四、五回で終わる予定でしたが、思いのほか長くなりました。
今回の講義で氏は、日韓関係を抜き差しならないものにしている原因が、「反日種族主義」であると説明します。この言葉は、私が使う「反日左翼」という、偏見に満ちた言葉に似ています。
「こうした中で、私が考える一番深く太い根が何であるかと言えば、それは反日種族主義です。反日民族主義、と言っても良いでしょう。」「民族主義は、現在、韓国人が共有する一番強力な共同体意識です。」
「ところで私は、韓国の民族主義が正常でないと、考えています。」「西ヨーロッパで発生した民族主義は、成長する市民階級の政治意識でした。」「封建的身分制度や、絶対君主制を否定し、それに抵抗しながら、市民形成と国民統合を追求するという、肯定的な役割を担当しました。」
「しかし韓国の民族主義は、それとは違ったものです。市民形成と、国民的統合の歴史的役割を見出すことができません。」
西欧の民族主義がどんなものであったか、私には別の意見がありますが、氏がそのように語るのなら、それもまた一つの見識です。
「ご存知のように、韓国政府は中国に対しては、限り無く、屈従的です。」「韓国企業が中国で不当な待遇を受けても、何の反応も見せません。」「中国を、G2などと言って過大評価している唯一の国は、他でもない、我々の韓国です。」
「反面日本に対しては、限りなく敵対的です。激情と憤怒が、常に先立ちます。」「正常な討論が、不可能です。ここでは数々の嘘が捻出され、横行します。」「それは結局、国民を統合するのでなく、国民を分裂させる、副作用しかありません。」
明治時代の李氏朝鮮以来、韓国は日本を蔑視し、憎悪し、敵対的でした。私はこの原因を、韓国人が持っている中華思想と儒教思想だと考えています。漢民族の中国こそが世界の中心、文明の先達であり、周辺諸国は野蛮な夷狄の国だとする尊大な思想です。
漢が滅ぼされ異民族の清となった時から、韓国は、中華思想の本流が自分たちだと錯覚しました。こうなると島国の日本など、鼻先であしらうしかできなくなります。根っこはここにあると私は考えますが、氏は、民族主義の理論を展開します。
「韓国人はまだ本当の意味での、市民として、一つの国民として、統合されていません。それで私は、韓国の民族主義を、種族主義と呼ぶ方が妥当だと考えます。」
西欧の思想を一段上に置き、自国を低くみるというのは、日本の学者も同じでしたが、どうやら氏も韓国の民族主義を、西欧の下位レベルと考えているようです。
「野蛮の上に横たわる種族間の敵対感情を、私は、種族主義だと言います。韓国の民族主義は、日本を、仮想敵対種族と想定した、種族主義なのです。」
説明のしようがない、韓国人の恨日感情は、確かに氏の話の方がぴったりときます。理性で解明できない日本への憎しみは、「仮想敵対種族主義」と呼ぶ方がわかり易いのかもしれません。
しかしどうしても、呉善花 ( オ ソンファ ) 氏の言葉を思い出します。元韓国人だった氏は日本に帰化し、大学教授だったと思います。
「儒教の教えからすれば、中国は親であり、日本は弟です。」「親である中国には、どんな仕打ちをされても我慢できますが、」「弟である日本が、兄である韓国を超えることは、」「何であっても、許すことができません。」
以前に読んだ氏の著書で、述べられていた言葉です。従って中華思想と儒教思想が、日本との対立を生む根っこだと考え、氏の反日種族主義より妥当性があると自分では思っています。
「日本の実態、日本の歴史、日本の文化を、韓国人は正確に知りません。日本を、仮想の敵対種族として考えるだけです。」「韓国人の国際感覚は反日種族主義と、親中事大主義で織りなされています。そんな低劣な国際感覚のため、この国は行く道を失い、迷っています。」
反日種族主義が中華思想から生まれ、親中事大主義が儒教思想から生じていると、氏はどうして言わないのでしょう。聡明であっても、当事者になると客観性を保つのが難しいのでしょうか。中華思想と儒教思想を抜きに、ねじれた日韓の解明は困難ですが、氏はそこに目を向けません。もしかすると韓国の知識人として、「中華思想」と「儒教」を貶めたくない気持ちがあるのかもしれません。
「李承晩TVは、韓国を再び亡国の道へと陥れかねない反日種族主義を批判し、これを打破するための具体的事例を約40件あまり、順を追って紹介する計画です。」「皆さんのご静聴に感謝いたします。ありがとう。」
40本の動画が準備されていることが分かりましたが、これ以上「ねこ庭」で取り上げませんので、興味のある方はご自分で見てください。
11年前の著書で氏は、「韓国人に国は要らない。確立された個人が、世界各地に根を張り、生きていけば良い。」と、語っていましたが、今回の動画では考えを改めたようです。
「韓国という国の中で、韓国人を市民として統合する。」と、変わっています。国を統合するためには、中心となるシンボルが不可欠で、氏はそれを建国の父と呼ばれる「李承晩」に求めています。五千年の歴史を持つという韓国なのに、統合のシンボルが、李承晩元大統領しかいなかったということになります。
権力者たちが敵対し憎み合い、殺し合う「恨みの政治」の連鎖は、天皇のおられる日本では生じません。敬愛の中心に天皇がおられる日本に、改めて感謝し、長いシリーズを終わります。