もうすぐクリスマス。
広州のホテルやショッピングモールでは、大きなクリスマスツリーを飾ってあったり、店の売り子が赤いサンタ帽を被っていたりする。こちらもクリスマス気分だ。街をぶらぶらしていると、ちょっとうきうきする。
「子供の頃、クリスマスの時に親にプレゼントをしてもらったことがある?」
と、地元の若い人に訊いてまわってみたのだけど、もらったことがあるという人は一人もいなかった。プレゼントをおねだりしようと考えたこともなかったそうだ。小さな子供のいる二十代後半くらいの若い親たちに子供にクリスマスプレゼントをあげるのかと訊いてみたけど、みんなそんな予定はないと言う。小さなクリスマスツリーを家のなかに飾ったこともないのだとか。
「そりゃ、大陸の中国人はそんなことをしないよ。だって、クリスマスなんてものがあるって知ってから、まだ何十年も経っていないんだよ。親が子供の靴下にプレゼントを入れるなんてことはないよね。彼らはクリスマスの由来も知らないし。もっとも、クリスマスは西洋のお祭りだから、中国人が祝う必要もないけどね」
香港人のおじさんはこんなふうに解説してくれた。
ちなみに、香港はやはり植民地の歴史があるので、一般の家庭でもお祝いをするのだそうだ。おじさんも子供が幼かった頃は「サンタさんにお前の希望を伝えてあげるから欲しい物を言いなさい」と子供が欲しがっているものを聞き出し、イブの夜中にこっそり枕元へ置いたのだとか。日本人の親と同じことをしている。香港はクリスマスが祝日になっているけど、キリスト教の信者以外は日本と同じようにただのお祭りとして楽しんでいるそうだ。
「香港は、中国伝統の祭りも、仏教の祭りも、西洋の祭りもみんな祝うよ。だから、カレンダーは祝日だらけさ。いっぱい休めるよ」
おじさんはユーモラスにほほえんだ。
なんかずるいなあ。
(2010年12月21日発表)
この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第65話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/