銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

それでもなお、観音さまは微笑む

2013年11月28日 | Hの生きる喜び、それは
その観音さまに初めて出会ったのは、6年前
読みかけの白洲正子「かくれ里」と「十一面観音巡礼」を持って
静かな湖北の里山を訪ねました

ひっそり人知れず立つ観音堂に訪れる人はほとんどおらず
風の音さえも聞こえてきそうな静寂
穏やかな里山風景が広がり、民家の軒先には吊るし柿

こんなところがまだ近くに残っていたなんて…
白洲正子さんが惚れ込むのも納得
順番でお堂を管理してくれている住民の方が
到着にあわせて、お堂の中へ招いてくれて、
観音様の扉をゆっくりと開けてくれました

中には、うっすら口元に紅が残る十一面観音
平安初期の作というのに、衣にもわずかですが極彩色が残り
モノトーンに見えていた周囲の中で
ひときわその朱色が光ってみえました

木之本の「石道寺」(しゃくどうじ)です

あれから何度か訪ねましたが、実はその都度
「まずいかもしれない」
じわじわとくる危機感に苛まれていました

そして、その懸念が今日、決定的になりました!!

石道寺、鶏足寺に向かうべく、駐車場に停めようと向かうと

ぞくぞく到する観光バス
団体客がぞろぞろ…
田んぼの中のあぜ道が、祭りの行列??のように
賑やかな声が響きわたり、観光客でいっぱいなのです…!!

ウソー!? ショック 

特に人気なのは、「石道寺」手前の「鶏足寺」のもみじの参道
200本あまりの紅葉が散り、絨毯にように敷き詰める紅葉が
最近よくメディアで紹介されるようになり、
その見事さから、一気に観光客が増えたようです

あの時の静けさは!? ひなびた風景は何処へ!?
違うんです もっと、ここはかくれ里の雰囲気が残って…
と心の中で叫びながら、皆さまを案内する私

駐車場から歩くこと20分
到着した鶏足寺は、緩やかな参道の石段、両側のこけむした石垣が
いっそうの情緒をかもしだし、
ここがひっそりとしていたら何も言うことなし!
なのですが、紅葉の数に負けじと、ぞくぞく到着する観光客

時は流れる … か

あの時とは全然違う感傷にひたって、さて、と
石道寺へとさらに進んでいきました

ところが、

さっきまでたくさんいた観光客、団体客は石道寺へは行かず
そのまま帰っていく人がほとんど

石道寺こそ、白洲正子さんが惚れ、
井上靖「星と祭」で紹介された、あの有名な十一面観音がおられる
まさに「かくれ里」なのに

さっきまでの喧噪が嘘のように
ひっそりと静まりかえる観音堂が、
あの時と変わらず私たちを迎えてくれました

そしてあの時と変わらず、住民の方がお堂へ招き
観音様の扉をゆっくりと開けてくれたのです

口元の紅色もそのままに静かにほほえむ十一面観音様

--最近少しにぎやかですね

仰っているとすれば、差し詰めそんなところでしょうか

時間は流れ、周囲は変われども
お堂の中はあの時のままに静かに時を刻んでいました

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巨大なぶろーち

2013年11月26日 | のほほん同志Aの日常
「わ」
「あれ?」
「それ、どしたん?!」

…と、今日、朝いちばんの注目を集めたのは
アフリカ帰りのうら若き?スタッフ。
いつも先輩諸氏から服装のことで、口やかましく注意されています。

シンプル、といえば聞こえはいいのですが、
どうやら本人のなかには「装うこと」に抵抗があるらしく、
化粧っ気なし、アクセサリーも一切なし。
無頓着、という言葉がぴったりかもしれません。

その彼女がコートを脱いだとき、目に飛び込んできたのが
ジャケットの胸元に光る巨大なブローチ!

どのくらい巨大かというと、
カブトムシぐらいあって、ゴロンと光ってて、
いや、それはあなたゴージャス系マダムでないと似合わないでしょう、というしろもの。

それを無印良品みたいな彼女がつけているわけで、
ちぐはぐというか何というか…。

目を白黒させる私たちを前に彼女、

「おかしいですか…? 
 私、きのうの添乗も、これつけて行ったんですけど」
「お客さんからも、何つけてんの?って口ぐちに訊かれました」
ですって!

あかんあかんと思いながら、爆笑する私。
あ~、朝から涙が出た!
(ごめんなさい)


でも、わかります。
自分に似合うものが分かるようになるには、
けっこう時間がかかるもの。
他人のほうがかえってよくわかるものです。

かくいう私もそうでした。
今より日韓関係がもっと良好で、韓国への添乗が多かったとき、
ソウルの骨董街で必ず駆け込んでいたジュエリー屋さんがありました。

デザインから加工から販売まで女性ひとりでやっている小さな店で、
こんにちは久しぶり、のあとに店をぐるりと一周し、
彼女に言うのはいつも同じセリフ。

「似合うのをひとつください」

すると彼女がオッケーと言いながらいくつか選んでくれて、
それはたいていの場合、私がひそかに目をつけていた目立つデザインのものではなく、
「へえ、これ?」と思うような、小ぶりでシンプルなもの。

でもいざ、つけてみると、とてもしっくりくるのです。


「大ぶりなのよりも、小さいほうがきっと似合うよ」

今朝、「カブトムシ大」をつけたスタッフにこう言いながら、
私も、ソウルで同じことを言われたなぁ…と思い出していました。


でも、うれしいです。

願わくば彼女がこれからも、
果敢に「装い」に挑戦しつづけてくれますように。

ばか笑いしてしまう私たちの、口の悪さと正直さにめげることなく。


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「利休にたずねよ」

2013年11月24日 | 見かけだおしNのつぶやき
それはパリに行く飛行機の中でした
隣に座られたあるお客様が、一睡もせず
その分厚い本に対峙されていました

「対峙」・・・これは言葉として的確でないかも
ただ、仕方なしに
この長いフライトをやり過ごすための手段だった、
が、正解か

パリに到着し、席を立つ頃
その方のシートの下に、その本は置かれていました

どこかの有名ホテルのスリッパと同じに
無造作に置き去りにされようとしていました

その方は、私の問いに
「もう読んだから」
あっけなく、そう仰いました

本を捨てる

私には、とてもできない
雑誌や古本ならまだしも・・・

シートの下の本は、
どう見ても新刊で、
でも、余計な帯やカバーは外され、
活字そのまま、むき出しにされた本そのものが
放り出されていました

これから旅が始まります
荷物が増えることはご法度です

でも、手に取ってしまいました

それは・・・
元来、本が捨てられない性分と
きっぱり捨てた、そのお客様にとても興味があったからです

その分厚い本を手に取り、
そそくさとカバンにしまいこみました

これが4年も前のことです

すっかりその本のことは忘れていました

なぜなら、もったいない主義で拾った本
勝手に命を救ったと自己満足だけが際立ち、
あとは本棚の奥にしまい込み忘却の彼方・・・

しかしタイミングですね

何を思ったか、ある日、その黄色の本が目にとまり
カバーもなく、簡素な本を本棚の奥から引き出し

「そうだ、あのパリの旅で・・・」
懐かしさから、
「ま、読んでみようかな」という気になったのです

その本が「利休にたずねよ」でした

タイトルどおり千利休を軸に繰り広げられる
茶の湯の世界

面白い、率直な感想です

悲しいかな、お茶もお花の習うことなく
今日まできました

そんな私が、

一番感じ入ったのは・・・

冒頭の、秀吉をこきおろす場面です
口汚く、罵詈雑言を述べています

この小説の最初のクダリがこれでした

侘び寂びの心が、その後、物語の中で何度とちりばめられています
誰もが知る、利休のわび茶の世界

まだ読まれていない方もあるので、核心は触れずにおきますが、

死を前に、茶聖・千利休は、迷いの塊、
そう「人間だった!」と
確信したのです(なんてエラソーに)

このお話は、完璧に臭い本です

パリで出逢った本、そんな雰囲気で勝手に神格化していました
私のイメージする、千利休の達観した静寂の心

でも恐ろしく、人間むき出しの、泥臭い、煮えたぎる心の持ち主

生きるか死ぬか、
まさに戦国時代の物語です

こうなると、かの海老蔵が主役も納得か!

映画がいよいよ公開です

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空飛ぶカバン

2013年11月16日 | 見かけだおしNのつぶやき
タイへ出発のスタッフから
「間もなく出発です!」との報告電話が関空からありました

慌ただしい出国前ですから
あれこれなしで簡潔に

「じゃあ気をつけてね」
が毎度の投げかけの言葉です

でもどうしても、今回は聞きたいことがあって
つい、言ってしまいました

「ところで、○○さんのスーツケースどうだった?」

「はい、しっかり最新のに変えておられました!」

あ~良かった、やれやれ

スタッフがいうには、関空に現われたお客様、
開口一番!
「これ見て、Nさんに怒られたから変えたのよ、このカバン」

すると別のお客様が
「あら、私もこれ、Nさんに買え!と言われて買い換えたの」 

買え!ってまた乱暴な・・・・そうだったかも?

ともかくおふたり揃って最新版の軽量スーツケースを持参されたと

この夏オーストリアにご一緒した先のお客様
関空で最初に目に留まったもの・・・

大きな革張りの立派なスーツケース!
どう見ても、高額の良い品
そして今や素敵なカフェに自転車と共に飾ってあるような
レトロ感充分な存在感さえある、
そうそう西洋の絵本に空飛ぶカバンみたいに出てくる、
そんなスーツケースでした

とっさに思いました
「アカン、こりゃ重いな」

しかも長い年月のうえ、車がまわらない
そして、重い

たいていこの手のスーツケースをお持ちのお客様は
こう仰います

「もう、この歳だし、海外は卒業
だから、買い換えるのはもったいないしね」

当時の私(4か月前)は駄目な添乗員でした

「そうですね、もったいないですね。
いまお持ちの鞄で問題ないですよ」と
あっさり答えるいい加減な添乗員(あれ!今もですか?)でした

ところが、そういうお客様にかぎって
「膝が最近ね~だから奮発してビジネスで!」
とリクエストされます

ここに盲点がありました

旅前に疲れてはもともこもない、
そこには、皆さん準備も十分万全なのです
でも、旅先で疲れることは・・・うっかり失念?

銀のステッキのお客様は
海外はそろそろ卒業しようか、とそんなお声(だけ?笑)の
方が多いのも事実です

でも、まさかもったいない精神で、
うん十年前から利用されるスーツケースのせいで、
現地で四苦八苦され、旅そのものが辛くなるとは・・・

かくいう私もそこまで想像できず

つい「大丈夫、もったいないですし」
と、ビジネスに乗るお客様に!そう言っていました

さて、その夏のオーストリア旅では・・・
荷物運びは、なるだけお手伝いしました
それは、もちろん平気です

でも、お客様はどうしても
「ゴメンね、ゴメンね、迷惑かけて」となります

あまりに気をつかわれるお客様に私は、言いました

「ゴメンは、もうなしにして下さい、
それよりこの鞄、これはあきませよ、
今いくらでも良いの(軽いの)売ってますから
買って下さい!」

鳩が豆鉄砲?

そのお客様はキョトンとして・・・

「でもAさん(他のスタッフ)は、重厚な良い鞄って誉めてくれたのよ」

もう、全くいい加減に!

「これは重いだけです!」追いうちをかける私

ちょっぴりシュンとされたお客様に
「いえいえ、骨董品としてはきっと価値がありますから」と
慌ててフォロー

「骨董品?」

全くフォローにならず


かくして、季節が過ぎ
この度の旅行で、先の方からいただいた

「これで怒られずにすむわね」
 (なんで!?)

銀ステの皆さん!
これは過去の私の手配上の経験で申し上げます

もったいなくても「スーツケース」選びは大事です
なんといってもお客様の身体ほど大きさがあります
軽くて、持ち運び便利が一番!
これはビジネス席に乗るより、格段安くで手に入る
旅の快適術です

鞄は空飛ぶ、軽いにかぎりますよ!

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壱岐・対馬で見つけた「旅の十か条」

2013年11月16日 | のほほん同志Aの日常
旅先での楽しみのひとつに、本を探すことがあります。

その土地の美術館や博物館、小さな空港の売店には
地域ゆかりの偉人伝や郷土史、地元新聞社が出版した本など、
街の大型書店では決してお目にかかれないような本が並んでいるものです。

昨日まで訪ねた長崎県、壱岐・対馬。
行く先々の売店で
必ずといっていいほど並んでいた冊子がありました。

小松津代司著 『宮本常一の足跡 壱岐・対馬を巡る』

何の予備知識もなくぱらぱらっと手に取ってみて、
「旅の十か条」という文字に目が留まりました。

民俗学者の宮本常一氏。

氏がまだ15歳だったころ、故郷の山口県周防大島を離れ、
大阪に働きに出ることになったときに、父親から送られたメモ書き。
それが「旅の十か条」として紹介されていました。

****** ***** *****
1.
汽車に乗ったら窓から外をよく見よ。
田や畑に何が植えられているか、育ちがよいか悪いか、
村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、そういうところをよく見よ。
駅へ着いたら人の乗り降りに注意せよ。そしてどういう服装をしているかに気をつけよ。
また駅の荷置き場にどういう荷が置かれているかをよく見よ。
そういうことでその土地が富んでいるか貧しいか、よく働くところかそうでないところかよくわかる。

2.
村でも町でも新しく訪ねていったところは必ず高いところへ上って見よ。
そして方向を知り、目立つものを見よ。
峠の上で村を見おろすようなことがあったら、お宮の森やお寺や目につくものをまず見、
家のあり方や田畑のあり方を見、周囲の山々を見ておけ。
そして山の上で目をひいたものがあったら、そこへは必ず行ってみることだ。
高いところでよく見ておいたら道にまようことはほとんどない。

3.
金があったら、その土地の名物や料理はたべておくのがよい。
その土地の暮らしの高さがわかるものだ。

4.
時間のゆとりがあったら、できるだけ歩いてみることだ。
いろいろのことを教えられる。

5.
金というものはもうけるのはそんなに難しくない。
しかし使うのがむずかしい。それだけは忘れぬように。

6.
私はおまえを思うように勉強させてやることができない。
だからおまえには何も注文しない。すきなようにやってくれ。
しかし体は大切にせよ。30歳まではおまえを勘当したつもりでいる。
しかし30過ぎたら親のあることを思い出せ。

7.
ただし病気になったり、自分で解決のつかないようなことがあったら、郷里へ戻ってこい。
親はいつでも待っている。

8.
これからさきは子が親に孝行する時代ではない。
親が子に孝行する時代だ。そうしないと世の中はよくならぬ。

9.
自分でよいと思ったことはやってみよ。
それで失敗したからといって、親は責めはしない。

10.
人の見のこしたものを見るようにせよ。
その中にいつも大事なものがあるはずだ。
あせることはない。自分のえらんだ道をしっかり歩いていくことだ。

**** **** ****

島を出て働き、見聞を広めなさい。
そんな気風が氏の故郷にはあったのだそうです。

15歳だった少年は、のちに民俗学に進み、
戦前から高度成長期にかけて
日本の津々浦々を訪ね歩いては(泊まった民家は1200軒以上とも!)
「忘れられた日本人」を記録していくことになります。


初めて訪ねた壱岐・対馬。
イカも美味しかったし、温泉も気持ちよかったですが、
それ以上に嬉しかったのは、「旅の十か条」を見つけたこと。

そして、そのメモ書きをずっと胸に携えて
生涯を歩きつづけた魅力的な人物に出会えたことでした。


*写真は壱岐のイルカタクシーと「猿岩」です。

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