俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

2016-01-02 11:53:59 | Weblog
 「卵を1日に2個以上食べるとコレステロール値が上がって健康を損なう」という俗説ほど広く流布している迷信は珍しかろう。一物全体食であり最も完全栄養食に近いとも言われる卵がなぜこんな悪評を立てられることになったのだろうか。
 酷い話だが、昨年(2015年)4月に厚生労働省は突然コレステロール摂取量の上限基準を撤廃した。残念なことにマスコミが余り報じなかったためにこの正しい知識は国民に周知されず、今尚コレステロールは有害物と多くの人が信じている。
 デマの発信元が誰なのかは分からないがそれを拡散した主犯は主婦だろう。戦後、急激に食事の洋風化が進む中で特に人気が高かったのは卵と肉だ。「巨人・大鵬・玉子焼き」という言葉が残っているように卵の人気は絶大だった。しかも卵には汎用性があり大半の料理に使えるから幾らでも消費される。困ったことに当時の卵は高級食材だった。今でこそ物価の優等生と言われているが、裏を返せば、当時の卵は高かったということだ。卵はバナナに次いでこの50年間で最も値上がりしていない食品だ。最も値上がりしたのは魚類で、食品以外も含めて最も激しく値上げされたのは郵便料金だ。
 まだ貧しかった日本人は家計を切り詰めるために偽科学を利用した。それが「卵や肉を食べるとコレステロールが増える」だ。多分このデマを広げた人々はコレステロールとは何かということさえ理解せずに何となく科学的らしい理屈に飛び付いたのだろう。子供もコレステロールといった訳の分からないものを持ち出されては文句の言いようも無い。こんな倹約のための虚言が世代を越えて刷り込まれた。「卵は1個だけ」は栄養学的な根拠を欠いたまま経済的事情に基づいて広められた。
 コレステロール有害説の発端は1913年まで遡る。ロシアの科学者がウサギにコレステロールを食べさせることによって動脈硬化を起こさせ、動脈硬化の原因と特定した。しかし少し考えれば分かることだがこれは酷い研究だ。草食動物のウサギにコレステロールを食べさせて異常が生じるのは当たり前のことだ。これは長距離走の選手にガソリンを飲ませるような馬鹿げた実験だ。当然この説はすぐに否定されたが、そんな誤った学説を孫引きする人が絶えなかったために俗説として生き残った。
 利害が絡むとデマは拡散力と定着力を増す。製薬会社はデマを利用して大儲けをしている。総合感冒薬などの有害な薬と生活習慣病の薬のような効かない薬こそ彼らのドル箱だ。逆説的な言い方だが、効かない薬ほど儲かる。治療効果の高い薬であればすぐに不必要になるが、効かなければ延々と使われ続ける。
 卵の場合、家計を預かる主婦による苦肉の策だったのだろうが、今や安価で良質な食材だ。鶏卵事業者は科学者などに協力を求めてデマの根絶を図るべきだろう。

箴言集(3)

2016-01-02 09:22:12 | Weblog
 私の理想は簡潔で辛辣な文章だ。上手く伝わらないと思うと長くなる。

 事実を積み上げて結論が得られる。結論を正当化するために事実を探すべきではない。

 高い収支目標を設定して達成できなければ、多くの場合、営業部門が咎められる。このことによって管理部門の地位が相対的に高くなる。

 日本では年齢と喫煙による差別だけが許されている。

 我儘な女と付き合うことは可能だが、我儘な企業に勤めながら我儘な女と付き合うことは難しい。

 「婆抜き」や「婆掴み」と呼ばれるゲームは老母の押し付け合いを模したゲームだろうか。

 セデスはC'est deth(It's deth)と私には聞こえる。

 2%の死亡率を1%に減らした治療法は「死亡率半減」と自慢する。しかし生存率を見れば98%を99%に僅か1%高めるだけだ。

 「あいう」と言った時点で突然死んだ人が1億年後に蘇ればいきなり「えお」と言うだろう。

 人事を尽くさずに天命を待てば必ず失敗する。

 挑んで失敗した場合、反省するから改善されて次回のチャンスに活かされ得る。挑まなければ反省しないから、次回のチャンスも逃すだろう。

 昔は駅のトイレに紙は無かった。常備されるようになったのは利用者に対するサービスが目的ではなく、排水管の詰まりを減らすためだろう。

 夫婦で2,000時間働くなら、それぞれが1,000時間ずつ働くよりもどちらか一方が2,000時間働いたほうが収入は多くなる。

 飲酒運転において、運転力が低下していることよりも、低下していることに気付かないことのほうが危険だ。

 女性器が、相手を拒絶できる位置にあるから人類は進化できた。

 パトカーはパトロール(patrol)をしていなくてもパトカーと呼ばれる。これは最も古いアメリカ製のテレビドラマの1つ「ハイウェイ・パトロール」のせいだろう。

 老人が継続的に運動していれば老化を実感する。私の場合、水泳のタイムが順調に落ち続けることによって痛感させられる。