上海の地下鉄二号線には物乞いが現れる。虹橋空港から南京東路といった目抜き通りを抜けて浦東空港までを結ぶ路線だ。東京でいえば、羽田空港から銀座を通る路線といったイメージになるだろうか。
虹橋空港で二号線に乗ると、一番端の車両に二人組か三人組の物乞いがスタンバイしていて、電車が走り出すと持っているスピーカーからにぎやかな音楽を流して小銭の入った碗をじゃらじゃらと鳴らせながら乗客の一人ひとりに物乞いを始める。ほとんどの乗客は無視するけど、たまに小銭を与える人がいる。ただ、時折、四五歳くらいの女の子が物乞いをすることがある。携帯スピーカーから音楽を流し、ヘッドホンのマイクに向かって蚊の鳴くような声でかすれた声で歌を歌う。子供にこんなことをさせてと思うのだけど、幼女が物乞いをする時は乗客はわりあい小銭を与えたりする。もちろん、親はその効果を狙って、子供に物乞いをさせているのだ。
この物乞いの仕事は実入りがいいようで、ひと月に一万元くらい稼げるのだそうだ。上海の大学新卒の給料は三五〇〇元くらいだから、物乞いの収入はその三倍くらいにあたる。
人それぞれ生きるのにひたむきなわけではあるけれど。
(2015年2月15日発表)
この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第319話として投稿しました。
『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/
虹橋空港で二号線に乗ると、一番端の車両に二人組か三人組の物乞いがスタンバイしていて、電車が走り出すと持っているスピーカーからにぎやかな音楽を流して小銭の入った碗をじゃらじゃらと鳴らせながら乗客の一人ひとりに物乞いを始める。ほとんどの乗客は無視するけど、たまに小銭を与える人がいる。ただ、時折、四五歳くらいの女の子が物乞いをすることがある。携帯スピーカーから音楽を流し、ヘッドホンのマイクに向かって蚊の鳴くような声でかすれた声で歌を歌う。子供にこんなことをさせてと思うのだけど、幼女が物乞いをする時は乗客はわりあい小銭を与えたりする。もちろん、親はその効果を狙って、子供に物乞いをさせているのだ。
この物乞いの仕事は実入りがいいようで、ひと月に一万元くらい稼げるのだそうだ。上海の大学新卒の給料は三五〇〇元くらいだから、物乞いの収入はその三倍くらいにあたる。
人それぞれ生きるのにひたむきなわけではあるけれど。
(2015年2月15日発表)
この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第319話として投稿しました。
『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
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