今回のイスラエルとハマスの紛争は、原油価格の高騰によるインフレ圧力の懸念を増幅させる火薬庫となりうる。それが物価高騰と景気低迷が同時に起こるスタグフレーションを現実化させうるからだ。

2023-10-16 12:32:49 | 米国は、「世界の憲兵」をやめろ!
 

3つの戦争に直面する世界経済…

スタグフレーション現実化か

登録:2023-10-16 08:22 修正:2023-10-16 09:14
 
Weconomy|パク・サンヒョンの経済おしゃべり
 
 
パレスチナのガザ地区北部地域の住民たちが13日、ロバの引く車に乗って南へと避難している=ガザシティ/AP・聯合ニュース

 戦争の恐怖がまたしても世界経済にとっての問題として頭をもたげている。昨年2月に始まったロシアとウクライナの戦争もまだ終わっていない中、イスラエルとハマスの武力紛争は、ただでさえ脆弱な世界経済に暗い影を落としている。

 中東の地政学的リスクは常に世界経済にとって火薬庫だった。中東地域の紛争が原油価格不安を刺激してきたからだ。さらにサウジアラビアが主導するOPECプラスの減産政策により、原油価格が1バレル当たり90ドル水準で動いている時期に起きた今回のイスラエルとハマスの紛争は、原油価格の高騰によるインフレ圧力の懸念を増幅させる火薬庫となりうる。それが物価高騰と景気低迷が同時に起こるスタグフレーションを現実化させうるからだ。

 しかし懸念とは異なり、グローバル株式市場は上昇ラリーを続けており、原油価格も下落するという、意外な現象が演出されている。短期的な状況だけで中東の事態を評価するのは早計だと思われるが、金融市場がかつてとは異なる反応を示している背景には注目する必要がある。

 第1に、戦争拡大の可能性が低いこと。イスラエルが地上戦を準備するなど、戦争は長期化する兆しを示しているが、金融市場が懸念する主な原油生産国とイスラエルとの全面戦争のシナリオが現実化する可能性は低いように思える。これは、以前の中東戦争の例とは異なり、中東地域内の原油生産とホルムズ海峡を通じた原油輸送に対する大きな打撃は当面ないことを示唆する。今回の事態で主な産油国の集まりであるOPECプラスのさらなる減産がむしろ難しくなったことも、原油価格下落の要因だ。

 第2に、安全資産選好と景気後退が懸念されることによる金利の下落だ。今年9月の米国の連邦公開市場委員会(FOMC)以降、米国債の金利を中心として主要国の国債金利が続騰していることで、金融市場は2013年の緊縮発作(テーパータントラム)と似たような梗塞現象に直面した。韓国も株価、債券価格、ウォンの価値が同時に下落するトリプル安現象に苦しめられた。このように、金利の続騰にお手上げ状態だったグローバル金融市場において、中東戦争リスクは国債金利上昇にブレーキをかける役割を果たした。グローバル資金の安全資産選好現象と景気後退に対する懸念の重なりによって国債金利が急落したことが、株式市場をはじめとするグローバル金融市場にとっては恵みの雨となった。

 しかし、戦争リスクを過小評価してはならない。世界で事実上3つの戦争が展開されることになったからだ。ロシアとウクライナの戦争、イスラエルとハマスの戦争、そして技術覇権をめぐる米中覇権戦争によって、世界経済は物理的ショックと経済的ショックに同時にさらされている。2024年の大統領選挙を控えて増幅している米国内の政治的対立も、もう一つのリスク要因だ。

 国際通貨基金(IMF)は来年の世界の成長率を2.9%と見通しを示した。米国を含めた主要7カ国(G7)の来年の国内総生産(GDP)成長見通しも、大半が0~1%台だ。非常に異例の低成長見通しだ。中東リスクが早期に沈静化すれば幸いだが、既存の戦争(ロシアとウクライナ、米中技術覇権戦争)に加え、中東戦争まで長期化または拡大すれば、世界経済はゼロ成長にも直面しうる。世界経済が1980年代初めのようなスタグフレーションに陥る可能性もあることを警戒しなければならない。

パク・サンヒョン|ハイ投資証券専門委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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