図書館から借りてきた「アルゼンチンババア」を読む。
よしもとばななの小説を読むのは10年ぶりくらいだが、相変わらず、一時間弱で読み終わってしまう少女漫画のような小説である。そして、相変わらず、せつなさと共にやさしく温かな気持ちにさせてくれる。
外見上は汚くヘンテコで普通の人たちから敬遠されるような人々の中にある純粋できれいなものを取り出し浮かび上がらせる。この「純粋できれいなもの」を愛とよんでもいいのかもしれない。
愛情が深ければ深いほど、それを失ったときの衝撃は大きい。個人的なことだが、それを死という形で失うことになったとしたら、はたして耐えられるのだろうかと不安になることがある。しかし、吉本ばななの小説を読むと、もしかしていけるかもしれないなぁと思ってしまう。愛する人からのぬくもりや温かさは、記憶としてまた切り離せない感覚として、永遠に残るからである。
最後に、アルゼンチンババアの一節を引用する。
人は死ぬ瞬間まで生きている、決して心の中で葬ってはいけない。
それも私がアルゼンチンババアから教わったことだ。
アルゼンチンババアの本名は「ユリ」だった。
だから私は花屋の店頭でユリを見ると、いつでも涙ぐんでしまう。
そしてその後必ずちょっとだけ笑顔になる。