俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

デモ

2010-10-19 15:29:43 | Weblog
 言論統制が行われ、国を批判すれば国家反逆罪とされる国でなぜデモが認められるのだろうか。デモは本来、反体制活動でありデモが認められることはあり得ない筈だ。
 しかし現実として中国ではデモが行われている。反日デモであったり反仏デモであったり、多くは外国に抗議するデモだ。これらは官製デモであるとしか考えられない。国の方針に逆らうことは許されないのだから、国の方針に基づいてデモが行われている。変な話だ。
 国の方針に基づいたデモにどんな意味があるのだろうか。海外諸国に対するアピールでしかない。言論統制の無い国でのデモは民意の表れだ。民衆が自分達の意思を表明するためにデモを行う。一方、言論統制のある国では国の方針に基づいてデモが行われる。この二者は全く異質なものだ。
 中国で反日デモが行われたからといって中国人民が反日感情を高めていると考えるのは間違いだ。ただ単に中国政府が反日感情を煽っていると解釈すべきだろう。
 例外は国内での権力闘争に基づくデモだろう。中央権力から排斥された地方の権力者が自らの力を誇示するために、中央政府が嫌がりかつ国家反逆罪にできないスローガンを掲げてデモをさせる。こちらは地方官製デモだ。これは地方の権力者が力を中央に誇示するための内政活動に過ぎない。どちらにせよ中国でのデモは民意とは関係無く行われる。言論統制の無い国でのデモと同等に考えるべきではない。

綱領

2010-10-19 15:15:11 | Weblog
 組織は何らかの目的を持つ。同じ目的を持った人が集まって組織が形成され、その目的は綱領として明文化される。
 ところが綱領の無い政党という訳の分からないものが存在することを最近知った。民主党には綱領が無いそうだ。
 綱領の無い政治集団?・・・・そんなものはあり得ない筈だ。政党とは共通する政治的目標を持った人の集まりであり、綱領の無い政党とは烏合の衆に過ぎない。
 民主党の政策がブレる根本原因はここにある。政党としての理念が無いのだから、政策はその場凌ぎのポピュリズムでしかあり得ない。
 民主党は旧民主党と小沢グループの自由党が合併した党だ。そのため民主党は自民党崩れや民社党、社会党その他諸々の残党の寄り合い所帯だ。自民党には反共産主義という理念があるが、民主党の政治家の共通点は「自民党政権に反対」ということでしかない。だから綱領を作れないのだろう。綱領の無い政党には理念が無いのだから、問題が発生しても場当たり的な対応しかできない。
 綱領が作れないほど政治的理念が違うのなら、いっそのこと民主党と自由党に分かれて、それぞれが綱領を作ったうえで改めて連立政権という形を取ったらどうだろうか。たとえ個々の政治家を信じることが可能であっても烏合の衆(理念の無い集団)を信じることは不可能だ。

派遣労働者

2010-10-15 16:13:28 | Weblog
 政府は製造業への労働者派遣を禁止しようとしているが、私は労働者派遣を百害あって一利無しだとは思わない。
 仕事上で多くの派遣労働者と知り合ったが、彼らの多くは決して派遣労働に不満を持っていなかった。派遣元と労働者は結構長い付き合いをしている。派遣元は派遣先での勤務ぶりに関する情報を蓄積しているから、勤務態度の良い人ほど優先的に派遣されるから仕事は安定しているそうだ。
 特にIT関係の仕事はシステムの導入時にだけ極端な突貫作業が発生するので、受け入れ側にとっては経験豊富な技術者を派遣して貰えれば一騎当千の非常に貴重な戦力となる。
 派遣労働を禁止した場合、どんな雇用が増えるだろうか。少なくとも正社員ではない。パートやアルバイトなどの臨時労働者が増えるだけだ。
 概して臨時労働者の賃金は派遣労働者よりも低い。正社員の次に高賃金なのは派遣労働者だ。これが無くなれば求職者はもっと劣悪な労働条件を受け入れざるを得なくなる。個人は弱いものだ。
 派遣労働には問題点もある。しかしそれを改善するのではなく禁止するのは悪しき二分法だ。
 もしかしたら労働組合を支持基盤とする民主党は正規雇用者の既得権益を守ろうとしているのではないかとさえ勘繰りたくなる。

ゆ党(2)

2010-10-15 15:56:10 | Weblog
 独裁国かどうかは簡単に識別できる。野党の存在が認められているかどうかだ。野党が認められていない国では言論統制が行われ、権力を批判することは国家に対する反逆罪とされる。
 批判されない権力はどうなるか。権力者のやることは総て正しいということになり暗愚な支配者が統治する馬鹿殿国家になって腐敗する。こんな組織には自浄能力は無いから、敗戦か革命かクーデターでも起こらない限りまともな国となり得ない。
 権力は分散されることが望ましい。立法・行政・司法の三権分立は必要不可欠であり、更に司法は裁判官・検事・弁護士の三竦みになっている。もし司法を検察が牛耳ってしまえばどんな恐ろしいことになるかは、最近の大阪地検の暴挙を見れば火を見るよりも明らかだろう。
 国家を円滑に運営するためには三竦みが一番良いように思える。政治も与野党による対立的構造は、失政の追及に終始する不毛な議論を招き勝ちだ。その中間の「ゆ党」が存在すればそれがキャスティングボートを握って健全な政策が推進され易い。
 世界的にも「ゆ党」制が広がっている。今や二大政党制は先進国ではアメリカだけだ。イギリスでは自由党が「ゆ党」から連立与党になった。ヨーロッパ各国は昔から複数の政党による連立政権だ。
 日本もかつてのような自民党による一党支配や自民・民主による二大政党という前近代的なシステムから脱却して、「ゆ党」を含む複数の政党による議会運営が望ましい。そのためには安易に白黒を決めて対立関係を煽る小選挙区制は早急に廃止するべきだろう。

薬のリスク(2)

2010-10-15 15:34:41 | Weblog
 薬の本質は「毒をもって毒を制す」だと思う。毒物は人体に異常な反応を起こさせる有害物質だ。この毒物を少量摂取することによって薬として使っている。
 血圧を下げる毒物があるとする。健康な人が飲めば毒でしかない。しかし高血圧の人がこの毒物を適量飲めばそれは薬になる。そしてその人は延々とその毒物を服用せざるを得なくなる。なぜなら薬によって血圧を下げられた人の体は、自力で血圧を下げる機能を低下させているからだ。それは重力の無い生活を続けた宇宙飛行士の筋肉が急激に衰えるようなものだ。人間の筋肉や内臓は使わなければ凄まじい勢いで劣化する。同じ薬を長期間服用することは内臓の機能をアウトソーシングすることと同じであり自律することは著しく困難になる。
 近年、鬱病が激増しているそうだが、これも同じメカニズムが働いているように思われる。日本では1999年にSSRIという抗欝剤が承認され、投与時における副作用が比較的少ないこともあり大量に処方されているそうだ。この薬はセロトニンという脳内の神経伝達物質が神経細胞に吸収されることを妨げることによって欝状態を改善するらしい。欧米では簡単に幸福感を得られることからハッピードラッグとも呼ばれているそうだ。
 こんな薬を長期間服用していたら手放せなくなる。薬をやめたら脳がセロトニン不足の状態になってたちまち鬱病が再発する。これはまるで麻薬や覚醒剤で鬱病を治療しようとするのと同じぐらい危険な医療行為ではないだろうか。最悪の対症療法だ。
 急激に悪化する感染症の場合は細菌やウィルスと戦うためにたとえ危険な薬であろうと投与する必要があるが、鬱病は決して激しく進行する急性疾患ではない。抗欝剤の投与はできるだけ少量かつ短期間を原則とすべきだろう。

ハイリターン

2010-10-12 16:17:25 | Weblog
 街頭でマイクを握った男が言っていた。「ユニクロの柳井社長は大金持ちだが我々は時給800円で扱き使われている。こんな格差を許してはならない。」・・・馬鹿か?と思った。
 労働者として、否定してはならない社長が少なくとも二人いる。一人はアルバイトから伸し上がって社長になった吉野家の安部修仁氏でもう一人は一代で国際企業を作った柳井正氏だ。彼らはジャパニーズ・ドリームの体現者だからだ。
 柳井氏は「一勝九敗」という自伝にも書いているように9回も失敗を重ねてようやくユニクロで成功した苦労人だ。失敗を続けている間は借金取りに追われて夜も眠れぬ生活を強いられたことだろう。彼は失敗を糧にして成功した日本では珍しいタイプの成功者だ。
 彼はハイリスク・ハイリターンを選んだ。失敗すれば借金塗れになることを恐れず果敢に挑戦して現在の地位を得た。私のような安全志向の人間はこんな生き方などしたくない。普通に働いて普通に稼ぎたいと思う。
 もし柳井氏のように稼ぎたいのならローリスク・ローリターンの時給800円の生活を今すぐに捨てて自ら起業するべきだろう。ローリスクのままでハイリターンを望むのは厚かまし過ぎる。
 結果の平等を求める人は経過の不平等を見ようとしない。ハイリスクな事業に挑戦することがどれほど恐ろしいことか知らずに結果だけを見て、格差だ、不平等だと言う。ハイリターンを望むならハイリスクに耐えねばならない。練習も碌にせずに誰でもプロ野球選手になれると考えるような馬鹿が増殖しているように思える。

政治主導

2010-10-12 16:01:32 | Weblog
 政治主導が良いのかどうかよく分からない。国民によって選ばれた政治家が、国民の審判を受けない官僚を統率すべきだという民主党の主張には一理あるとは思うが少なからず不安だ。
 国会議員は決してあるジャンルのプロとして国民が選んだ訳ではない。言わば素人の代表だ。素人がプロである官僚の仕事を主導できるとは思えない。政治家がすべきなのは専門馬鹿に陥り勝ちな官僚を、素人の視点からチェックすることであり、素人が主導したら滅茶苦茶になりかねない。
 裁判員制度においても裁判員が主導すべきではない。プロである裁判官が専門馬鹿ぶりを発揮しておかしな判決を出さないようチェックすることが裁判員の仕事だろう。
 政治家という大衆の代表がすべきことは省益に偏り勝ちな官僚の仕事をチェックすることであって、政治的権力を笠に着て好き勝手なことをするべきではない。
 政治家は権力を持つ分、責任も持たねばならない。つまり官僚に対する指揮権があるならそのことの責任を自ら被らねばならない。たとえしぶしぶ承認した事案であろうと承認した以上は政治家の責任だ。
 国民から大きな反発を招いている、中国人船長の釈放問題は、釈放したということではなく、釈放したことの責任を検察に押し付けようとしていることに対する怒りだ。
 これは有害食品を販売したメーカーの社長が、現場の怠慢として自らの責任を認めないようなものだ。民主党政権のやり方はこれと同じで、公約とは全く裏腹に全然政治主導ができていない。主導とは責任を負うことだ。

脳の活性化

2010-10-12 15:48:30 | Weblog
 運動をしなければ筋肉や骨が衰えるように、考えなければ脳の機能は低下する。脳の機能を低下させないために脳トレとして単純計算に励んでいる老人がいるが、それは本当に有効だろうか。計算は確かに知的活動ではあるが、計算能力だけを維持しても知性が維持できるとは到底思えない。せいぜいケチでセコい老人を濫造することになってしまうのではないだろうか。総合的な思考力こそ人智の粋でありそれを維持するために努力すべきだろう。
 私はジョークとパズルによって脳を活性化することを提案したい。ジョークとパズルこそ最も高度な脳の働きを支援するものだと思う。
 なぜジョークとパズルが脳のために良いのか。これらは固定化した思考法を否定して新たなシナプスの結合を促すものだからだ。
 年齢を重ねると思考回路が硬直化する。新しいものごとであろうとも既存の知識の中で位置付けようとする。これが老人の頑固さや偏狭さに繋がる。
 勿論、ジョークとパズルは若い人の脳にも有効だ。若いうちから訳知り顔で「所詮そんなものだ」と語る人の硬化した脳はジョークとパズルによって軟化すべきだろう。
 楽しみながら新たなシナプス結合を作ることは、古いシナプス結合の強化を図るよりも遥かに脳のために有益なことだと思う。

医療と科学

2010-10-08 16:28:02 | Weblog
 医療は科学と呼べるレベルに達していない。俗説やデマ、果てはオカルト的なものまで罷り通っている。
 なぜ医療が科学になり得ないのか。最大の原因は実験ができないことだ。
 科学が科学たり得るのは実験の再現性に基づく。同じ実験をすれば必ず同じ結果が出るので、それが事実であることを誰もが承認できる。
 科学の弱点は複雑なものや一回限りのものには無力であることだ。例えば球体の反発方向なら予測できるが、ラグビーのボールの反発方向は予測不可能だ。この程度の複雑さにさえ科学は耐えることができない。
 人体は複雑そのものであり部分に分解することはできない。機械の部品のように部分を取り替えられるなら色々と実験できようがそれは不可能だ。
 また人体は個々の人が余りにも異なる。80歳と30歳と1歳では全然別のメカニズムが働いており、共通に有効でしかも安全な薬などあり得ない。薬の適量を見極めるためには膨大な人体実験が必要な筈だが、人体実験は倫理的に認められていない。そのため十年一昔にも関わらず旧態依然の方法が続けられている。医師は自分の乏しい経験と勘に基づいて治療するしか無い訳だから医療が進歩しないのは無理も無いことだ。
 患者としては医師を過信しないことが必要だ。特に、毒でもある薬を大量に処方する医師には要注意だ。

法人税減税

2010-10-08 16:14:53 | Weblog
 法人税減税は決して大企業優遇策ではない。巡り巡って労働者支援策となる。
 法人税が減税されれば企業は設備投資や人材投資に使う金を増やせる。設備投資は将来の雇用を生み、人材投資は現在の雇用条件の改善に繋がる。
 法人税減税を非難する人は、搾取する資本家と搾取される労働者という古い図式を今でも信じている時代錯誤の人だろう。もしそんな構造なら法人税減税は資本家の利益の拡大にしかならない。しかし今時そんな時代遅れの企業は殆ど無い。
 法人税が減税されれば海外法人を作る必要性が減る。つまり国内ビジネスが拡大する。国内ビジネスが拡大すれば国内での雇用が増え労働条件も良くなる。 
 古惚けた経済観を持つ人は賃上げが労働者の権利だと考える。しかしその財源をどこに求めるのだろうか。根拠の無い賃上げは設備投資の削減、すなわち企業の成長の芽を摘む。法人税減税は現在と将来の雇用の発展と安定のための最善の策だ。
 国を繁栄させるのは民間企業であって国営事業ではない。無駄だらけの国営事業など少ないほど良い。法人税の減税による減収で国営事業による無駄遣いが減るのならそれはむしろ望ましいことだろう。