最近、文学にネイチャーライティングという分野があることを知った。自然環境をめぐるノンフィクション文学と定義されるとのことだ。詳しいことはよくわからないが、単に自然を描写するだけでないのはたしかだ。
今朝、薄闇の中で怪しく輝く満月がとても素晴らしかった。あの満月のすごさを文章で表現するのは難しい。その意味で、文章は満月の美しさを客観的に伝える場合には、写真や映像より劣る表現方法といえる。文章は満月の素晴らしさを客観的に描写するよりも、むしろその満月を見たことによって、人間の心がどのように影響されたかといった心理描写や関係性を表現するのに適している。
いつも山に登ると、この気持ちのいいすがすがしい体験をどのように表現したらいいのかなぁと考えてしまう。それには、自然が私に与えてくれた何かを正確に感じ取らなければならないだろう。その「何か」を掴み取ることが、表現する以前にやらなければならないことだと思っている。落ち着いた気持ちで味わうように物事や心を観察しなければ、すぐに消えてしまう「何か」を掴み取ることはできない。
落ちそうで落ちない薄紅の葉が、まるで花のように渓谷の庭園を囲っている。憂鬱な冬の到来を知らせるように、その葉たちが秋の深まりを感じさせる。
美しさにもかかわらず、深く落ち込んでいく鬱々とした今の気分も、辺りが真っ白な雪になればリセットされてしまうから不思議である。
山頂近くの樹木の葉は、完全に落ちていた。中年のはげた頭みたいになっている。ハゲだって見方によれば、なかなか美しいものである。
雪がちらほら降っているようだ。山はいつでも季節を先取りしている。もういつの間にか知らないうちに冬になっている。
昔の古い鷹ノ巣避難小屋で幽霊をみたという話を聞いた。しかし、このきれいな今の避難小屋に幽霊は出そうにない。
いつかここに泊まろうと思っている。