電脳くおりあ

Anyone can say anything about anything...by Tim Berners-Lee

イチローと日本のプロ野球

2004-10-03 12:29:22 | スポーツ・ゲーム
 その昔、昭和の中頃までは、日本の職業野球は、はるかに程度の低いスポーツに見られていた。多分そのころ一番華やかなスポーツは、東京6大学野球だった。野球を生活の糧にするということは、卑しむべき行為と見なされていたのだ。それは、決して野球だけではない、外のスポーツもそうだったし、歌手や俳優たちもそうであった。「人びとを楽しませる芸人」は蔑まされていたのだ。しかし、野球でいえば沢村や三原、川上など幾人も選手たちが、日本の野球を一流のものにしていった。私たち団塊の世代にとって、長島茂雄選手は忘れられない存在であり、誰より偉大なスターだった。

 昨日、マリナーズのイチロー選手がヒットを3本打ち、1920年にジョージ・シスラーがマークしたメジャー年間最多257安打を84年ぶりに抜き去り、259安打の大リーグ新記録を達成した。試合前に、孫のリック・シスラーさん(41)は「記録は破られるためにある。父のころとは時代が違うし、彼のように才能ある選手に破ってもらうのはうれしいこと」と話したという。試合後に、日本の首相は「もうすごいの一語に尽きるね」と言った。おそらく、昨日から今日のブログは、イチローの記録について、このブログも含めていろいろな書き込みで満ちていると思われる。そのこと自体をとやかく言う気はない。私も感動したひとりだから。

 「鈴木一朗」という、日本人としては最もありふれて部類に属する名前を持つイチロー選手が、日本のプロ野球から飛び出してから、4年になる。日本のスターがアメリカへ行ってしまった結果、日本のプロ野球はファンに見放されてつぶれそうだし、イチローがそこに属し、数々の日本の記録を作ったオリックスは近鉄と合併してしまうことになった。私は、大記録達成の試合の前日に、マリナーズの試合を観戦しながら、シアトル市内に住む大学職員クリスティ・バーンズさん(35)が話したという朝日新聞の記事に考えさせられた。

この日の試合で印象に残ったのは、イチローの打順が来るまで客席で雑誌を読んで時間をつぶす日本人たち。テレビカメラが大写しにした。「はるばる日本から駆けつけたファンのお目当てはイチローひとり。試合そのものには関心がないようです」というアナウンサーの解説には、笑ってしまったという。
マリナーズ・ファンのバーンズさんだが、日本球界の最高レベルの選手が続々と大リーグ入りすることには戸惑いも感じている。「野茂、イチロー、ふたりの松井。一流選手ばかり米国に輸出して日本のファンは黙っているのかしら」


 前半はまるで自分が批判されているようだし、後半は現在の日本のプロ野球の混乱した状況の根源を指摘されているような気がしてくる。恥ずかしい話だが、イチローが新記録を達成したゲームが、対レンジャーズ戦で、結果は8-3でマリナーズが制したということを、この記事を読むまで忘れていた。イチローの記録だけを見ていた。そういう意味では、バーンズさんに笑われているのは、私だ。また、野球やゴルフで世界の頂点に立つには、アメリカへ行かなければダメだという事態は、問題だと思う。日本で頑張れば、それが世界に通用するようになると言うようなスポーツはどれくらいあるのだろうか。

01年の数字とはまったく違うものと感じる。日本で94年に残した210安打(日本プロ野球記録)もよく思い出すが、あの時は怖さを知らなかった。今年は色々な怖さを知り、乗り越え、自分の技術を確立した上で残した数字だから、僕にとって重みが違います。


 これは、イチローが大記録を達成した試合の後の記者会見で日本の記者団に語った言葉だ。わざわざ大リーグに行って活躍しなくても、日本のプル野球で活躍し、そこで頑張ればそれが世界に通用するということだよと言えるような日は、いつか来るのだろうか。イチローの言葉は、正しいだろう。そして、それを言うことができる実績を残したのだ。でも、私には、少し悲しかった。

コメント (2)
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