3. 「伊藤貫の真剣な雑談 ( 第2回前半 )」 ・・リベラル派のパラダイム
中断していた氏の雑談を紹介します。
・これからリベラル派の3つのパラダイムを説明する前に、国際政治の構造がどうなっているのかを簡単に説明する。
・国際政治には構造というものがあり、これを明確に意識しないと話がなかなか進まない。国際政治の特徴を4つだけ手短に説明する。
1. 過去3000年の国際政治では、一度も世界政府が存在しなかった
2. 過去3000年の国際政治では、一度も共通の価値判断、文明観、経済イデオロギー、政治思想が存在しなかった
3. 過去3000年の国際政治では、国際機関が主役になったことは一度もない
4. 過去2500年の国際政治では、バランスオブパワー政策 ( 外交 ) が行われてきた
この4項目が国際政治の特徴で、氏が一つずつ説明していきます。3000年前という時間軸をなぜ持ち出したのか、理由があるはずなのに説明がありませんので、ネットで調べました。(「ヤフーの知恵袋」)
中国・・周の時代 ( 紀元前1046年から紀元前256年の古代中国の王朝 )
日本・・縄文時代後期 ( 紀元前1万4千年から紀元前2千4百年 )
ギリシャ・・ミケーネ文明が異民族侵入により崩壊し、都市国家が生まれていた ( 紀元前1200年頃 )
他のヨーロッパ・・部族社会
こういう世界を念頭においての話だということになりますが、なぜ3000年に基準を置いたのか、理由を説明する方が親切な気がしないではありません。
〈 1. 過去3000年の国際政治では、一度も世界政府が存在しなかった 〉
・過去3000年間、世界を管理する警察、裁判所、立法院などが存在しなかった
・過去3000年間の世界は、端的にいうと無政府状態だった
・無政府状態ということは、何でもありの世界だった
・無政府状態とは、どんな約束事をしても、どんな条約を結んでも、どんな制度を作っても、強い国が勝手なことをすると誰も処罰できない
・これが過去3000年間の国際政治の特徴である。
過去の3000年当時を思い描きますと、世界を管理する警察、裁判所、立法院などが存在しないのは当たり前の話です。だからと言って当時の世界を「無政府状態」と断定するのは、氏の得意とする極論のような気がします。「世界政府」という概念を持つ後の世の人間がそう考えるだけで、当時の世界は無政府状態というより、「それが当たり前の世界」、普通の言葉で言えば「弱肉強食の世界」です。
この議論を押し広げて現在までも含め、「これが過去3000年間の国際政治の特徴である」と断定するのは、どう考えても強引な意見ではないでしょうか。
〈 2. 過去3000年の国際政治では、一度も共通の価値判断、文明観、経済イデオロギー、政治思想が存在しなかった 〉
・単に世界政府が存在しないだけでなく、価値判断の面で、どの国も、どの文明国も、自分の信じたいことを勝手に信じていた。
・どのイデオロギー、どの価値判断、どの宗教が正しいかということを判定する人がいなかった。
・2021年、2022年になっても、どの価値判断、どのイデオロギーが正しいかの結論が出ていない。
世界が3000年前から、共通の「価値判断、文明観、経済イデオロギー、政治思想」を持っているとしたら、その方が不自然で異常な話になります。共通のものがない世界はダメだというトーンで氏が説明しますから、どうしても「祭りの薬売り」の姿が浮かんできます。
むりやり異を唱えているのでなく、自然に生じる疑問を述べていますが、読む人によっては氏の話を素晴らしいと聞くのかもしれません。スペースがなくなりましたので、続きは次回といたします。