この頃、僕は毎朝、
「今日一日を味わいつくすようにして生きよう」
と自分に言い聞かせている。
今僕が暮している広東省広州はコンクリートジャングルの街だけど、それでも街路樹や公園の木々が目にしみる。亜熱帯の樹木が心を慰めてくれる。通勤車のなかからじっと緑を眺めていると心が休まる。
僕はこの世は存在の流刑地だと思っている。人間は大切なことを裏切らずには生きていかれない。僕は罪と煩悩にまみれたちっぽけな存在だ。それでもというか、だからこそ、生きいきと生きたい。心の底からそう願う。
人生は一度しかない。
漫然と過ごすのではなく、できる限りのことはやってみたい。どこまで行けるかわからないけど、行けるところまで行ってみたい。失敗したってかまわないじゃないか。またやり直せばいいだけのことだから。
ちょっとした出来事も、誰かとのなにげない会話も、喜びも悲しみも、出会いも別れも、つらいこともさみしいことも、みずみずしいぶどうの実を一粒ひとつぶ味わうようにして、生きいきと生きていたい。
(2012年9月23日発表)
この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第204話として投稿しました。 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/