ちょっと遅くなりましたが「告白」を観てきました。
今回の作品は「嫌われ松子の一生」でお気に入りになった
中島哲也監督の映像で、原作は09年本屋大賞受賞作、
そして主人公は歌手としても大好きな(笑)
松たか子さんという事で期待度200%でした。
映像が中島監督でしたから、かなり監督自身の解釈の映像が
盛り込まれるかと思い、先に原作を読んでしまいました。
結果から言うとこれは今回に関してはペケでした。
先に映画を観てください。
これは原作のパワーが強烈で映画を観ていて
ネタを知ってしまっているのは面白さ半減です。
映画を観てから細かい心理描写を原作で
確認する方が正解だと思います。
と言っても、これだけ売れた本ですから、
もう読んでしまった方々は松たか子と木村佳乃の
凄まじい演技をお楽しみ下さい。
特に淡々と語り続ける、感情を押し殺した松さんの演技と、
その口調とは対照的に最後に見せる凄まじい表情は、
いつまでも瞼に焼き付いて忘れられません。
ストーリーは、女教師森口(松たか子)の愛娘を教え子のA・Bが殺め、
その復讐をA・Bにするというだけの話ですが、
そこには今、日本で実際に起こっている事件が内包する問題や、
司法の現実を改めて問われているような作品になっています。
例えば現在の日本では、実際に起こる事件と法律の間に
酷いズレが出来ていて、未成年、特に若年層の殺人に対しては
その処罰の方法さえ答えを出しかねていたり、
加害者ばかりが法に守られ、被害者はいつまでも辛い思いを
しなければならなかったりします。
精神異常者の事件も然りですね。
そんな現実の司法制度でははらせぬ恨みをこの主人公は、
極力自分の手を煩わせないでいて、
より残酷な方法で憎しみをはらして行きます。
そこにはもう安っぽい正義や倫理観はありません。
「毒を以て毒を制する」の精神ですね。
不謹慎ですがあまりの凄まじさに爽快感さえ感じます。
しかしそれは青空の下の爽快感ではありません。
真っ黒な曇天の空の下の爽快感です。
これは教師と生徒の話というより、娘を殺された母の母性と、
A・Bという子供を産み出した母性の、三つの母性の闘いかと、
ふと昔読んだ、藤原新也の「乳の海」を思い出してしまいました。
ジャンルはミステリーかもしれませんがここで
描かれている話は、今、日本の中にある多くの問題を孕んでいて、
その答えは観た(読んだ)人それぞれに突きつけられています。
すっごく面白いですが、ちょっと重いですね~(苦笑)