俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

泥沼

2012-03-09 14:51:43 | Weblog
 70歳代以上は中福祉・低負担だ。60歳代は中福祉・中負担だ。50歳代以下は中福祉・高負担だ。これを高福祉にしようとすればどうなるか。60歳代以上は負担すべき時期が既に終わっているのでそのシワ寄せは50歳代以下に押し付けられる。つまり高福祉・超高負担になる。団塊の世代などの中負担だった世代は中福祉に甘んじるべきだろう。途中から福祉を手厚くすることは世代間の不平等を拡大することにしかならない。福祉が歪になったのはバラ撒き政策が原因だ。低負担だった世代に中福祉を提供したからその負の遺産が後の世代に繰り越され続けた。
 今後の問題も山積みだ。中福祉・高負担を押し付けられた世代は高福祉を要求するようになるだろう。負担に見合った福祉を受ける権利を主張するのは正当なことだ。しかしそれを認めれば次の世代に中福祉・超高負担を押し付けることになる。福祉が次の世代からの搾取となる。
 政治家は人数が多く投票率も高い高齢者に迎合し易い。しかし高福祉という飴が後の世代にとっては鞭となる。世代間の不公平を拡大する政策はポピュリズムに過ぎない。福祉の安易な拡充は増税の連鎖を生む泥沼政策だ。

三島返還

2012-03-06 15:07:33 | Weblog
 ロシアのプーチン首相が北方領土について「引き分け」を提案した。その狙いが何なのかはよく分からないが引き分けあるいは痛み分けに応じるべきだろう。
 北方領土は第二次大戦直後のどさくさに不法に占拠されたものだ。従って理屈上は四島返還が正しい。しかし正しい理屈は必ずしも現実的ではない。四島返還はロシアにとって領土を失うだけではなく不法占拠を認めるということにもなる。何らかの妥協をしなければ引き分けにはならない。
 戦後70年近く不法占拠が続いているのは原理主義者の責任だろう。これまでに何度もチャンスがあったのに四島同時返還を譲らなかったために進展は見られなかった。
 4対0でリードを許している試合で満塁のチャンスを迎えた時には満塁ホームランを狙うべきではない。確実に1点ずつ得点するべきだ。
 ロシア側が二島返還を考えているのなら日本側は三島返還をベースにして交渉すべきだろう。つまり歯舞・色丹・国後の返還だ。面積や資源で考えればこれが引き分けだ。択捉まで望むことは欲張り過ぎだろう。次のチャンスを待つべきだ。白か黒かではなくグレーを求めることが大切だ。相手の面子を保たねばならない、やっつけるべきではない。ロシアの交渉担当者に国賊の汚名を着せてはならない。それが政治であり外交だろう。

奴隷以下

2012-03-06 14:53:50 | Weblog
 労働者の境遇は奴隷以下だ。奴隷は所有者の財産だ。従って財産価値を損なわないように大切に処遇される。一方、労働者は使い捨ての道具に過ぎない。人形や玩具のように壊れたら捨てられる。家電も最近では使い捨てだ。修理するよりも買い替えたほうが安上がりだ。労働者は使い捨て文化の犠牲者だ。
 労働者は20歳から60歳までの盛りの時期だけ雇用される。最盛期を過ぎた労働者はゴミのように捨てられる。働き盛りであろうとも役に立たなくなった労働者も捨てられる。私の元勤務先にいた女性管理職は蜘蛛膜下出血で入院した。1年ほどの休職扱いのあと解雇された。企業は情容赦無く労働者を使い捨てる。
 企業にとって労働者は道具に過ぎない。雇用している間はある程度保護をするが退職後は赤の他人だ。能力も意欲もある定年退職者が働き場を求めて中国などに渡り、これが技術の流出を招いている。こんな流出は国益に背くが、ゴミとして切り捨てられた人がどう動いても個人の勝手だ。もし責任が問われるなら個人ではなく企業だろう。ゴミとして捨てられたものを再利用することは何ら倫理に背かない。資源をゴミ扱いする企業こそ国益を損ねている。

解熱剤

2012-03-06 14:39:00 | Weblog
 発熱した動物に解熱剤を与える動物実験があることを最近知った。悲惨な結果だ。どの動物でも解熱剤を与えられた集団のほうが死亡率が有意に高かった。対象は哺乳類(兎、豚、犬)と爬虫類(サバクイグアナ)と魚類とのことだ。
 勿論、薬そのものの毒性も考慮せねばならないだろう。症状を訴えることのできない動物は抗癌剤がもたらすような副作用に苦しんで死んだとも考えることはできる。しかし多分そんな劇薬ではなく獣医が通常の治療で使っている穏やかな薬だろう。
 人間の風邪も感冒薬を飲むと却って長引くことが広く知られるようになった。感冒薬には効能として「風邪の諸症状の緩和」と書かれており対症療法に過ぎないことを自ら認めている。しかもあくまで「緩和」であって「治療」とは書かれていない。
 特に解熱剤は百害あって一利無しと思える。発熱は身体の防御反応だ。体温が上がれば免疫機能が活発化し同時に熱に弱い病原菌の活動を阻害する。せっかく身体の自然治癒力が働いている時にそれを解熱剤によって妨害すれば悪化するのは当然だ。
 但し脳は熱に弱いので、昔ながらの氷枕や氷嚢あるいはアイスノンなどによって頭だけを冷やして安静にすることが最善の治療法と思える。昔ながらの療法は意外と理に適っている。

初期対応

2012-03-02 15:18:43 | Weblog
 福島原発事故独立検証委員会による報告書が先月27日に発表された。政府の事故調査委員会による中間報告と概ね齟齬は無いようだが、3月12日の菅首相(当時)の原発視察の経緯はこれまでに報道されたものとは異なっていた。
 菅前首相は枝野官房長官(当時)などの大反対を押し切って視察を決行したそうだ。このことが原発事故拡大の大きな原因となった。
 原子炉内の圧力を逃がすベントが遅れた原因として、首相を被曝させないためという噂が当時からあった。実際のところ首相による視察は迷惑以外の何物でもなかった。対応させられた吉田所長(当時)はさぞかしイライラしたことだろう。刻一刻情勢が変わる非常時に、貴重な情報や陣頭指揮に使うべき時間が奪われてしまったからだ。これで対応は後手に回った。
 これは火事の初期消火の現場を視察するような愚行だ。現場は忙しい。災害時の初期対応は特に重要だ。初期段階での10の努力はその後の100の努力に匹敵する。最も重要な段階で妨害をしたのだから前首相によるパフォーマンスが事故を拡大させたことは間違い無い。

大盤振舞

2012-03-02 15:04:04 | Weblog
 人気稼ぎのために大盤振舞をすれば受益者は感謝せずにそれを権利として主張する。先月28日に老齢加算の廃止についての判決があった。老齢加算とは70歳以上の生活保護費受給者を優遇する制度で1960年に始まり2006年に廃止された。生活保護費が老齢加算されるのだから手厚過ぎてまるで屋上屋を架するような福祉制度だった。
 生活保護を受ければ医療費は無料だし、70代は60代よりも活動量も食事の量も少ないのだから増額する理由は無い。むしろ減額しても良いぐらいだ。
 この制度が導入された1960年は「人生60年」の時代だったから70歳を超える人は少なかった。今の感覚で言えば100歳祝いのようなものだ。そんな制度が平均寿命80歳の現代にまで残っていたことこそ奇妙だ。
 この制度が廃止できなかったのは一旦特権を手にした人や特権を享受しようとする人が権利として主張したからだろう。
 民主党が主張する最低保障年金も危険な制度だ。一旦保障されたらそれは権利となる。そしてそれは無限に拡大解釈され続ける。そのツケを払わされるのは次の世代であり、次の世代のツケはその次の世代へと回される。これでは幾ら増税を繰り返しても財源不足は解消されない。今のことしか考えない人気稼ぎのための大盤振舞はこの上無く危険な政策だ。

企業の負担

2012-03-02 14:49:54 | Weblog
 年金保険料や健康保険料などは決してマスコミが報じているように被雇用者と雇用者が折半している訳ではない。民間企業では被雇用者が全額を負担させられている。形式上では労働者と企業が折半する形になっているが実際には企業負担相当額の賃金が削られている。
 サラリーマン時代にあちこちの部署で収支計画書を作ったがこの時に使う人件費は総て付帯経費込の人件費だ。つまり保険料などの付帯経費は人件費として計算される。企業にとっての人件費とは給与明細上での金額ではなく付帯経費を含む経費のことだ。
 パートタイマーを雇用保険の対象にすることに大半の企業が反対するのは総人件費が増えるからだ。雇用保険を負担させられる企業は給与の削減か雇用者数を抑制することによって総人件費を抑えようとする。最低賃金法があるので名目上の賃金をそれ以下にはできないから、その結果として雇用者数が減るということになる。
 パートタイマーを雇用保険の対象にすることが雇用の減少に繋がるとは何とも皮肉な話だが、増税さえすれば収入が増える殿様商売をやっている官僚はこんな実態を知らないのだろう。企業負担とされている保険料は企業が負担する訳ではない、最終的には労働者が負担させられている。