「天領盃酒造」
尖ることない、シンプルな味わい
蔵があるのは両津港からほど近く。
「自分の好みの日本酒を造りたい」
そう考えたのが、加登さんが蔵元になろうと考えたきっかけだったそうです。当時、加登さんが目指そうとしたのは、甘くて酸味がある、当時流行りの味わいでした。日本酒は好きだが、そこまで量を飲める体質ではなかったという加登さん。
「印象に残りやすいお酒というのが、当時の僕には分かりやすかったのだと思います」
しかし、蔵元となり、目指す味わいを模索するうちにその考えは変わったそうです。
「他県も含め、さまざまなお酒を試飲しました」
すると、酒の減りに偏りが出た。洗練され、スッと体に馴染む酒。極度に甘いわけでも酸っぱいわけでもなく、余計なものが削ぎ落とされた味わい。尖りすぎていない酒の減りが圧倒的に多いことに気がついたそうだ。
「現在は、酒造りのコンセプトを『キレイで軽くて、穏やかな酒を造る』としています」
雅で楽しい時間を演出する酒
常にコミュニケーションを取り、ベクトルを同じ方向に。
就任2年目の造りから、製造責任者も兼務するようになった加登さん。現在は、20代、30代の蔵人とともに目指す味わいを醸しています。
「現在のメンバーは、僕が酒を醸すようになってからSNSなどを通じて、蔵人になりたいと自ら応募してきてくれました」
2019年、製造責任者として、加登さんは新しい銘柄を誕生させました。
「雅楽代」(うたしろ)。
天領盃酒造のある住所、佐渡市加茂歌代は、加茂地区と歌代地区が統合しできたもの。古い文献をたまたま見ていた加登さんは、天領盃酒造は旧・歌代地区にあることを知りました。調べてみると、佐渡に流されてきた順徳天皇に向けて、島民が歌を詠んでいた。歌人としても有名だった順徳天皇が歌を気に入ると、土地が与えられた。その土地が旧・歌代地区。
「この場所を、雅で楽しい、時代の代と書いて、『雅楽代』という名字を名乗っていた一族が収めていたことを文献で知りました。うちのお酒が飲む方の楽しい時間を演出する要素になりたい。常に考えていたこの想いと、土地の名前のもととなる『雅楽代』が僕の中で合致したんです」
進化し続けるお酒
2022年に変わったばかりの麹室。
「酒造りの設備に関しては、19年からの4年間で、ほぼすべて変わりました」
目指す味わいを醸すには、旧設備では造れない。製造責任者として経験を重ねるごとに、より酒造りという仕事が明確になり、毎年設備投資を行い、一歩ずつ進化を遂げている天領盃酒造。
「製造責任者初年度のお酒は今振り返ると、よく出せたなという味わいだったと思います。でも、おそらく数年後に今年出したお酒を振り返ると、同じようなことを言っていると思います。時代が進み、人との関わり方や楽しみ方が多様化していくのと同じように、『雅楽代』という銘柄も毎年、毎年、常に進化し続けたいと思っています」
全国トップレベルの蔵元に
売店スペースなども新設した。
「新しいことに次々挑戦したい。そう思っていたときもありましたが、それは違うと気づいたんです」
蔵元としても製造責任者としても、県内では最後発にあたる加登さん。酒造りを行えるのは実質半年。その限られた時間の中で、毎年、数種類の新銘柄に挑戦した場合、すべてがゼロからの積み上げになる。しかし、同じ銘柄を同期間で繰り返し醸せば……。
銘柄を絞り、繰り返し造ることで、酒の味も自分の技術も成長スピードが格段に速まる。加登さんはそのように考えたそうです。
「今後もあまり商品数を増やすつもりはありません。お酒の品質をどんどん高めて、名だたる県内の先輩たち、全国トップレベルの蔵元さんたちに追いつき、追い越すこと。これが僕たちの目標です」
*https://www.niigata-sake.or.jp/interview/k14.html より
天領盃酒造の変遷
1983年 佐渡にあった3蔵が合併し、天領盃酒造の前身である佐渡銘醸株式会社を創業。
2008年 佐渡銘醸株式会社が経営破綻し、天領盃酒造株式会社へ。
2018年 後継者不在のため、廃業が危ぶまれていたが、現代表が経営権を引き継ぎました。
2019年 新ブランド「雅楽代」並びに「THE REBIRTH」をリリース。以降、蔵元自らが酒造りの先頭に立つ、「蔵元杜氏」に就任。この年以降、大幅な設備投資を毎年行い、品質第一を掲げ、日々品質向上に励んでいます。
醸造哲学 〜心きらめく酒造り〜
お酒造りにおいて私たちが最も大切にしているもの。それは「心がきらめくかどうか」です。
美味しいお酒は心がきらめく。ならば、仕込みごとに1mmでも、自分たちは美味しいを突き詰め、心がきらめく限界点を超えていきたいと考えています。
少しでも妥協をしようものなら自分達の限界点は超えられません。どれだけの手間ひまがかかろうが、それが美味しいお酒に繋がるのならば、全て行う徹底的に品質を追い求めた酒造り。
大変な時も多々ある。もっと楽できるのにな。と思う時も正直、たくさんありますが、出来上がったお酒を飲んだ時にはそれまでの辛さは全て吹き飛んでいきます。
そしてまた、限界点が上がっていく…。常々思うことがあります。それは最高傑作は常に次の作品だということです。自分達のお酒に完成形などなく、挑戦する心を忘れずにひたむきに造り続けるということ。
そして最後は、そのお酒を飲んだ皆様の心ときめく瞬間を創っていくことができれば幸せです。
多くの挑戦多くの失敗小さな成功
天領盃酒造ではお酒を仕込む毎にレシピや温度経過が全て異なります。
2019年以降、同じ製造方法で行ったものはひとつもありません。
よく言えばチャレンジ精神旺盛、悪く言えば全くの不安定。
しかし、この挑戦全てに共通するものが一つだけあります。
それは「より美味しくなる可能性のある理論に基づいた挑戦」であることです。
前回の味がこうだった。であればここを変えてみたらもっとよくなるのではないか…
よし、やってみよう。
その結果、前の方がよかったのでは?ということもあります。
しかしその挑戦がなければそれは気がつけなかったことでもあります。
そして、その失敗から得た学びが次の「より良く」へ繋がっていきます。
失敗を恐れず、次々と挑戦していくことこそが今の天領盃の精神です。
徹底した品質管理
お酒の仕込みは普通酒から純米大吟醸まで、全てにおいて大吟醸造りです。
お酒を搾った後には酒粕が残ります。原料米がどれくらい酒粕として残ったかという指標を粕歩合と言うのですが、全国的に平均すると30%前後になるのではないでしょうか。
弊社の粕歩合は平均して約50%ほど。原料米の半分が酒粕になっているということです。それだけ贅沢な造りをしています。(もちろん酒粕はお菓子などの原材料として循環しています)
そして搾った2日以内に瓶詰め、瓶詰めから2日以内に加熱処理を行い、マイナス5度の冷蔵庫にて保管されています。
全ては皆様の元へ最高品質でお届けするため。
徹底した品質管理が弊社の当たり前。
これからも皆様の期待に応えられるお酒造りを真っ直ぐひたむきに行っていきます。
挑戦し続けること、変化や失敗を恐れないこと、お酒に対して誠実であること。
これが天領盃酒造の全てです。
天領盃酒造株式会社 新潟県佐渡市加茂歌代458
代表銘柄
天領盃 大吟醸 YK-35
天領盃酒造のフラッグシップモデルの大吟醸タイプです。
フルーティな香りとキレのある後味が特徴で
大吟醸にすることにより、華やかな香りがさらに増し、エレガントなお酒となっっています。
少量生産のため、売り切れ次第終売となります。
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