4. 「伊藤貫の真剣な雑談 ( 第2回後半 )」 〉・・「再生産される悪夢・国際政治3学派の蹉跌」
「それでは、最初に説明するのは相互依存派ですね。」
なんと氏は、リベラル派の3つのパラダイムの一つである「相互依存派」の説明を始めました。「リベラル派の3つのパラダイム」の説明は、消えてしまいました」と言ったばかりなのに、ここで述べています。
「再生産される悪夢・国際政治3学派の蹉跌」というサブタイトルですから、今回取り上げても辻褄は合います。氏を信奉する視聴者には何でもないことでしょうが、「祭りの薬売り」の印象が消せない私には、違和感が増します。
・相互依存派の議論は、20世紀初頭にすごく流行った。なぜかというと、ヨーロッパとアメリカの地域では、今と同じくらい、国際貿易、国際投資、相互投資に依存する率が高かったからだ。
・1910年に、イギリスの知識人ノーマン・エンジェルが書いた『大いなる幻想』という本が世界的ベストセラーになった。
・本の内容は、ここまで各国が貿易や投資で相互依存しているのだから、バランスオブパワーという議論はもはや時代遅れだ、諸国は軍備競争などやっておれない、そんなものは馬鹿げているというものだった。
・10年くらい前に流行ったボーダレス経済、グローバリズムと同じような理屈を、この時代に彼は語った。それで大評判となり、本も売れた。
・この人はのちに労働党の政治家になり、ノーベル平和賞まで受賞した。
「祭りの薬売り」さんだとしても、知らないことを教えてくれる人は先生ですから、私は学徒に変身します。気になるのは、嬉しそうに、得意そうに笑顔で喋るところですが、日本の悪口ではないので我慢できます。
・ところがこの本が世界的ベストセラーになった4年後に、第一次世界大戦が起こった。
・要するに経済の相互依存度がいくら高まっても、戦争を止めるには何の役にも立たないということが、証明されたわけになる。
・しかし人類というものは、過去の歴史の教訓から何も学ばない。1910年にノーマンの本が大ベストセラーになり、1914年に第一次世界大戦が起こったのに、1989年にベルリンの壁が崩れ冷戦が終わると、2008年の世界大金融恐慌が起こるまでの約20年間、もう一度「相互依存のパラダイム」が世界中に流行った。
・世界中の人々が走り回って商売をやり金儲けをすれば、戦争などは起きない。国境なども問題でない、グローバリズムは素晴らしいと、そういうことを言い出した。
・この考えが「相互依存派」の間違った議論だったのに、アメリカが中国に対して実行した政策が、このセオリーに基づくものだった。
雑談が佳境に入りつつありますが、スペースが無くなりましたので、続きは次回といたします。この部分は「祭りの薬売り」の雑談というより、「ねこ庭」の先生の話なのでじっくりと聞く必要があります。