俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

学問の危機

2013-08-22 10:37:34 | Weblog
 理系の学問は非常に不自由なものらしい。金が掛かるからだ。文系、特に人文系は金が掛からない。文献さえあれば何とかなる。しかし理系の場合、簡単な実験をするだけでも金と人手が必要だ。
 金をどうやって得るかが理系の学者の悩みのタネではないだろうか。スポンサーが必要だ。しかし公的資金であれ民間資金であれ、それを獲得するためには成果を約束せねばならない。
 ここで困ったことが起こる。本格的に研究を始める前から目標を設定せねばならない。例えば「ダイオキシンの有害性の研究」というテーマを設定してしまえば、実は無害だったとは報告できない。多少データを操作してでも有害という結論をでっち上げることになるだろう。地震予知であれ地球温暖化であれ事情は同じだ。スポンサーに迎合する結論しか発表できない。これの典型的な例が高血圧治療薬ディオバンのデータ改竄事件だろう。
 スポンサーが付いた研究しかできずスポンサーの意向に沿う発表しかできなければ学問の自由は無い。アメリカで理系の学問の衰退が著しいのはこれが原因ではないだろうか。上手くやったら儲かるという研究でなければスポンサーが付かないなら基礎研究は放棄される。だから金融工学とかいった変な研究が進められたのだろう。
 日本でもこんな事情から、素人の私でさえ簡単に見破れるような嘘が大量にバラ撒かれていると思うと、理系の学問は危機に瀕していると言わざるを得ない。

化粧(2)

2013-08-20 09:14:19 | Weblog
 クジャクのメスはオスの尾羽の良し悪しによって選別する。これは「美」という理由だけではなく「健康」という意味も持っているらしい。寄生虫を抱えていれば優れた遺伝子を持っていても立派な尾羽を持つことはできないからだ。こうやってメスは健康なオスを選ぶ。
 人間のオスはメスの外見を重視する。これも単に美だけではなく健康という意味も持っているようだ。豊かなバストとヒップ、くびれたウエスト、赤い唇は健康の証だろう。
 プラトン(ソクラテス)は化粧を誤魔化しの技術として否定した。つまり充分な栄養と適度なスポーツによって磨かれた体は健康で美しい。しかし化粧で飾った体は健康でないのに健康であるように見せる、だからインチキだ、という理屈だ。自分がそうでないものに見せるという意味で「化物」だ。
 昔こんな裁判があった。結婚したが彼女はとんでもない貧乳だったのでこんなパットで誤魔化した結婚は無効だ、というものだった。結局、男が敗訴した。今では包装紙にくるんだままの商品を買う人は殆んどいないだろう。
 しかし最近の誤魔化し技術の向上は凄まじい。特に寄せて上げるブラの凄いこと。贅肉を寄せ集めて谷間を作る。男でさえそのブラを使えば胸に谷間ができるそうだ。
 韓国では美容整形手術が大流行だ。しかし豊胸手術が乳癌のリスクを高めるように他の手術も障害の原因となり得る。贋の美のために健康が損なわれているのなら正に本末転倒だ。この弊害の可能性はカネボウの美白化粧品よりも高いだろう。
 最早、身長と足の長さ以外は幾らでも誤魔化せる時代になった。これでさえハイヒールを使えばある程度は誤魔化せる。ここまで誤魔化しのテクニックが高度化すれば誤魔化されないことは不可能に近い。外見で選別することを諦めるべき時代になったのかも知れない。

海洋性気候

2013-08-20 08:46:21 | Weblog
 仮に地球温暖化が進んだとしても日本は余り影響を受けない。日本は広大な太平洋に浮かぶ島であり、暖まりにくく冷めにくい海水によって保護されているからだ。
 国内で猛暑になるのは内陸と大都市だ。前者は内陸性気候により、後者はヒートアイランド現象による。近畿地方で夏に一番涼しいのは何と本州最南端に位置する潮岬だ。潮岬はヒートアイランド現象の影響が少なくしかも海洋性気候だから、夏は涼しく他の季節は暖かい。
 今年41℃を記録した四万十市は市全体が暑い訳ではない。四万十市は平成17年に中村市と西土佐村が合併して誕生したが、暑いのは内陸に位置する旧西土佐村だ。旧中村市はこんな猛暑ではない。
 日本のような狭い国でさえ内陸部は猛暑になるのだから中国・アメリカ・インドといった大国の内陸部は凄まじい暑さになる。日本では余り報道されていないが、中国の内陸部では40℃以上の猛暑日が1週間以上続くこともしばしばある。中国の内陸部では猛暑に加えて大気汚染や水不足というトリプルトラブルを抱えているので、将来、人が住めない土地になるかも知れない。
 もしCO2が温暖化を招くとしても日本が率先してCO2の削減に取り組む必要は全く無い。日本よりも遥かに大きな被害を蒙る中国・アメリカ・インドが必死になって取り組まざるを得なくなるからだ。この3国が排出するCO2は世界の排出量の45%を占めているのだから、僅か4%の日本が半減するよりもこの3国が5%削減したほうが効果は大きい。もう1つの大国ロシアの排出量は5%のシェアを持つが、この国は日本と同様、温暖化しても余り困らないだろう。
 海に守られた日本はこの3国が命懸けでCO2削減に取り組む姿に対して高見の見物を決め込んでいれば良い。あるいはCO2削減技術を売って大儲けをしても何ら非難されることは無かろう。

忠と孝

2013-08-18 09:00:22 | Weblog
 忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず、と言う。忠と孝はしばしば対立する。若干乱暴だが、ここでは忠・公・義理のグループと、孝・私・人情のグループの対立として考える。
 当初、この問題は日米の意識の違いとして捕えられることが多かった。アメリカ人の野球選手が、妻が出産する、あるいは息子が病気だ、といった理由でシーズン途中で帰国してしまった。その一方で日本人の俳優は「舞台に穴を開ける訳にはいかない」と言って親の死に目にも会わなかった。
 一時期、日本でも残業よりもデートを優先する若者のことが話題になったが、雇用環境の悪化に伴いデート派は激減しているようだ。
 結局、仕事に対する位置付けの違いだろう。人は大切と思うことを優先するからだ。では「大切」とは何か、自分が重要な役割を担っているかどうかだ。
 もし彼が超能力者で病気を治せるハンドパワーでも持っているのなら病気の肉親の元へ駆け付けるべきだろう。そうでなければ病室でウロウロするだけで何の役にも立たない。球場の応援団のようなものであり自己満足に過ぎない。
 家庭であれ職場であれ、その人が重要性を持つ場所が優先される。家庭で居場所の無い夫なら家庭を顧みないだろうし、二軍の補欠なら職場放棄も問題にされない。
 ブルージェイズの川崎宗則選手は16日から最長3日間の「産休」が認められたそうだ。産休の位置付けは難しい。本人が出産するのなら休むのは当り前だが夫の産休をどう評価するかは意見が分かれるだろう。夫の立会いには何の物理的効果も無いからだ。
 危篤の人がいつ亡くなるかは分からないが、出産ならある程度時期を特定できる。立ち会わなかったことで不仲になる恐れがあるのだから、夫婦円満のために企業は大目に見るべきだろう。しかしこれは妻の機嫌を損なわないためであってそれ以上の意味は無い。子供のための授業参観と同じような儀式だ。

捏造

2013-08-18 08:28:34 | Weblog
 捏造が世に蔓延している。似非科学者は実験データを捏造し、中国・韓国は歴史を捏造し、薬品メーカーは効果を捏造し、検察は捜査資料を捏造する。私が書く雑多な記事の多くは捏造に対する怒りに基く。
 なぜ捏造が横行するのだろうか。もしかしたら人は事実よりも虚構を好むのかも知れない。現実は不快で虚構は心地良い。現実では努力の大半が報われず理不尽な不幸は跡を絶たない。その一方で虚構は予定調和する世界だ。期待は裏切られない。
 「不快な事実など見たくない」これが人々の本音だ。だから共同幻想をでっち上げる。不幸な人が夢想家になり易いように、不幸な民族は歴史を改竄する。彼らに怒るべきではない。改竄せざるを得ないほど惨めな歴史しか持たないのだから根拠無きプライドを守るためには虚構に頼らざるを得ないのだ。子供に見栄を張る連中を哀れむべきだ。
 猛暑もゲリラ豪雨も、CO2増加による地球温暖化が原因と決め付ける。分からないままでいるよりは分かったつもりでいるほうが快適だからだ。凶悪犯罪が迷宮入りするよりは無関係の人に罪を着せようとする。これはスケープゴートに過ぎない。嘘に満足する人がいかに多いことか!
 事実を直視するためには勇気と誠実さが必要だ。勇気も誠実さも持ち合わせていない人にとって現実は穢らわしく甘い夢こそ現実以上に価値あるものなのだ。

テレビ税

2013-08-16 09:04:56 | Weblog
 14日のNHKの夜9時のニュースは酷かった。1時間枠の半分ほどが、非常にくだらない・およそ見るに耐えない、多分、以前にボツになったと思える企画の虫干しだった。スポーツのニュースだけがまともだった。ニュースのネタが無かった訳ではないのにこんなことになったのは社員の多くが夏季休暇で休んでいるからだろう。
 私は労働者の休暇の権利を否定しようとは思わない。しかしノブレス・オブリージュ(高貴な者の義務)ということを考えればNHKの社員の無責任さに呆れる。異様な高給を貰いながら彼らはそれに見合う義務を果たしていない。
 民放ならここまで酷い番組を作らない。どの番組にもスポンサーが付いているから露骨な手抜きをすればスポンサーに怒られる。民放ではスポンサーが個々の番組をチェックしている。
 スポンサーが直接介入することは余り無かろう。多くは広告代理店や営業担当者を通じて要求される。この仲介者の役割が重要だ。彼らは制作者とスポンサーの両者の立場を理解した上で落とし所を探る。
 NHKは受信料収入によって経営をしている。しかしこの受信料は無条件に徴収され実質的にテレビ税だ。国民の負担に基くのだからもっと国民によるチェックを受けるべきではないだろうか。
 スポンサーは諸刃の剣だ。スポンサーのせいで番組が歪められることもあるがスポンサーの目が光っているから露骨な手抜きは許されない。NHKはテレビ税を徴収しているのだから我々は納税者としての権利を行使すべきだろう。NHKによる独断専行を防止するために番組ごとのモニター制が必要なのではないだろうか。職員の給与をほんの少し削減するだけでモニターへの謝礼ぐらいは簡単に捻出できるだろう。

正義の味方

2013-08-16 08:37:48 | Weblog
 日本禁煙学会が宮崎駿監督のアニメ「風立ちぬ」にクレームを付けたことは知っていたがその要望書の内容には呆れ果てた。「この作品は(タバコ規制枠組み)条約違反ということになります」とのことだ。
 これだから自称正義の味方は迷惑だ。自分の側に正義があると信じ込んでいるから気に食わないものは総て悪として否定する。
 こんな馬鹿げた理屈が通るなら、大半の戦争映画は憲法違反であり、漫画の「クロサギ」や「デスノート」などは犯罪幇助ということになる。感情的な反発を正当化するために法律や条約を拡大解釈しているだけだ。煙草を禁止する法律が無いから国際条約まで持ち出して脅そうとする。
 14日付けの「エスカレータ」と同じ排除の論理が感じられる。エスカレータの場合、止まる人は弱者かつ多数者即ち正義であるから、歩く人を強者かつ少数者即ち悪と決め付けるが、日本禁煙学会にとっては煙草=悪であり、煙草を好意的あるいは中立的に扱うことは悪の幇助となるのだろう。こんな幼稚な善悪二元論を使う人の知性を疑う。
 私は種を守るために10年ぐらいは鰻食を自粛すべきだとは考えているが「禁止しろ」とは絶対に言わない。信念の押し付けは途轍もなく傲慢な姿勢の表れであり、各自がそれぞれ判断すべきことだろう。
 昔から「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」と言うがこんな連中にかかったら「夏の袈裟はクールビズに背くから禁止しろ」ということにでもなるのだろうか。こういうやり方は「法の悪用」だ。不快なら不快と言えば良いのであって妙な理論武装は品性の下劣さを露呈するだけだ。

免疫型

2013-08-14 09:42:57 | Weblog
 当初の人類は全員がO型だったようだ。今でもグァテマラでは95%、ボリビアでは93%がO型だそうだ。このことからインディオはO型しかいない民族だったと推定できる。
 インディオの先祖は、10,000年以上前の氷河期に海水面が下がって、ユーラシア・アメリカ間がアリューシャン列島で地続きになった時に移住したモンゴロイドだと考えられている。つまりその頃は血液型(=免疫型)は一種類しか無かったのだろう。
 免疫とは自己と他者を識別するシステムだ。自分以外の物質が体内に入ると有害物として攻撃する。ところが擬態する病原体が現れた。O型抗原と類似した構造を持っていれば異物と認知できない。さてどうすれば良いか。自分が変われば良い。O型類似物質を異物として排除する免疫構造になればO型抗原に擬態した病原菌を排除できる。こうしてA型とB型がアジアで誕生したらしい。
 同じ免疫型(=血液型)であれば特定の感染症によって絶滅する恐れがある。異なった免疫型を持つことによって人類は多様性を獲得した。
 ここで疑問が生じる。O型から進化した筈のA型やB型がなぜO型よりも感染症に弱いのだろうか?
 実は最強の免疫型の筈のO型にも弱点がある。O型はペストとコレラに弱い。ペスト菌とコレラ菌はO型抗原に擬態しているからだ。ペストやコレラが大流行すれば絶滅する恐れがある。そこで他の感染症には弱いけれども、比較的ペストに強いA型とコレラに強いB型が生まれたのではないだろうか。A型はペスト対策でありB型はコレラ対策という訳だ。
 ある免疫型が総ての感染症に強ければ申し分無い。しかし病原体は頻繁に変異を繰り返すのでそれは不可能だ。異なった免疫型を揃えることによってどれかが生き残れるように仕組まれているのだろう。完全なものが不可能な場合、多様化によって最悪を回避するという戦略は自然が編み出した素晴らしい叡智と言えるだろう。

エスカレータ

2013-08-14 09:07:13 | Weblog
 JR東日本ではこの夏からエスカレータ上を歩かないよう呼び掛け始めたそうだ。全く賛同できない。これまでどおりの「片側空け」が良いと思う。駅では急ぐ人がいる。急ぐ人のために便宜を図ることは鉄道会社として当然の義務だろう。もし止まる人の権利だけを認めるのなら、歩行する権利を求めて歩行専用のエスカレータの設置を要求したい。あるいは全く逆に歩けない構造の椅子式「イスカレータ」の新設でも構わない。
 私が「歩行禁止」に憤りを感じるのは排除の論理が潜んでいるからだ。歩きたくない多数者が歩きたい少数者を悪とする、これは煙草追放と同じファッショ的発想だ。共存つまり異なる他者の権利の容認ではなく排除を狙うこと、これは多数者の我儘の放任だ。
 エスカレータ上での事故はJR東日本だけで年間250件起こっていると言う。だから「急ぐなら階段を走れ」と言うのなら無茶苦茶な理屈だ。実は階段での事故はエスカレータより遥かに多い。4月には当のJR東日本の藤沢駅の階段で転んだ男性が下にいた女性に衝突して死亡させたとして書類送検されている。
 奇妙な話だが階段での事故は自己責任で、エスカレータでの事故なら管理責任が問われる。こんな変なルールになっているから管理責任から逃れようとする。ずるい話だ。
 私は階段が嫌いなので極力エスカレータかエレベータを使う。多分エスカレータでの移動距離のほうが階段使用距離よりもずっと長いと思うが、エスカレータの事故は未だ見たことがない。逆に階段での事故なら何度でも目撃した。友人も兄弟も階段で転げ落ちた。
 エスカレータの速度は歩行速度とほぼ等しい。だからエスカレータ上を歩けば移送人数は2倍、移動時間は1/2になる。移送効率を考えるなら歩くことを推奨しても良い筈だ。それを責任逃れのために止まらせるのは本末転倒だ。このあたりがお役所的発想だ。
 エスカレータは全然危なくない。そのことは年間250件しか事故が無いことが証明している。その250件も多分、大半が不適切な使用によるものだろう。安全なエスカレータの使用を制限して危険な階段を使用させようとする姿勢は責任逃れ以外の何物でもない。

緊急地震速報

2013-08-12 09:13:12 | Weblog
 8日に外出から帰ってテレビを点けたらいきなり緊急地震速報が報じられた。奈良を震源とする地震で津波の恐れもあるとのことだった。変だな、と思った。海の無い奈良が震源なら津波の可能性は極めて低い筈だ。津波は水中での断層が原因になる。奈良を震源とする地震で津波が起こるためには隣の県を横切る巨大な断層が必要だ。それは殆んどあり得ないことだ。たまたまチャンネルが民放だったのでNHKに切り替えて唖然とした。高校野球の実況中継をやっていたからだ。
 もし本当に奈良で大地震が起こったなら甲子園での野球は不可能だ。誤報だと確信した。10分程経ってからようやく誤報との告知があったが遅過ぎる。もっと早く気付いて訂正できた筈だ。
 夕刻に行われた気象庁による記者会見では「和歌山県北部の小さな地震と三重県南東沖にある地震計のトラブルが同時に起こったために広範囲の揺れと勘違いした」とのことだったが全く納得できない。和歌山県北部と三重県南東沖の間には沢山の地震計があり、これらが反応しなかったということから大地震の可能性は即刻否定できた筈だ。これでは北海道と九州で同時に発生したボヤで「日本全土が炎上」と騒ぐようなものだ。津波予報に関しては何も釈明しなかった。
 勝手な想像だが、担当者が不在だったことによる超低レベルの単純ミスだったのではないだろうか。留守番をしていた素人(もしかしたら実務に疎い課長クラスの人)が慌ててトンチンカンな発表をしたのではないかと思う。
 担当者の責任を問いたい訳ではない。隠蔽体質を問題にしたいだけだ。もしこんな初歩的なミスを犯すような担当者しかいないのならそのことのほうが大問題だ。