銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

りんご売りの青年

2010年02月27日 | のほほん同志Aの日常
井上陽水のアルバムタイトルにもなった「氷の世界」。

 窓の外ではリンゴ売り
 声をからしてリンゴ売り
 きっと誰かがふざけて
 リンゴ売りのまねをしているだけなんだろう♪

いまどき「リンゴ売り」だなんて、
陽水の歌のなかだけの存在だと思っていました。
その青年に会うまでは。

名はM君。
職業、リンゴ売り。
営業マンのお手本として、いつも思い浮かべる人物です。

彼を初めて見かけたのは数年前。
冬の夜、仕事の帰り道のことでした。

コンビニの前にはリンゴを山ほど積んだワゴン車が1台。
その前で、ピノキオが成長したようなノッポの青年が
道行く人に声をかけていました。

「美味しいリンゴ、リンゴはいかがですか~」

明るい声、にっこり笑顔、長い手足はなぜかコミカルな動き。
小さなワゴン車の前には人だかりができて、
なんだか大道芸人のような空気を醸しだしています。

寒い夜、家路を急いでいたにもかかわらず、
ついつい足を止めてしまいました。

「はい、お姉さんありがとう。コレ食べてみて、おいしいよ」

切ってもらったリンゴをひとくち。
うん、まあまあ、おいしい…

ひとつ100円のリンゴを買って帰ろうとすると、さらに呼び止められ

「お姉さん、このリンゴ酢も飲んでって。
 リンゴはね、まぁ言うてもふつう。
 でもね、このリンゴ酢がすごいんですよ」

ついついまた立ち止まり、青年お勧めのリンゴ酢をひとくち。
これが運の尽きでした。

オ・イ・シ・イ…!!

なんともまろやかな甘酸っぱさで、
疲れがスーッと消えて溶けていくような感覚。

迷わず買おうとお値段を聞くと…なんと1本3000円!
えーっ、リンゴ酢ってスーパーで1本400円ぐらいだけど…。

「う~ん、高いっしょ、ゴメンね。
 でもね、作り方がぜんぜん違うから、こんなにまろやかなんです。
 市販のものと違って、絶対にむせたりしないからね」

結局、あまりに美味しかったので、思い切ってそのリンゴ酢を買いました。

以来、月に一度ぐらいばったり出会えるそのワゴン車とみると
必ず駆けよってリンゴ酢を買い求め、
寝る前にお湯割りにして、おいしいおいしいとちびちび飲んでは、
「うん、疲れがスーッととれる」とやるのが毎晩の儀式に。

そんな日々が1年ほどもつづいたでしょうか。
私の生活時間が変わったためか、
ある時をさかいに、その青年に出会うこともぷつりとなくなりました。

あの味が忘れられず、
スーパーで売ってるふつうのリンゴ酢も試してはみましたが、
むせ返ってしまって、やはりダメ。
あの夜の、青年の言葉は本当だったのです。


営業とは「迷っている人の背中を押すこと」だといいます。

迷うどころか、帰り道を急いでいた私の足を止め、
とびきりのリンゴ酢を教えてくれた、リンゴ売りの青年。

良いものを、必要とする人にきちんと届ける、
営業マンの確かな腕に感謝です。

それにしても今夜はくたびれ気味。
こんな夜に、あのリンゴ酢があればなぁ…。

いつかばったり街角で
リンゴだらけのあのワゴン車に出会える日を願わずにはいられません。


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