キューバ、青のジンクス

水難の相（これについては後ほど）に見舞われたキューバの旅も
なんとか最終日にたどりつき、今日は帰国の途へ…という朝。

「ねえ、初めての国って緊張しない？」　と、あるお客さまに訊かれました。

「はい、めっちゃ緊張します」　と真顔でうなずきながら、
こうも正直に答えてよかったものか。

というのもこのお客さま、ここ数年だけでもう何度も
ブータン、モンゴル、ドバイ、スリランカ、アイスランド、そして今回のキューバ…と、
銀のステッキでは「初めてご案内する国」と承知でご参加下さっている強者。

手配は万全だったとしても
勝手の分からぬ初めての国はもちろん、添乗員としては緊張します。

とくに今回、私は未知なる国キューバへの期待と思い入れがとても強く、
一週間も前からスーツケースを出していそいそと荷造りし、
どっさり買い込んできたゲバラとヘミングウェイとキューバ音楽の本もそのなかに詰めこみ、
その高ぶりは徐々に緊張に転じ、出発前夜には珍しく、夜中に何度か目が覚めるほどでした。


ふだんあまり動じない分、たまに緊張すると哀れです。
ただもうおろおろし、無意味なジンクスに走ります。

「このキューバのツアーが無事、終わりますように！」

念じるのは、ただその一点。
信号でいうならば、青がセーフ、赤はアウト。

となると、赤色のものはすべて避けたほうがよく思えてきて、
服もアクセサリーもぜんぶブルー系のものに入れ替えて、
赤色のネームタグも黄色（ほんとうは青が良かったけれど）につけかえて、
ポーチのなかの飴ちゃんも、いちご味は最後まで食べませんでした（なんのこっちゃ）。

最後まで迷いに迷ったのが、「機内で読むのにぴったり」と
何日も前からカバンに放りこんであったこの本。




この本はセーフ（青）か、それともアウト（赤）か、どっちだ！

…結局、行きの飛行機では手にしませんでした。


さて、キューバでの時間は瞬く間に過ぎてしまい、今は日本。
イチローなみに守り切ったジンクスの結果はどうだったのでしょう。

和やかで、笑いの絶えない旅でした。

一方で、外は大雨、バスは雨漏り、ホテルは水が出なくて急きょ変更、
キャバレーショーは突然の雷雨のため２時間も待ちぼうけ。

そんなこんなを、
「これもキューバね」
「今度、みんなでお祓いツアーに行きましょうよ」
と笑い飛ばしてくださるお仲間でした。

だから、セーフ…だったと信じたいのですが、
あれだけ毎日のように水難の相に見舞われたのは、
私が青いものにまみれていたからに違いないことを
ここに白状しておきます。

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