夕方ゴールデン・カフェでマリー、フィリップスとぼくの3人で話し合いを続けた。サポートしてくれるネパール人は報酬として5000ルピーを要求しているらしい、人を馬鹿にした話だ。国境の管理官にお金を払うと言っているらしい、が管理官を買収するならそんな金額では何の役にも立たない。ネパール人なら裏道を知っているだろう。ぼくの支払いはマキシマムで1000ルピーだと言った。それと、ぼくの条件はカトマンズに1泊しても良いが直ぐにデリーへ戻り、マリーからお金を受取ること。マリーも言っている事なのだが、カトマンズでお金を払えば甘い仕事で得たお金だ、酒でも飲んでべらべら喋られたら堪らない、それに危険だ。お金を使い果した奴がその後ぼくを強請りにホテルへ来るかもしれない。
今までは気にしていなかったがゴールデン・カフェにネパール人が3人も働いている。ちょっと話を持ち掛けてみたら乗り気の奴がいた。出発まで日数はないが何とかなるだろう。
マリーはネパール人にぼくが逃亡する事を話したのではないだろうか、だから奴は金額を吹っ掛けてきた。オーバーステェーやパスポートを失くしたという話で良いのだ。1度でも流れた情報は広がるのが早い、デリーのネパール人社会も狭い。噂が広がるとまずいなと思っていると、ジュース屋のカウンターの椅子に座って通りを見ているぼくに、1人のネパール人が近寄って来た。カトマンズに帰りたいのだがお金がない、飯も食べていないし寒い外で寝ている、助けてくれないか、ときた。見た事のある顔だ。カトマンズの話しをしているとぼくの定宿であるモニュメンタル・ロッジを知っていた。どうするか迷ったが助けなかった。パスポートを持たないジャパニーがカトマンズへ行こうとしている、噂は広がるかもしれない。