風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

車庫証明制度がないと(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第374話)

2017年09月19日 06時45分45秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』

 中国では開発業者が十数棟のマンションを一挙に建て、周囲をぐるりと塀で囲み、出入り口には警備員を置いて管理しているところがよくある。このようなマンション群を中国語では「小区」と呼ぶ。僕も上海郊外のとある小区に住んでいる。
 夕方になれば小区のなかは車があふれかえる。駐車場はすでにいっぱいになり、小区のなかの道路脇は車がびっしり並んでとまっている。固定駐車場の数が限られていてまったく足りないので、後は道路脇のスペースの奪い合いになる。止めるところがないものだから、歩道に突っ込んでとめたり(通行人は歩道へ入れなくなる)、道幅の広いところでは、なんと道のど真ん中に止めたりする車もあった。道路の真ん中に駐車するのは、駐車場から出てくる車の邪魔にならないようにして、かつ、他の車が通路を通れるようにするための苦肉の策だ。もちろん、危ない。
 ゴミ捨て場の前に駐車しているものだからゴミ出しができなくなるわ、人が歩道へ入れなくなるわで困っていたのだけど、ようやくのことでゴミ捨て場の前や、歩道の前や、道路の真ん中といったところに柵が立ち、そこは車が駐車できなくなった。生活に支障がでなくなった。
 どうしてこんなことになるのかといえば、車庫証明がいらないからだ。中国には、日本のような車庫証明制度がない。駐車場を確保しなくても車を買える。それで、車庫の手配をせずに車を買ってしまうものだから、車が路上にあふれかえってしまうことになる。日本ではよく空き地を駐車場にして貸し出しているけど、上海ではそのような駐車場をあまりみかけない。家内は、以前、二年間ほど車を運転していたけど、駐車スペースの奪い合いが面倒くさくて車を手放した。帰りが少しでも遅くなると小区のなかはもう車でいっぱいになっていて、車をとめられないために、家を目の前にして帰宅できないことが何度もあった。
 上海に限らず、中国の大都市はどこも似た状況のようだ。僕が以前住んでいた広州の小区も、なかは車であふれかえり、歩きにくくて困ったものだった。出られなくなって、はやくどけてくれとクラクションを鳴らし続ける車がいたりもした。
 車庫証明制度はそれはそれで面倒だけど、やはりあったほうがいい制度だと思う。


(2016年8月29日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第374話として投稿しました。
 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/


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