俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

林業

2015-02-06 10:10:31 | Weblog
 ローカルな話だが、私が住む三重県産の原木が初めて輸出されることになった。今月はヒノキ45㎥を韓国に、来月にはスギ208㎥を台湾に輸出するとのことだ。輸出するためには様々な制約がある。だから実績がある特定の地域から輸出されることが多いが、全く未経験の三重県からも輸出されるということはそれだけ市場が拡大しているということだろう。昨年の日本からの輸出量は約50万㎥でこの2年間で5倍に拡大しているそうだ。隠れた成長産業と言えるだろう。2年前に「円安のメリット」という記事で林業などの第一次産業の復活を期待したが現実になりつつあるようだ。
 日本は国土の67%が森林という森林大国でありながら安い輸入材に頼っていた。世界でも有数の森林国でありながら世界屈指の輸入国だったのは輸入したほうが安かったからだ。考えてみればこれは奇妙な話だ。木材のように嵩張って低単価の商材はわざわざ海外から輸入するよりも国内調達したほうが遥かに有利な筈だ。円高のために折角の資源が活かされていなかったがこれで国内外で有効に活用されることになる。
 平成24年の日本の木材輸入量は約5千万㎥で自給率は28%だったそうだ。広大な原生林があるブラジルでさえ森林率は65%であり、それを上回る日本が木材を大量に輸入しているとは全く奇妙な話だ。安い輸入木材に押されて価格が低迷し、森林が手入れされないために伐採が高コストになるという悪循環に陥っていた。放置された森林はゴミ溜めのようになっていたが適度に伐採されることによって「宝の山」に変わる。
 マスコミは円安のメリットがあるのは大企業だけであるかのように報じるがそうではないことが実証された。同じことが農業や水産業でも起こりつつある。「餃子の王将」が食材の国産化を図りつつあるが、国産品シフトが進めば課題とされていた食料自給率も高まる。
 植物は成長する時に大量のCO2を吸収する。成長した木をどんどん使えば新しい木が育つのでCO2削減効果が高まる。森林面積を減らさずに木材を輸出することは一石二鳥にも三鳥にもなる。

EBM

2015-02-06 09:35:42 | Weblog
 独学を続けていると自分の無知に気付かされることが多い。これでは80歳まで勉強を続けてもまだ足りない。ゲーテのファウストのように知恵の過剰に飽きるレベルには遠く及ばない。これは単に私が不勉強なせいではない。専門家とマスコミが挙って嘘をバラ撒いているから社会全体に嘘が蔓延っているからだ。これは朝日新聞だけに限ったことではない。嘘を暴くことに忙殺されてしまって、なかなか知識を深めることに取り組めない。
 一番酷いのが医学常識だ。国民総てにとって重要な情報でありながら科学と言うよりもオカルトの世界だ。医師は患者を診ない。彼らは標準治療という厚生労働省が定めたマニュアルに従う操り人形のようなものだ。病名を定めたあとはマニュアル以外のことはしないししてはならない。病気によっては薬の処方量まで定められている。それは患者の体格や年齢に拘わらず一定量であり、決められた量を処方しなければ保険外診療になってしまう。老人が多くの薬を捨てているのは馬鹿げた医療制度が原因であり、時には処方した医師自らが捨てるように指示していることもあるだろう。薬の増量ならとにかく減量ぐらい医師の判断に任せて良いと思うのだが厚生労働省がガチガチに縛りを掛けている。「医師の匙加減」という言葉は最早死語だ。マニュアル通りであれば責任を問われないのだからいい加減なものだ。医師とは酷いレシピでの調理を強要される料理人のようなものだ。
 マニュアルに従うのは初心者だ。熟練すればマニュアルを超えねばならない。ところが医療の世界ではマニュアルを超えることが禁じられている。これではまともな医師が育つ筈が無い。医療費は定額であり質の違いは無視されて量で評価される。これではモチベーションが高まる筈が無い。収入を増やすための検査と検査機器ばかりが増える。
 医療が堕落したのは検証されないからだろう。その治療が適切かどうかが問われていない。人体実験ができないことも一因だろうが、EBM(根拠に基づく医療)が唱えられるようになったのは、これまでずっと根拠の無い医療が蔓延っていたからに他ならない。検証することなく漫然とそれまでのやり方が継承されている。これでは科学ではなく芸事だ。師匠の教えを守るだけではいつまで経っても誤った治療法が改められない。
 実験できなければ科学ではない。それにも拘わらず医療業界は科学であるかのように振舞い、科学に疎いマスコミが間違った情報を垂れ流す。医療全体を棚卸して事実と虚構に峻別することが急務だろう。