追記」

 避難の指示について、政府の方針も具体的な変更があるようですが、僕はこの感覚でもまだ甘いと思います。健康被害が極力でないようにするのが政府の務めであって、泥縄で拡大する状況は、どうしても後手に後手に回ります。状況を固着化すると判断したならば(もちろん最良想定ですが)、さらにすすめていかなければ、思わぬ落とし穴があると思います。この場合に、内部被曝という観点を軽視すると(国の姿勢は常にそうですが)、後で国が問われることになります。もちろん「直ちに」ではなくて、「後で」ですから、人としての当事者が変わるから構わないと考えているのかもしれませんが。

20キロ圏外にも避難指示へ 住民準備に1週間猶予(朝日新聞) - goo ニュース


内部被曝という問題をどう考えるのか②松井英介医師との対話「どこまで危険は迫るのか」

2011-04-10 02:01:38 | 福島第一原発と放射能

まず松井英介医師の話です。 

 木下さん、内部被曝というのは、まず、次々と呼吸をつうじてはいってくるんですよ。これが多いんです。そして、水や食物を通じてもさらに入ってくる、核種はつぎつぎといろんなものがあって、入ってきますから。時間軸で見ると短い時間と言うよりも、長い時間で広い範囲内で考えておかないと、どうにもならない。だから、内部被曝はやっかいなんです。もう一つ別の例で考えてみて見ましょうか。X線の場合は、線量と電流の量の関係を考えます。アンペア数と被曝線量はパラレルの関係にあります。低線量のCTを考案したときに、アンペア数を十分の一くらいに落とすことで、低線量のCTとして機能させています。もちろん、外部からの照射ですし、一定時間内での照射ですから、たいしたことにはなりません。染色体にまばらに傷がついても、限られた時間での話ですし、ふつうに修復されていくのです。こうしたX線と異なり、内部に入った粒から、体内で至近距離に近いところから繰り返しα線、β線の照射がくるんです。非常に至近距離で被曝しますし、そこの細胞は強く被曝することになります。DNAは傷ができると、修復の働きが当たり前のようにありますが、傷ついたところにまた放射線があたりますと、なかなか修復がうまくいかなくなることがあります。そして、間違ったくっつき方をする場合があります。内部被曝は体内に粒を取り込んでいる以上、こうした繰り返しがおきやすい環境なんです。しかも、中にありますから、外からの放射線以上に危険度は高いんですよ。繰り返し、照射されるリスクも大きいし。正しく、くっつきにくくなれば、何がおきるのかというと、、ガン、先天性障害が起こりうるんですよ。免疫系統の異常等はさらに高密度に起こりうるんですよ。だから内部被曝をCTと比較するなんて、だましのテクニックですね、全然レベルが違うんですよ。素人相手にこういうウソをつくのは僕には理解できませんね。

 それから、「直ちに影響はない」という決まり文句にも触れておきましょうか。まず、作業員の急性被曝は多かれ少なかれ、必ずありますから、これはそもそも該当しませんから。もちろん、「直ちに」というのは、急性被曝がないということしか指していないと、私は理解しています。時間軸の概念から考えると「直ちに」というのは、ちょっと後のことは想定に入れていないという意味でしかなく、本当に安心できる話ではないと言うことなんです。まあ、そういう言葉遣いでなんとなくそれで安心させる物の言い方だということです。つまり、今すぐ無くても、そのうちおきることをはっきりと言わないための言い方なんですね。具体的な言葉で言うと、晩発障害です。二年後、五年後、十年後という感じのスケールで考えていかなければいけません。このうち割合に早く出るのは、核種の粒が小さくて、母体から赤ちゃんに出てくる場合です。粒が小さければ、つたわりやすく、先天性障害は割合と早く出るのです。だから、妊婦が最も早く避難すべきなのは当然のことなんです。生まれてきた赤ちゃんに、こうした障害を極力避けるために、妊娠中の女性は守らなければならないと、私は強く思いますよ。次に子どものガンです。固形のガンというのは、時間軸で言うと20年くらいの間隔はあると思います。しかし、甲状腺のガンは早ければ数年内にでてきますし、白血病も十年以内に出てくる可能性があります。割合に早いんですよ。子どもはやはり早くて、数年内にいろんな形で発症したケースが、イラク戦争で、劣化ウランで被曝した子どもたちでもありました。子どもの方が早くて、しかもはっきりと出てくるんです。だから、子どもを避難させなければならないんです。

 長期的な調査が必要になります。今回の場合は広い地域で、多くの人々が被曝しつつある状態ですから、政府がやることは過去にない規模になります。都市部を抱えているので、本当に大変ですよ。内部被曝というのは、蓄積性のあるもの、水に溶けない核種というのがどうなっていくかということです。木下さんも、他の人に聞かれたでしょうから、判っていらっしゃると思いますが、ICRPの基準が軽視しているんですよ。内部被曝を過小評価なんです。やっかいなのは、内部被曝というのは、微量であっても無視できないんです。だから、汚染の少ないところに移住しましょうと言うことしか解決策がない。外部被曝は放射線がそれほど出なくなれば、なんとかなりますが、放射性物質は、もうすでにいろんところに出てしまっていますから、簡単では有りません。高濃度のエリアは本当に大変なことなんです。そういうことをどうしたらよいのかという例はチェルノブイリしかありませんから。対応をどうするのかは、内部被曝はかなりやっかいなものなのです。

 僕が危険性を感じているのは、福島、宮城、茨城、のエリアで、内部被爆がどういう状況なのかは危惧していますし、いろんな数値を見ていて、ある程度警戒が必要なのは、千葉、栃木、東京、神奈川でも思います。セシウムはカリウムに近くて、カリウムと間違えて認識する場合があります。もちろん、セシウム以外にもいろんな核種があります。どの核種にも警戒が必要なんです。例えば、野菜は洗った後でも、それなりの放射能があるのなら、外に付着しているだけではなくて、水分からも野菜が中に取り込んでいることを考えなければらないかもしれません。雨が降って、ある程度は染み込んでいるという想定です。こういう状況にあるのが現況なんです。だから、小さなお子さんや妊婦の方が、より汚染の高い地域にいるのは、内部被爆に取り組んできた医師として、避難してほしいと思いますよ。政治的な話は知りませんが。次には妊娠可能な若い女性でしょう。福島県内にとどまらない話ですから。

 ヨーロッパの反応は早いですね。フランスもドイツも。ドイツは大使館を大阪ベースにしたままのはずでは。チェルノブイリの経験がありますから。スウェーデンは250キロで線を引きましたし。当然、東京も入りますよ。なかなか、きびしい状態なんです。現実に可能かどうかは別として、内部被曝という観点からしますと、中部より西日本の圏内まで退避するほうが望ましいと僕は思います。いずれにしても、できる範囲内で、日本政府はまず適切な方針を出すべきなのに、そうしようとはしていない。内部被曝ということを原子力関係の人々は、世界的にもずっと軽視していました。そして、内部被曝に関しての研究蓄積は、日本にはありません。世界的にも少ないんですが。ちょうどベルリンで、チェルノブイリ関連の国際会議でしたが、日本の参加者は一人だけのはずですよ。日本の研究者で、劣化ウランの診療に携わったのが、一番まだ経験値がある気もします。とにかく、データが出てきていないんです。今のデータじゃ足りません。調査はもっとすべきだし、データは全部出さなければならない。土、地下水、水道水、大気、植物、野菜、農作物、海水、すべてから徹底的に調査をしてもらわなければなりません。ヨウ素もセシウムも、ストロンチウムもウランもプルトニウムも、あらゆる核種がどのような感じで出てくるのかを詳らかにしなければなりません。それが、はっきりしないと、どの地域にどのくらいの危険が有るのか、新たなホットスポットがあるのか、まずはそこをはっきりさせる作業をおこなうことが肝要なんです。

 松井医師のお話です。先生は岐阜環境医学研究所所長、元岐阜大学医学部で放射線医学をされていました。日本呼吸器学会呼吸器専門医でもあり、主な関連著書:『国際法違反の新型核兵器「劣化ウラン弾」の人体への影響』(2003耕文社)があります。とにかく、内部被曝の専門家は少なく、医師として発言する人もほとんどいません。外部被曝に比べて、検証しにくいことが一つの理由ではありますが、内部被曝が人体に与える影響を考察していくと、改めて中身を聞くとびっくりする思いです。その症例のおこり方まで。しかも、現時点でも、広いエリアで問題が今後、発生する可能性を指摘されると愕然といたします。強制的な避難という線引きのあとに、自主的な避難という発想があります。僕自身、いろいろと考えていますけれども、この内部被曝の危険をどう考えるのかという観点からも、引き続き、考えたいと思っています。ここは、実は、日本人がどういう生き方をするかという根幹につながる部分であるとも思いますし、このリスクを軽視することが正しいと言う人々が、まさにそれを軽視することそのものが、国民の安全を最も損ねていく可能性があると僕は思うからです。