風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

牛のように働きますっ!(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第101話)

2012年04月20日 20時04分12秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』
 
「田舎から来ました牛のように働きます」
 先日、日本語のできる中国人が送ってきた履歴書を読んでいたら、こんな表現を見つけた。もちろん、日本語を話せることが採用の条件なので、履歴書は日本語で書いてもらっている。
「馬車馬のように働く」という表現は知っているけど、田舎からきた牛のように働くというのは初めて知った。たぶん、これは中国固有の表現で、それを直訳したものなのだろう。
 それはともかく、なんだか迫力のある表現だ。一所懸命がんばりますという気合が伝わってくる。
 中国の農業はまだまだ機械化されていないから、農村では水牛が田んぼを耕していたりする。僕がぱっと連想したのは、いつか雲南省の山奥で見た棚田を耕す水牛の姿だった。ほとんど腹まで泥に浸かりながら、ゆっくりゆっくり鋤を牽いていた。相当な重労働だから、水牛も農夫もたいへんだ。たぶん、履歴書を送ってきた彼もそんな水牛の姿を念頭において書いたのだと思う。
 中国で暮らしていると日本ではみかけない表現によくでくわす。それがけっこう僕の脳味噌を刺激してくれたりする。これも外国暮らしの醍醐味の一つだ。
 


(2011年4月24日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第101話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/

ツイッター