広場はロータリーのようになり数本の通りが放射状に延びている。この一角のどこかにぼく達が始める予定だった土産物店があるはずだ。アッサントーレから延びる1本の広い道を進むと王宮横を通る町の中心道路カンティプルに突き当たる。この通りの左側の2階であることは大体分かっている。2階を見上げながら行きつ戻りつしていると、2階から下を見ていたのだろう、スンダルがぼくに気づいた。
「ヘーイ、トミー。トミーここだ、上だよ」
きょろきょろと周りを見回すがスンダルの居る場所が見つからない。どの店も窓からセーター等の売り物をぶら下げている。声はするがどこからだか分からない
「ここだよ、ここ」
という声と同時に階段を駆け下りてくる足音がした。すぐ横の階段から出てきたスンダルはぼくの手を握って
「トミー心配したよ。トミー・・・」
それだけ言うと彼は言葉に詰まった。
「心配かけたな、スンダル」
ぼくは一瞬、目頭が熱くなった。やっとカトマンズに帰ってきた。ここでずっと生きていたい、だがそれは出来ない。感傷に心の緊張を緩めてはならない。
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