だから、ここに来た!

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【今週のウチシネマ】All about Ah-long

2005-10-19 | movie/【今週のウチシネマ】

『ウェイキング・ライフ』の他に観た映画は、
先週に引き続き《チョウ・ユンファ特集》です。

ahlongまず『過ぎゆく時の中で』。
私、この映画は一週間の間に何度も見直してしまいました。
…家族ものに弱いんです。
監督は『PTU』『Needing You』などのジョニー・トゥー。
チョウ・ユンファ、シルビア・チャン主演。
二人は脚本にも関わっています。


元バイクレーサーのアロンは、男手ひとりで一人息子のポーキーを
トラック運転手をしながら育てています。
仲のいいふたりは、お金はなくてもお互いに信頼し合い、毎日楽しく暮らしていました。

子供服のCMを撮影するために自転車がうまい子供を探しているという話を紹介され、
ポーキーをオーディションに出したアロン。
ポーキーはディレクターの目に止まり、見事採用されることになるのですが、
契約の為にアロンがディレクターのオフィスを尋ねると、
そこには見覚えのある女性が…。
実はディレクターの彼女こそ、10年前に姿を消したアロンの恋人であり
ポーキーの母親のシルビアだったのです…


ばっと見、香港版「クレイマー、クレイマー」といった感じですが、
女にだらしがなく、遊びが派手な主人公の元を去った女が、
無事に産んだ事実も知らされないまま残していった息子と再会し、
主人公が彼女のことをあきらめきれずによりを戻そうする点で
また違った趣のある作品です。
(まぁ意識はしていたと思いますが…)

母親と息子の初対面のぎこちなさや、父と息子の絆、愛情の表と裏を垣間見れて、
親子ってこんなところあるよねとうなずいてしまうところもあります。

あと、なんつっても、ウォン・コンコン演じるポーキーがかわいいんだなー!
子供のかわいさと憎たらしさを見事に演じてます。
彼はこの作品で香港アカデミー賞助演賞にノミネートされてますね。

そしてこの時、主演賞を受賞したのがチョウ・ユンファ。
もっと早くにこれを観ていたら、今と同じように彼の作品を追いかけたくなったはずです。
それほど彼の演技はいい! いいです!!
アロンの様々な顔…子供を大切にする父親であったり、女に手をあげるダメ男だったり、
命を賭けて戦うレーサーであったり、
その全てが彼であるという説得力が観客を満足させます。

はじめはすごいボサボサ長髪頭で衝撃的だけどね。
その髪型はないんじゃないの!
でもそのわけも後で分かるわけです。
「だからもっさり頭だったのねー」って感じで。

シルビア・チャンもこの役にぴったり。
ソバージュが似合ってます。
(なんか髪型の感想になってるな…)


この話の中では、アロンの髪型以上にショッキングな出来事があり、
あまりの辛さに私はしばらく呆然としてしまいましたが、
その部分すら、やはり三人の演技ですっかり美しく見えてしまい、
なんだか複雑な心境です。
これから見るという人がいるなら、是非なんにも考えずに見始めて欲しいものです。
エンディングの曲も、アロンの人生を表しているようで絶妙です。

台詞も人物描写もかなりうまく出来た佳作だと思います。
私はこれで、リマスターDVD買う決心がつきました!
12月が楽しみだわ~。


過ぎゆく時の中で デジタル・リマスター版 [DVD]

そしてもう一本は、同じくチョウ・ユンファ主演の「リプレイスメント・キラー」ですが、
これはもうガンガンスキップして観ちゃった。

replaceユンファ先生が、行かなきゃいいのに行っちゃったハリウッドでの初仕事ですが、
かっこいいけどさー、だからなんだろう?という感想になってしまいます。

確かに定番の二丁拳銃もハマってるし、
指令に背いてマフィアに立ち向かう無口な暗殺者っていうのも素敵ではあるし、
スリムで身のこなしも軽やかで申し分ないけど、
話はつまらんよ!

あまりにこじんまりとまとまり過ぎていて、人物の深みがない。
「ウェイキング・ライフ」の中でも言ってたけど、
映画はストーリーで見せるもんじゃないんだってことがよく分かります。
そこにいる人物がどういう本質を持っているかを分からせないでは話は進まない。
寡黙ならかっこいいかっていうのはお門違い。
もっと主人公に背くだけの理由の強さがなければダメだ!

ハリウッドで活躍するユンファ先生を見ても、今まで魅力的とも思わなかったのは、
決して本人のせいではなく、彼の演技を出させない映画の方がいけなかったんだなと、
この二本を見てはっきりと感じました。

12月までの間に、また『過ぎゆく時の中で』借りようかなーと思うくらいだな。


リプレイスメント・キラー [DVD]

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【今週のウチシネマ】Dream is destiny

2005-10-19 | movie/【今週のウチシネマ】
夢ってのは脈絡がない。
妙にリアルだったり、急に全く関係のない風景に出くわしたりする。

私は眠たくもないのに必要以上に睡眠を採っている。
現実に飽き飽きしているからかもしれない。
とにかく、眠らないではいられない。
おかげで近ごろは眠りに落ちる瞬間の、魂が抜ける感じも分かる。

そうすると夢もたくさん見る。
昔は逃げる夢が多かったけれど、最近は外国の夢が多い。
それと母の夢。今ではもう会うこともない友達もよく交替しながら出てくる。
彼らは私の願望なのか、テレパシーなのか、いまだに分からないけれど、
現実とは違うthe other side of my lifeと言ってもいいのかもしれない。
実際、私は夢の方が現実に思えそうなときだってある。


『ウェイキング・ライフ』という映画は、『恋人までの距離〈ディスタンス〉』、
『ビフォア・サンセット』のリチャード・リンクレーター監督作品で、
この2作品に出ているイーサン・ホーク、ジュリー・デルピーが
同じ役で一場面出演している。

たとえば彼らは「意識」について語り合っている。

「私の人生は妙に醒めていて、老女が回想しているようなものに思える」
と彼女が言うと、
彼は死んだ人間の脳は死の直後、5分から数十分は生きている話をする。

「つまり、きみの人生はその数分に老婆が見る夢なわけだ」

そして彼女は彼がいつか話した「魂の輪廻」の話を思い出して、
魂が何度も生まれ変わるには人口の比率が合わないと言う。
じゃあきみは新しい魂が生まれてくるっていうの?と彼が聞くと、
彼女はそうじゃなくて、と返す。

「魂って記憶の集合体なんじゃない?」

新しく生まれてくる命は、人類の種の記憶を持っている、
だから、ヒトは本能の記憶を生まれながら持っているという話をする。

この場面も、主人公が見る夢の一部なわけですが、
私は、監督は霊能力者なんじゃないかしら?と思ってしまいました。
この会話は非常に意味がある気がする。
前にもここで書いたけれど、私は輪廻転生を信じる派で、
でもそれは理論があるわけではなくて「希望」としての信念だったわけです。
でも、この話はすごく理に適ってる。
最近ある本にも同じことが書いてあって目から鱗が落ちる思いだった。

つまり、魂・記憶が素粒子だという考え方。

だとすると、夢の正体も説明出来そうな気がする。
体を離れて記憶が解放されて、昔の思い出や最近の視覚的な刺激、
それに昔の魂の記憶?が混在して形になる。
死もその状態に近いはずだ。

そうすると、この映画に出てくる、
「死は生の外の夢だ」
という台詞に繋がる。

この映画、おそらく実写の上に色を乗せてアニメにしているんだと思うんですが、わざと動きを歪ませてあって、見る前に「バス酔いみたいになるよ」という話を聞いてました。
確かに始めは辛いけど、後半は曖昧さがかえって好感持てました。
夢なんて、あんな感じでしょ(笑)!

私は暑苦しいくらいに様々な概念について語りかけてくるこの作品がかなり好きです。
全部スクリプト起したいくらい。
『恋人たち…』を10回観るとしたら20回は観たいかも。
今更だけどDVD買おうかな。
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