越中の小京都、南砺市城端の春を彩る、城端神明宮の祭礼「曳山祭」。
全国各地、「曳山祭」と名の付く祭りはたくさん伝えられていますが、
ここ城端の曳山祭が他と違って、「ぜひとも行ってみたい!」と思ったのはふたつの理由からです
まず、①飾り山
そして、②庵唄所望(いおりうたしょもう) です
昨年の秋、城端でおこなわれるもうひとつの秋の祭り
「むぎやまつり」に訪れた時のことでした
昼食をいただいたお寿司屋さんで、食事をしている時
ご主人が私たちの席まであいさつに来てくださり
「実はうち、来年の春の大祭で、山宿することになってるんですわ」
とお話ししてくださいました
山宿?と聞き返す皆さん
「この城端に住んでるもんは、一生のうちに一度だけまわってくるお役目で、
春の曳山祭の山車にのる6柱の神さんを、宵山の時に一晩迎えて泊まってもらうんです、その宿のことを山宿と言うんですわ」
「そらもう、神さん迎えるから大変で、家を改装して、二間から三間続きの部屋を用意して、畳は全部はりかえて、ふすまや屏風で飾り立てて、調度品を買い込んで、これ以上ないもてなしで迎えやなあきませんから、一回(それも一晩だけ!)迎えるだけで百万近くかかるんです」
「いざというときは神さん背負って逃げられるよう、その日は神さんに縄つないでおいて、同じ部屋で主人は休む、ちゅうことになってます。その準備やら何やらで、今から大変ですわ」
それを聞いていた皆さん
「それは珍しい風習やね!是非とも見てみたいわ、ご主人の山宿も見たいしね~」と意気投合
たたみかけるようにご主人
「それやったら、庵唄、聞いていってくださいよ」
庵唄?とまたしても皆さんキョトン
「庵唄っていうのは・・・」と説明いただき
「それならその庵唄もぜひ、聞いてみたいね~」と話しは半年前にまとまり、いざ、その本番を迎えたのでした
まずは、宵山の「飾り山」(飾り山のある家を山宿と言う)
奥行きを出すために、畳は一直線にはる
神様に見劣りしないよう、大きく可憐な花(朴の花)を飾る
どの山宿も趣向を凝らして、この時ばかりと神様をお迎えしておられました
この山宿を見てまわるのが、宵山の楽しみと言われています
寿司屋のご主人も紋付き袴姿で訪れる人を接待
神さまにご挨拶もできて、半年前の約束を果たせました
これが庵屋台。夜は提灯の灯りでぼんやりと浮かび上がる
そして、本祭。
曳山に庵屋台、傘鉾と行列が続きます。
そして、お楽しみの庵唄所望の時間がやってきました
こんな感じで庵唄を所望すれば、民家に横付けにされます
そもそも庵唄というのは、江戸端唄の流れを組む典雅な唄で、庵屋台の中で、若連中によって演奏されます。庵屋台は京都・祇園の一刀茶屋や江戸・吉原の料亭を精巧に模したもので、城端独特のものです
庵屋台の中に、囃子方、唄い方 など、町の若連中が入って演奏し唄います
庵唄所望とは、地元の習慣ですが、祝儀を出して庵唄を自分の家で聴くことです。
所望した家では親戚知人を招き、簾を巻き上げて庵屋台を待ち受けます
そして、6カ町の庵屋台が次々に所望する家に横付けになり、
各町の選定した歌詞を書いた短冊を渡し、庵唄を披露します
本来、地元の方がご祝儀を出して家族親戚で愉しむものですが
今回、銀のステッキもご祝儀を出させていただき、
この貴重な庵唄所望を体験させていただきました!
庵屋台を間近で見ることも、自分たちだけのために演奏してくれることも
本来は出来ない貴重な体験です
庵唄を書いた短冊をいただきます
昔の人は、家にいながらにして江戸や京都の料亭遊びを
この庵唄所望を通して愉しんだと言われています
メインストリートを間近にのぞむ、所望宿
山車を眺めながら、庵唄に耳を傾ける・・・
なんと贅沢なこと!すっかり地元民の気分
歴史ある祭りですから、山車を眺めるだけ、行列を追うだけ、
では、物足りないしもったいない
本来の楽しみ方を知ってこそだと感じました
記憶に新しいですが、城端曳山をはじめ、全国33件の「山・鉾・屋台行事」が昨年12月、ユネスコ無形文化遺産に認定されました
1、地域の人々が一体となり執り行う,各地域の文化の粋をこらした華やかな飾り付けを特徴とする「山・鉾・屋台」の巡行を中心とした祭礼行事
3、各地域において世代を超えた多くの人々の間の対話と交流を促進し,コミュニティを結びつける重要な役割を果たしている
城端曳山祭まさにその名に恥じない祭りでした