俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

繋がり

2012-05-18 15:02:09 | Weblog
 繋がっていることは良いことと考えられ勝ちだ。インターネットは繋がっていることに価値があり広く繋がっていないインターネットなど無意味だ。
 しかし繋がり過ぎることは良くない。関西のJRの各線は環状線で繋がっているために普段は便利だが、いざ事故が発生すると全体に不都合を齎す。例えば阪和線は環状線を経由して京都線や大和路線に繋がっているが、そのためにどこかで発生したトラブルが全体に影響を及ぼす。
 ギリシャではユーロを通貨としている。日本はユーロ圏と深い繋がりがある。そのためにギリシャの国内でのトラブルが日本経済を混乱させる。繋がっているが故の不具合だ。
 絆は今では良い意味で使われることが多いが、元々はシガラミのようなネガティブなニュアンスも持っている。連帯保証人という形で繋がると大変な目に会いかねない。無理心中のような繋がり方も困ったものだ。
 繋がり過ぎているから被害が拡大するのならどこかに安全弁を設けるべきだろう。過剰な電流が流れたらヒューズが飛ぶように中断させる仕組みこそ必要だ。家族の繋がりを無条件に認めたために長い間DV(ドメスティック・バイオレンス)が放置された。繋がりの弊害を見逃すべきではない。

防止

2012-05-18 14:50:04 | Weblog
 防止しようとすべきではない。削減・軽減すべきだと思う。0にするためには大変な労力を要する。0にするために努力するよりも軽減で良いのではないかとしばしば思う。
 犯罪を無くすことは不可能だ。そんな不可能な目標を掲げても無意味だ。削減できれば効果があったと見なすべきだろう。
 交通事故も無くならない。しかし事故を減らすことだけを考えるよりも被害を最小限に留めることを考えたほうが効果は大きい。そして更に踏み込んで、車両側と歩行者側の両方を睨んで対策を講じればもっと良かろう。バンパーなどは車の安全だけではなく歩行者の安全まで考慮すべきだろう。
 津波の被害を防ぐために多数の防波堤が作られた。しかしそれらは今回の東日本大震災でブチ壊された。防ぐのではなく被害を軽減するという方向で対策を見直すべきだろう。最善の津波対策が高台への避難だったとは何とも皮肉なことだ。
 誰も雨を止めようとは思わない。雨が降ったら傘をさせば良い。これを自然に対する敗北と考える人はいない。できることをやれば良い。できないことをしようとすれば無理・無駄が生じる。柳のように受け流す姿勢こそ望ましい。

駄々っ児

2012-05-15 15:24:08 | Weblog
 近頃、駄々っ児が増えている。これは子供の話ではない。
 ギリシャでは緊縮財政はイヤ、ユーロ離脱もイヤと駄々をこねて挙句の果てに「国の借金の返済拒否」を公約とする政党の躍進を許した。
 ギリシャだけではない。日本でも原発はイヤ、CO2もイヤ、節電もイヤ、値上げもイヤと駄々をこねる人が目立つ。ではどうするべきなのかと問えば「政府がちゃんと対処すべきだ」と言う。ところが政府は政府で電力会社に対して「原発はダメ、停電もダメ」と言うばかりなので値上げと節電しか選択肢が無くなる。
 こんな状況だから、働くのはイヤ、金が無いのはもっとイヤと言う人が現れる。こんな人はパチンコか宝くじなどのギャンブルで稼ぐしか無かろう。
 昨年の宝くじの売上高は3年振りに1兆円を超えたそうだ。震災復興宝くじが貢献したらしいが、震災に便乗して宝くじを売ろうとする政府の浅ましさに呆れると共に、大義名分を得て一儲けしようとする人々にも嫌悪感を覚える。震災のドサクサに紛れて5億円の賞金を狙う人の精神構造は火事場泥棒のようなものだ。宝くじを買う金があるなら寄付すべきだろう。
 モンスターペアレントも駄々っ児の一種だ。我儘し放題の子供のようなものだ。人類はどんどん阿呆になっているようにさえ思える。

税の見直し

2012-05-15 15:10:58 | Weblog
 消費増税の批判を散々書いているが、ではどうすべきかについても書くべきだろう。
 第1は脱税に対する罰則の強化だ。何人かの自営業者を知っているが彼らの共通点は税務署を舐め切っていることだ。99%バレないしバレたら指摘されたとおりに収めれば良いと考えている。税務署は辛口の税理士のような位置づけだ。農家の納税意識はもっと酷い。納税しないことが前提にさえなっている。江戸時代以前の財政が農民からの年貢を基盤としていたことと比べて雲泥の差だ。農家は不当に優遇されている。
 第2は高額所得者に対する累進課税の強化だ。今の所得税は1,800万円超に対する40%が最高税率だ。これを例えば1億円以上を50%にするだけでかなりの税収が見込める。年収1億円以上の長者にとっては税率の10%増など痛くも痒くもなかろう。
 第3は消費税の欠陥を見直した上での増税だ。しかしこれはあくまでも最後の手段だ。年金額の削減も含めた経費削減に徹底的に取り組んだ上でどうしても必要ならやむを得ない。但し私は消費増税が不可欠だとは思っていないし、現在の欠陥だらけのままでの増税は最悪の選択肢だとさえ考えている。

対口支援

2012-05-15 14:53:42 | Weblog
 中国には大規模災害対策として「対口支援」という仕組みがあり、約86,000人が犠牲になった2008年の四川大震災からの復興に大いに貢献したそうだ。これは予めパートナーを決めておき大規模災害時にはパートナーが中心となって支援・復旧・復興に取り組むという仕組みだ。例えば東京と大阪、山口と鹿児島というようにある程度離れた地域がペアとなり、どちらかに大規模災害が起こった場合にはパートナーが被災地と協力して業務を取り仕切るというシステムだ。各地からバラバラに支援があっても烏合の衆にしかならず、その調整のために却って現場が混乱しかねない。そんな迷惑な支援とは違って統制の取れた組織なら即戦力になる。
 これは一党独裁の中国だから可能な仕組みではない。関西以外の人は余り知らないだろうが、関西広域連合という自主的な集まりがあり、震災2日後の3月13日には分担を決めて組織的に支援に取り組んだ。大阪と和歌山は岩手、兵庫と徳島と鳥取は宮城、京都と滋賀は福島という分担だった。これによって組織的な支援が可能になった。
 国の縦割りのやり方と比べて何と合理的な仕組みだろうか。「知恵を出さない奴は助けない」と放言した馬鹿な大臣がいたが、そんな上からの目線ではなく横の連携によって支援・復旧・復興を図ろうとする関西広域連合は素晴らしい。その設立に大きく貢献した橋下前知事・現市長の偉大さと比べて前・現首相は余りにも無能であり最高権力者としての資質を欠いていると痛感せざるを得ない。

脳の疲労

2012-05-11 15:31:41 | Weblog
 脳も筋肉も使えば発達するし、使わなければ衰える。しかし大きな違いがある。筋肉は使い過ぎれば破損するが、脳を使い過ぎて障害が発生した人はいないだろう。長時間の勉強による疲れ(英語ではtired ofでありtired withではない)を感じた人は少なくなかろうが、フル稼働させて脳を疲労させた経験のある人は少なかろう。
 私は脳の疲労を感じたことが2度ある。どちらも大学生時代だ。
 1つはニーチェの「ツァラトゥストラ」を読んだ時のことだ。それまでぼんやりと思っていた疑問が次々に解明されることに激しく昂奮した。息使いまで荒くなり読書と言うよりもまるで格闘をしているような気分だった。
 もう1つは英会話だった。90分間、全く英語しか使わない授業は初めてだったので一言も聞き逃すまいと神経を張り詰めてかなりの疲労感を覚えた。但し、2回目からは慣れたせいか疲労を感じるほどには脳を使わなくなった。
 結局、一生でたった2回だけしか脳をフル稼働させなかったということだ。仕事では結構アイデアを出したつもりだが脳の疲労を感じるほどに使ったことは無かった。
 多分、多くの人は一生に1度も自分の脳をフル稼働させることが無いままで生涯を終える。勿体ないことだ。

キリギリシャ

2012-05-11 15:18:06 | Weblog
 ギリシャとイタリアほど観光資源に恵まれた国は少ない。ギリシャ・ローマの遺跡とエーゲ海などの美しい海はヨーロッパ最高の観光資源だろう。放っておいても多くの観光客が集まる。しかし恵まれ過ぎることは逆に不幸なことだ。ギリシャでは海運業以外の産業が育たず公務員ばかりが増えた。
 民主主義発祥の地でありながら長く軍事政権が続いたせいか民意のレベルは余り高くない。先日の選挙で第2党に躍進した急進左翼進歩連合の公約は何と「国の借金の返済拒否」だ。借金を踏み倒すことを公約に掲げてそれが支持されるとは信じ難い話だ。これでは民主主義ではない、衆愚政治だ。
 ギリシャ国民はユーロ圏からの離脱を望んでいる訳ではない。ユーロから離れれば新通貨が暴落して壊滅的なインフレになることは目に見えている。そんな中で借金返済拒否が支持されるようならユーロ圏から追放されかねない。
 イソップ寓話の「アリとキリギリス」のような怠け者なら何とか許されよう。しかし借金の踏み倒しという犯罪的行為は許されまい。返済拒否となれば最早議論の余地は無く、経済戦争状態だ。ユーロ圏諸国はギリシャを容赦せず、滅ぼすことさえ厭わないだろう。

消費税の欠陥(2)

2012-05-11 15:00:01 | Weblog
 私はこれまでに消費税の欠陥として4月6日付けの「消費税率」では食品などに対する軽減税率が無いこと、4月17日付けの「消費税の欠陥」では益税事業者の蔓延を指摘した。第3の欠陥として控除の仕組みの不合理性を指摘したい。
 事業者は経営を通じて受け取った税額から経営活動において支払った税額を差し引いた金額を納税する。この仕組みにおいて2つの問題が生じる。その内、医療などの非課税事業者における不合理性については昨年11月25日付けの「消費税増税(2)」で指摘した。日本には「非課税」はあるが「税率0」は無い。税率0なら輸出と同様に支払った消費税の還付を受けることができるが、非課税では自己負担になるので税率が上がれば負担だけが増える。
 もう1つの問題は課税取引へのシフトだ。派遣労働者が増えた原因の1つはこれだ。業務委託という形態を取れば、人件費とは違って課税取引になる。100万円を支払った場合、約47,619円が消費税額となりこれは全額が控除対象になる。そのために同じ100万円を支払うなら控除対象にならない人件費よりも控除の対象になる業務委託費のほうが有利になる。
 消費税が無い時代でも業務委託にはメリットがあった。試験採用が可能なことや雇用調整をし易いことなどだ。それが消費税という税制によって企業にとっては更に有利になった。消費税という税制が派遣労働者という不安定な雇用形態を拡大させたとさえ言えよう。

君が代

2012-05-08 15:15:01 | Weblog
 エルヴィス・プレスリーの代表曲の1つ「ハウンドドッグ」の`You ain't nothing but a hounddog'は「ユー・エイント~」とカタカナ読みで歌うよりも「湯煙夏場の反動」と歌ったほうがスムーズに聞こえる。`What time is it now'を昔の人は「掘った芋いじるな」と覚えたそうだ。hitparadeは「引っ張れ」と聞こえる。
 英国人に日本語で「イノダのコーヒーショップへ行こう」と誘われた時、私にはin orderと聞こえた。on demandのような意味だと思い「イノダ」という固有名詞だとは全く思わなかった。
 日本語は外国人にはどう聞こえるだろうか。退屈な授業中に日本語の歌を英語表記して遊んでいたが「君が代」をこう書いた。
 `Kiss me girl, you're the one. Cheer your knees, yeah cheer your knees. Thousand rain, it seems not.'意訳すれば「キスしておくれ、愛しい人よ。貴女の脚は素晴らしい。困ったことは起こるまい。」となる。
 その続きは未完成のままだ。今後つまらない授業を受けることがあれば続きを考えてみようと思う。

良い子

2012-05-08 15:00:41 | Weblog
 良い子を演じ続けることはできない。良い子とは大人が作った幻想であり実際の子供とは懸け離れたものだ。無邪気な子供などいない。子供とは邪気の塊りだ。性欲・食欲・攻撃欲・所有欲などが制御できない状態だ。子供とは本能のままに動く獣のようなものだ。本能のままの状態を無邪気と定義することは可能だろう。しかしこの状態は通常考えられている無邪気さとは全く異なり残忍性に近い。
 本来、獣に等しい子供の中に稀に良い子がいる。良い子は周囲の期待のとおりに行動する。つまり自我の代わりに「他我」に従う。ところが困ったことに他我は矛盾だらけだ。矛盾した価値体系を無批判に受け入れていればいずれはその矛盾に気付かざるを得ない。
 精神の発達のために反抗期は欠かせない。周囲によって植え付けられた価値体系の矛盾に気付く大切な時期だ。これを経ずに大人になった人は大人になってから価値の崩壊を体験して大混乱に陥る。丁度、子供の頃に麻疹に罹れば軽い病で済むことが多いのに大人になってから発病すれば重篤な病になり易いのと同じようなものだ。それまで信じていた基礎構造が崩壊した場合、小屋なら簡単に修復できるが、巨大ビルなら瓦礫を撤去するだけでも大仕事だ。