愛し合って一緒になったにも関わらず、憎しみあう夫婦がいる。だったら一緒にならなければいいのにと思うが、物事はそう単純ではない。今ある問題を解決しようとせずに、離婚して新しい人と結婚してもまた同じ問題が生じるだけである。精神的問題を抱えた同じ人間が同じ行動をするからだ。
相手に依存度の強い人間は、幼児的であり傷つきやすい。傷つくから怒りっぽくなる。このような態度を依存的攻撃性という。相手に依存しているから、自分の今の感情が相手の態度に影響されてしまう。相手はいつも自分の思ったとおりの行動を取らないので、それについて不満が出てくる。不満が出てくるからつい怒ってしまう。この問題は、相手に心理的に依存していることにある。子供が母親に依存している状況が成人になっても続いていると考えればいい。
「寒い冬に、とげがたくさん生えているヤマアラシのカップルが岩陰で横たわっていました。あんまり寒いので、二人で抱き合って温まろうとしました。しかし、相手のとげが刺さって固く抱き合うことができません。そうかといって離れると寒くて仕方がありません。そこで、ヤマアラシは、とげに刺さらずに、かつ寒くない程度に温まる距離を見つけるようにがんばりました。そのようにして二人はやっとのことで適度な距離を見つけることができました」
まず、ヤマアラシは相手と近づくことで相手との一体感を求める。
これは母子の関係に回帰することであり、幼児性の現れである。なぜなら、母子の関係はべったりしていて距離はなく、心地いい状態だからである。
しかし、自分は既に赤ん坊ではなく、また相手も母親でもないから簡単に距離を近づくと、相手のとげによって自己愛が傷つけられることになる。また、人とくっついていると「自己の自立」の欲求も妨げられることになる。
このように、相反する二つの欲求を求めてしまうことによって生じる矛盾を「ヤマアラシのジレンマ」という。
大人になるということは、このような距離感を保って人と付き合えるようになることである。依存度の強い人間は、べたーっとくっつきたい欲求を優先してしまい、傷つき怒りっぽくなる。そして、いつも不満ばかり言っている。
まずは自分がリラックスすることである。それから、相手を責め立てるとをやめて、リラックスさせることである。リラックスすることによって、とげが抜け落ちていく。そのようにしてから二人でゆっくり抱き合えばよい。
どうすればリラックスするかってて?それは精神的に自立して大人になること。そして相手を包み込むだけの包容力を身につけることである。
相手から愛情を貰うことではなく、愛情を与えること。それには精神的自立が必要である。