俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

模擬面接

2010-04-09 15:26:07 | Weblog
 就職難の中、模擬面接に励む大学生が多いらしい。模擬面接を通じて完璧な応答を習得するつもりなのだろうが、これには大きな危険がある。幼稚園や小学校ならともかく、当たり障りの無い無難な答えなど企業の面接官は求めていないからだ。
 面接ではないが小論文に関しては有名な話がある。朝日新聞が入社試験で「ペンは剣より強し」について書けという問題を出した。採点者はうんざりしたそうだ。どの論文も判で押したようにペンの強さを力説するものばかりで、採点者は「ペンの弱さについて書いていたらそれだけで満点を与えたい」と思ったそうだ。
 試験とは違って面接には正解は無い。敢えて正解の無い質問をすることで被面接者の個性や人間性を探ろうとしている。ここで当たり障りの無い無難な答えをすればそれは多分、他の多くの被面接者と同じような答えになるだろう。面接官は「またか」と思ってうんざりするだろう。
 模擬面接をすることが無駄だとは言わない。私も職場での上司として部下に対して模擬面談を行った。しかしその目的は「何と答えるか」ではなく「どう答えるか」だった。
 マニュアル志向の強い最近の大学生は安易に「正解」を求め、その結果として自ら墓穴を掘ってしまいそうに思える。

B級グルメ

2010-04-06 14:16:14 | Weblog
 高ければ旨いのは当たり前で、安ければ不味いのもやむを得ないが・・・・。
 私は長年、吉野家の「旨い、安い、早いの三拍子」が理解できなかった。安いと早いは分かる。しかしなぜ「旨い」と言えるのか分からなかった。
 昔、初めて東京に出張した時にやっとその謎が解けた。東京には2種類の飲食店しか無かった。高くて旨い店と安くて不味い店のどちらかだ。安くて不味い店と比べたら吉野家の牛丼は旨かった。尤も、最近では関東でも安くて旨いチェーン店が増えているようだ。
 一方、大阪には安くて旨い個店が沢山ある。その多くは薄汚い店だ。設備投資を最小限に抑えることによって無駄な支出を無くしているから安いと旨いが両立できるのだろう。内装に投資しなければ素材や技術に投資できる。
 関西ではグルメ本の評価は低い。気取った店よりも薄汚い店のほうが安くて旨いからだ。大阪は日本一のB級グルメの宝庫だろう。探せば安い・旨い・汚い(=内装などに金を掛けない)という三拍子揃った店は沢山ある。残念ながらB級グルメの名店を見つけるためには自分で探すか口コミに頼るかしかない。こういう店は固定客だけで充分経営は成り立っているので宣伝費は一切使わないから。
 但し、汚い店が必ずしも安くて旨い訳ではない。汚い・安い・不味い店も少なくない。それでも綺麗・高い・不味いよりはマシだろう。

違いが分かる

2010-04-06 14:02:13 | Weblog
 コーヒーの味に敏感な人がいる。各店の味を識別してランク付けをする。ちょっとした違いでも分かるらしい。少なくともコーヒーに関する味覚・嗅覚が他の人よりも鋭いから違いが分かるのだろう。
 ワインのソムリエも信じられないほど鋭い味覚と嗅覚を持っている。音楽家も一般人とは全然違った鋭い聴覚を持っているようだ。
 同じように、賢い人には人の違いが分かる。賢い人には人それぞれの知的レベルが区別できる。まるでコーヒーを飲み比べるように識別してランク付けできるらしい。一方、愚かな人には皆が同じに見える。どの人も自分より賢そうだということでいずれも100点で同レベルになってしまう。
 法人には人事部門がある。この担当者は決して最優秀の人材ではない。最優秀者はもっとクリエイティブで利益を生む部門に配属される。人事担当者は概して保守的・管理主義的・権威主義的だ。大して優秀でない人事担当者が自分より優秀な人をどうやって評価するのだろうか。理解できない筈だ。
 彼らは結果によって判断する。結果なら後付けだから誰にでも評価できる。あるいは組織間・組織内での評価を鵜呑みにする。自分達よりも賢い人の評価だから信用できるという理屈だろう。
 しかし人事部門がこんな低レベルで良いのだろうか。優秀な人事担当者がいれば組織はもっと活性化するのではないだろうか。

新党

2010-04-06 13:46:37 | Weblog
 自民党の一部による新党作りは実に奇妙な動きだ。反民主・半自民の自民党分派のような理念無き新党など本来あり得ない。訳の分からない新党ではなくいっそのこと「老人党」を作ったらどうだろうか。70歳前後の彼らが先輩老人として団塊の世代を含む老人全体の地位向上を図るという図式ならよく分かるし、老人の数は非常に多いので支持基盤も磐石だ。
 これは決して老人のエゴではない。若死にする人以外は誰もが老人になる。老後の生活の充実は全国民の悲願とも言えよう。
 格差が一番大きいのは老人だ。定年の無い政治家や経営者がいる一方、経験も知識も知恵も豊富でありながら定年退職を強いられた人も大勢いる。彼らは自嘲気味に「サンデー毎日」と呟いている。もし格差是正が社会正義なら高齢者のこの格差こそ是正すべきものだろう。
 60歳定年制はタテマエ上では見直されたことになっている。しかし実態は全然違う。リーマンショック以降、年功序列制により高給取り(実は若い頃の給料の後払い)の高齢者が企業から狙い撃ちされている。リストラのメインターゲットは高齢者だ。
 病弱や痴呆症の老人には介護と福祉を、健康で勤労意欲もある老人にはそれに相応しい職を与えて納税させることこそ国益に適う。高齢者の自立と支援を最大のスローガンとする老人党なら、訳の分からない新党よりも広く国民の支持を得られるのではないだろうか。何せ、誰でもいずれは老人になるのだから。

冬のトマト

2010-04-02 15:11:00 | Weblog
 トマトは夏の野菜だ。それを冬に食べるためには、温室で栽培をするか、南国や南半球から輸入するかのどちらかしか無い。フードマイレージや地産地消といった戯言に踊らされそうになるが、実際には温室栽培と輸入とどちらのほうが地球環境のために悪いだろうか。CO2排出量に限るなら圧倒的に温室のほうが有害だろう。
 温室栽培のためには四六時中暖房をせねばならない。大きな温室ほど大量のエネルギーが必要だ。
 一方、輸入する場合、大型貨物船で運ぶならトマト1個当たりの石油使用量は1ccにも満たないだろう。
 こんなことを考えていると環境問題に関する議論は本当に上滑りだと感じざるを得ない。なぜ温室が問題にされずに温室効果ガスが問題にされるのだろうか。温室のほうが明らかに有害だ。

内政と外交

2010-04-02 14:55:24 | Weblog
 仮にロシアと「3島返還」が合意に達したとする。それに反対する野党が「4島返還」を主張して政権を奪った場合、その新政権はどうすべきだろうか。4島返還の可能性を残した上で3島返還を推進すべきだろう。ロシアにいきなり4島返還を突き付ければ交渉は決裂して、少なくともその後50年は1島も返還されることは無いだろう。
 外交はギリギリの妥協で成立する。最もデジタルから懸け離れたアナログの世界であり白黒で割り切れるものではない。相互の利害を極限まで調整するのが外交だ。相手国の利益に配慮し過ぎることは自国の損失を招く行為であり背任に等しい。
 政権交代が頻繁に起こるアメリカではこと外交に限っては前政権の路線を継承することが不文律となっているらしい。それが国益に適うからだ。たとえ前政権が起こした戦争であり、新政権がそれに反対して政権を奪った場合でも、新政権が即時停戦をすることは無い。利益を最大にする条件での講和を模索する。そうしないと国益を損なうからだ。
 国内問題なら政権交代を機に幾ら見直しをしても構わない。ダムを止めたり税制を変えたり郵便局を国営に戻そうと全く構わない。それは国内の問題であり国内の誰を優先するかというコップの中での争いに過ぎない。
 しかし外交は違う。外交の失敗は100%国益(国民益)を損なう。こんな当たり前のことを鳩山首相は理解していないようだ。

野生動物

2010-04-02 14:43:15 | Weblog
 野生動物をペットにしようとしても多くの場合失敗するらしい。アライグマやタヌキの子をペットとして飼育していてもある日突然飼い主に対する敵意を剥き出しにして野生化してしまうそうだ。
 犬や猫あるいは豚などの場合、飼い主の命令を受け入れる。飼い主がしつけとして叱ることに対して不快感を示すこともあるが、給餌者という立場が忘れられることは無い。叱られてプイッと出て行った猫も空腹になれば飼い主に甘える。彼らは叱られるというデメリットと餌というメリットを秤に掛けることができる。
 しかし本来野生である動物の場合、思考の仕組みが全然違うようだ。餌は理解しても「給餌者」は理解できないようだ。そのため給餌者に対する恩は感じず、叱る者=攻撃する者=敵と認識するようだ。
 こんな野生動物のような思考回路を持った人間が職場や学校や家庭でも見られるようになって来た。一度叱られただけで親を敵と見なす忘恩の徒もいる。こんな「野生人」と結婚した人は不幸にしかなれない。たった一度の食い違いで心は離反してしまう。こんな相手とは一刻も早く離婚したほうが良かろう。