「卵を1日に2個以上食べるとコレステロール値が上がって健康を損なう」という俗説ほど広く流布している迷信は珍しかろう。一物全体食であり最も完全栄養食に近いとも言われる卵がなぜこんな悪評を立てられることになったのだろうか。
酷い話だが、昨年(2015年)4月に厚生労働省は突然コレステロール摂取量の上限基準を撤廃した。残念なことにマスコミが余り報じなかったためにこの正しい知識は国民に周知されず、今尚コレステロールは有害物と多くの人が信じている。
デマの発信元が誰なのかは分からないがそれを拡散した主犯は主婦だろう。戦後、急激に食事の洋風化が進む中で特に人気が高かったのは卵と肉だ。「巨人・大鵬・玉子焼き」という言葉が残っているように卵の人気は絶大だった。しかも卵には汎用性があり大半の料理に使えるから幾らでも消費される。困ったことに当時の卵は高級食材だった。今でこそ物価の優等生と言われているが、裏を返せば、当時の卵は高かったということだ。卵はバナナに次いでこの50年間で最も値上がりしていない食品だ。最も値上がりしたのは魚類で、食品以外も含めて最も激しく値上げされたのは郵便料金だ。
まだ貧しかった日本人は家計を切り詰めるために偽科学を利用した。それが「卵や肉を食べるとコレステロールが増える」だ。多分このデマを広げた人々はコレステロールとは何かということさえ理解せずに何となく科学的らしい理屈に飛び付いたのだろう。子供もコレステロールといった訳の分からないものを持ち出されては文句の言いようも無い。こんな倹約のための虚言が世代を越えて刷り込まれた。「卵は1個だけ」は栄養学的な根拠を欠いたまま経済的事情に基づいて広められた。
コレステロール有害説の発端は1913年まで遡る。ロシアの科学者がウサギにコレステロールを食べさせることによって動脈硬化を起こさせ、動脈硬化の原因と特定した。しかし少し考えれば分かることだがこれは酷い研究だ。草食動物のウサギにコレステロールを食べさせて異常が生じるのは当たり前のことだ。これは長距離走の選手にガソリンを飲ませるような馬鹿げた実験だ。当然この説はすぐに否定されたが、そんな誤った学説を孫引きする人が絶えなかったために俗説として生き残った。
利害が絡むとデマは拡散力と定着力を増す。製薬会社はデマを利用して大儲けをしている。総合感冒薬などの有害な薬と生活習慣病の薬のような効かない薬こそ彼らのドル箱だ。逆説的な言い方だが、効かない薬ほど儲かる。治療効果の高い薬であればすぐに不必要になるが、効かなければ延々と使われ続ける。
卵の場合、家計を預かる主婦による苦肉の策だったのだろうが、今や安価で良質な食材だ。鶏卵事業者は科学者などに協力を求めてデマの根絶を図るべきだろう。
酷い話だが、昨年(2015年)4月に厚生労働省は突然コレステロール摂取量の上限基準を撤廃した。残念なことにマスコミが余り報じなかったためにこの正しい知識は国民に周知されず、今尚コレステロールは有害物と多くの人が信じている。
デマの発信元が誰なのかは分からないがそれを拡散した主犯は主婦だろう。戦後、急激に食事の洋風化が進む中で特に人気が高かったのは卵と肉だ。「巨人・大鵬・玉子焼き」という言葉が残っているように卵の人気は絶大だった。しかも卵には汎用性があり大半の料理に使えるから幾らでも消費される。困ったことに当時の卵は高級食材だった。今でこそ物価の優等生と言われているが、裏を返せば、当時の卵は高かったということだ。卵はバナナに次いでこの50年間で最も値上がりしていない食品だ。最も値上がりしたのは魚類で、食品以外も含めて最も激しく値上げされたのは郵便料金だ。
まだ貧しかった日本人は家計を切り詰めるために偽科学を利用した。それが「卵や肉を食べるとコレステロールが増える」だ。多分このデマを広げた人々はコレステロールとは何かということさえ理解せずに何となく科学的らしい理屈に飛び付いたのだろう。子供もコレステロールといった訳の分からないものを持ち出されては文句の言いようも無い。こんな倹約のための虚言が世代を越えて刷り込まれた。「卵は1個だけ」は栄養学的な根拠を欠いたまま経済的事情に基づいて広められた。
コレステロール有害説の発端は1913年まで遡る。ロシアの科学者がウサギにコレステロールを食べさせることによって動脈硬化を起こさせ、動脈硬化の原因と特定した。しかし少し考えれば分かることだがこれは酷い研究だ。草食動物のウサギにコレステロールを食べさせて異常が生じるのは当たり前のことだ。これは長距離走の選手にガソリンを飲ませるような馬鹿げた実験だ。当然この説はすぐに否定されたが、そんな誤った学説を孫引きする人が絶えなかったために俗説として生き残った。
利害が絡むとデマは拡散力と定着力を増す。製薬会社はデマを利用して大儲けをしている。総合感冒薬などの有害な薬と生活習慣病の薬のような効かない薬こそ彼らのドル箱だ。逆説的な言い方だが、効かない薬ほど儲かる。治療効果の高い薬であればすぐに不必要になるが、効かなければ延々と使われ続ける。
卵の場合、家計を預かる主婦による苦肉の策だったのだろうが、今や安価で良質な食材だ。鶏卵事業者は科学者などに協力を求めてデマの根絶を図るべきだろう。