銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

北杜夫ワールド

2011年10月28日 | のほほん同志Aの日常
一昨日のこと。

秋の軽井沢を満喫し、
帰りの長野新幹線で
お客さまと楽しくお喋りの最中でした。

「あっ」
電光ニュースに思わず声が出ました。

――作家の北杜夫さん、死去――

あ~あ~、とうとう…

直接にはもちろん、何も存じ上げない方でした。
でもひとつの思い出があり、込み上げる淋しさがありました。


私の古い友人は北杜夫さんの大ファンでした。
家には氏の全集が書棚に並び、
これ必読だから、と渡された本は
『夜と霧の隅で』と、『父っちゃんは大変人』。

この2冊、躁鬱病とともにあった氏の
こっち側とあっち側の両極のような作品で、
凡庸な私はその振り幅の大きさについていけず、
2冊とも途中で投げ出し…
軽蔑の視線を浴びたものです。


友人はまた、なんと北杜夫氏からの直筆ハガキ、なるものまで
何通か大切に持っていました。
まだ中学生だった頃に書き送ったファンレターに、
その都度きちんとお返事をくださったのだそうです。

そのハガキというのが、さすが北氏で…


裏面にはあらかじめ印刷された文字がズラリ。

拝啓
前略
謹啓

あけましておめでとうございます。
暑中お見舞い申し上げます
残暑お見舞い申し上げます
寒中お見舞い申し上げます

敬具
草々
かしこ(?)


それでもって、用途に応じて、いずれかが○で囲んであるのです。


名付けて、「万能ハガキ」。
(万能ハガキ と片隅にきちんと印字されてました)


でもこれは横着のためでは決してなく、
その証拠に余白にはびっしり、
親子以上に年の離れた友人への文字がしたためられていたのでした。


それから二十数年。
氏の訃報を伝える朝刊にのった奥様のことば。

「本当に、少年のようにしたいことをやった人。
その上に、いろんな意味で精神的に波があった。
私自身は大変なこともあったが、決して不幸ではなかった。
今となってはその変化が、おもしろかったのかもしれないと思う」


こっちとあっちを行き来する氏との暮らしを、
それでも「おもしろかった」という奥様。
そのことばに、横着なのかマメなのかよくわからない、
字ののたうちまわった「万能ハガキ」を思い出しました。


今なら私も、あっちこっちへ行き来する
北杜夫ワールドをオモシロがれそうな気がします。

途中で放り出した2冊の本、また手にとってみることにします。



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