俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

アクリルアミド

2014-10-06 10:30:36 | Weblog
 私は本を通じて多くの人から教わった。思考全般についてはドストエフスキー、ニーチェ、カント、そして手塚治虫氏からの影響が大きい。科学全般については武田邦彦氏と池田清彦氏、医学では和田秀樹氏と近藤誠氏、進化論では竹内久美子氏と長谷川眞理子氏、メディアの偏りについては毎日新聞編集委員の小島正美氏から多くを学んだ。
 その小島氏の署名記事でポテトチップスなどに多く含まれるアクリルアミドの危険性について4日付けの毎日新聞が報じた。「内閣府食品安全委員会は3日、次世代にも影響が及ぶ『遺伝毒性をもつ発がん物質』との評価案を示した。」
 今日(6日)現在、他紙やテレビによる報道は見当たらない。念のために主要新聞社のホームページでも検索してみたがヒットしなかった。内閣府の食品安全委員会が発表したのだから通常なら垂れ流される類いの情報だ。仮に内容が誤っていても「内閣府が発表したということは事実だ」と言い逃れできる美味しいネタの筈なのになぜ報道されないのだろうか。
 こういう食の安全に関する情報はかなり疑わしいものも含めて延々と報じられて来た。中国産食品は勿論、清涼飲料水や牛肉など無数の食品の危険性が指摘された。
 私の疑問は2つだ。1つはなぜ毎日新聞以外が報じないのかであり、もう1つは新米記者でも記事にできる内閣府の発表をなぜ小島編集委員の署名記事にしたのかだ。前者については重要性の低い情報と判断したか何らかの圧力が働いたかだろう。後者は毎日新聞としての不退転の決意の現れなのではないだろうか。もし小島氏の署名記事でなければ私も読み飛ばすところだった。
 アクリルアミドの有害性については、食品に関して私が最も信頼する学者の高橋久仁子・群馬大学教授も以前から指摘していた。私が信頼する人が二人揃って主張するのだから、私としては信用せざるを得ない。但しこれは私の主観的判断に過ぎない。報道しない他紙やテレビ局のほうが正しいのかも知れない。
 メディアが情報を歪めることに警鐘を鳴らし続けている小島氏が、自らそんな悪事に手を染めるとは考えにくい。私個人としては小島氏を信頼しつつ今しばらくは静観しようと思う。最悪を想定すればメディアが何らかの圧力に屈したということだが、そうでないことを願いたい。
 朝日新聞に限らずマスコミは世論操作をしたがるものだ。嘘を報じることだけではなく、大切な事実を報じないことも重大な犯罪だ。大陸中国では香港で何が起こっているかが全く報じられていない。

移動手段

2014-10-06 09:43:11 | Weblog
 こんなデータが見つかった。英文なので詳細はよく分からないが、移動距離1億㎞当りの死亡者数だ。①バイク10.9人②徒歩5.4人③自転車4.5人④自動車0.3人⑤電車0.06人⑥バス0.04人⑦飛行機0.005人。
 日本ではこんなデータは公開されていない。もし研究結果があれば教えて欲しいが、多分、電車の死亡者数はもっと少なく、歩行者と自転車の死亡者数はもっと多いだろう。世界一安全な新幹線がある一方で、歩行者・自転車といった交通弱者のための安全対策は蔑ろにされているからだ。
 1日に新潟県の加茂市長が小中学生に対して「自転車にはなるべく乗らず(中略)徒歩かバスを利用する」よう勧めた。気持ちは分かるが、このデータに基づく限りこの指導は誤りだ。徒歩の死亡率は自転車よりも高い。こんな錯覚を起こすのは距離当たりの死亡率と時間当たりの死亡率を混同するからだろう。このデータには時間当たりの死亡率も採り上げられており、1億時間当たりの死亡者数は徒歩では22.0人、自転車では55.0人となっている。時間当たりの死亡率では徒歩のほうが安全だが、自転車のほうが早いので距離当たりでは安全ということになる。
 心理的には時間当たりのほうが分かり易い。人は時間の中で生きており距離の中で生きている訳ではない。しかし仮に光速で移動できる乗物がありその距離当たりの死亡率が飛行機の1/5の0.001であれば、1億時間当たりの死亡者数は18,000人というとんでもない数になる。飛行機の6,000倍危険ということになるがこれは無意味な数字だ。遊覧船ならともかく移動手段である限り、距離当たりで比較すべきだろう。
 自転車の所有率は大阪府が一番高いらしいが、移動距離は田舎のほうがずっと多い。私自身、大阪に住んでいた間はどこへ行くにも電車だったが、伊勢に住むようになってからは電車の70倍も危険な自転車を毎日使わざるを得ない。電車に乗るのは大阪か東京に出掛ける時だけだ。
 田舎の住民は自動車か自転車に頼らざるを得ない。自動車の死亡率は電車の5倍だ。公共交通手段が安全なのはATS(自動列車停止装置)などのシステムが備わっていることに加えて、大量輸送のために頑丈に作られているからだろう。電車と自動車が衝突すれば死亡者は大抵の場合、自動車の側だけだ。
 公共交通機関が充実した都会は移動での安全性という面でも田舎より有利だという事実は余り公開したくないことなのかも知れない。だから公式データを公表しないのだろう。都会暮らしが便利で快適でしかも安全ということであれば地方が廃れるのは当然だ。地方創生と言うのであればこんな格差も見逃すべきではなかろう。特に徒歩と自転車にしか頼れない田舎の子供の交通事故死亡率は都会と比べて有意に高いのではないだろうか。