俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

進化する社会

2015-02-14 10:07:20 | Weblog
 生物の進化の鍵を握るのは個体差だ。生物はそれぞれ微妙に異なり、その中で比較的良く環境に適応した個体が多くの子孫を残す。次の世代でもやはり良く環境に適応した個体が増える。この積み重ねが進化を導く。ダーウィンが進化論の構想を得たガラパゴス諸島では島ごとに環境が異なるためにそれぞれに適応した動植物が棲んでいた。もし個体差が無ければ適者生存の法則が働かず単に運の良い個体が生き延びることになり進化しない。個体差があるからこそ進化が起こる。
 もし完全な生物であれば進化する必要は無い。しかしそんなことはあり得ない。環境は常に変化するからいずれ環境の変化に取り残されて絶滅する。だから個体差の大きい種のほうが環境の変化に強い。どれかが生き延びて子孫を残すからだ。多様性が求められるのはこういった事情があるからだ。その逆が近親交配であり劣性遺伝子が発現し易い。
 それぞれの企業は異なった活動をする。その活動が良ければ繁栄し悪ければ衰退する。こうして良い企業が増え悪い企業は減る。ソ連の企業は中央集権支配だったから総てが駄目になった。個々が異なるからこそ栄枯盛衰がある。
 官公庁はルールや慣例に従って同一の対応をする。だから進化しない。いつまでも同じ状態のままだ。シーラカンスのように昔の姿のままで生き長らえる。官公庁は進化しにくい仕組みだから常に時代遅れになる。進化を繰り返す民間企業と比べて数世代古い体質を温存している。首長や政治家などが改革しなければいつまで経っても古い体質を改めない。
 日本の医療が進歩しないのは官公庁が主導するからだ。厚生労働省が標準治療を定めてそれをなかなか改めようとしない。被害が拡大したり外国で否定されて初めて問題点が検討されるというとんでもない体質だ。もっと速やかに見直せる体制に改めなければ国民は犠牲にされ続ける。しかし厚労省と製薬会社とマスコミという悪のトライアングルを打破することは難しい。敵は余りにも強力だ。
 法律は頻繁に改正される。社会が変化するのだからそれに適応せねば時代にそぐわない悪法になる。法律が進化しなければ悪法を悪用する人が続出することになる。憲法もいつまでも不磨の大典扱いをせずに是々非々で見直すべきだろう。機械と同じように修繕されなければ劣化し続ける。進化しないものは実質的に退化している。

使い捨てライター

2015-02-14 09:31:29 | Weblog
 マスコミは非正規雇用問題を報じるが、マスコミが悪用している超非正規雇用こそより重大な問題ではないだろうか?フリージャーナリストこそ超非正規雇用労働者だ。マスコミは彼らを食い物にしている。
 正規のジャーナリストになることは難しい。その一番の原因はコネ入社だろう。大手のマスコミがコネ採用をしていることは公然の秘密だ。大企業の幹部や著名人の子息を優先的に採用する。それは本人の資質ではなく親とのパイプ役として利用するためだ。VIPとの深い繋がりがある人を外してまでわざわざ馬の骨を雇用する必要は無いと彼らは考える。
 本来ジャーナリストとしての能力がありながら閉め出された人はどうするだろうか。他の業種を選ぶかフリージャーナリストになるかしか無い。こうして多くの有能な人材がフリージャーナリストの道を選ぶ。
 フリージャーナリストの社会は厳しい。普通の取材をしていては仕事にならない。ここでは正規のジャーナリストのほうが圧倒的に優位だ。企業の看板を背負った記者に太刀打ちできないからニッチ(隙間)を狙わざるを得ない。空いている場所は非合法の世界だ。戦場が多く選ばれるのはそこが法の支配を受けないからだ。彼らは好き好んで危険な場所を選ぶ訳ではない。そこにしか仕事が無いからだ。
 正規のジャーナリストは記者クラブなどで表の情報を得る。裏の世界の情報集めは非正規ジャーナリストの仕事だ。こうして安全な仕事と危険な仕事の住み分けが行われる。
 フリージャーナリストの仕事は「売れてなんぼ」の世界だ。だから高く売れる情報、より高く売れる情報が求められる。こうして身の危険も顧みず自己責任で危険地域に赴く。
 マスコミはフリージャーナリストを利用し尽くす。こんな便利な捨て駒は無いからだ。自らの意思で危険を冒して貴重な情報を提供してくれる。まるで決死隊の志願兵のような存在だ。
 非正規雇用労働者の立場は弱い。雇い止めを食らう恐れが常にある。フリージャーナリストの不安定さはそれどころではない。そもそも雇用関係さえ無い。どんな危険な仕事であろうとも自己判断と自己責任で行ったことにされている。
 雇用関係も依頼責任も発生しないフリージャーナリストはマスコミにとっては格好の使い捨て「ライター」だ。
 非正規雇用、コネ入社、あるいは偽装といった問題をマスコミは社会悪として糾弾する。しかし当のマスコミこそこんな悪弊の温床なのではないだろうか。敵に回すと怖いマスコミを告発することは無名人にしかできないことだろう。