田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

74歳の誕生日

2007-06-23 00:15:18 | Weblog
6月22日
●PCを笈のごとく背負って街にでる。巷は雨。わたしの心には書くことのできなかった小説への無念の涙があふれている。とくに、この15年は悲惨だった。わたしが、緑に囲まれた田舎住まいを楽しんでいるうちに、東京では平成不況、雑誌の廃刊があいついだ。知り合いの編集長が定年になった。発表の場をうしなった。そして、二度にわたるわたしの大病。よくぞ病魔を克服し健康をとりもどしたものだ。いまは、健康すぎるくらいだ。そこで、PCをヨドバシカメラで買った専用のリックにいれて街に出た。
●宇都宮駅のコンコース。赤とんぼが床に止まっていた。いや、止まった姿のまま干からびていた。人に踏まれてこなごなになっていないのがふしぎだった。わたしは、雑踏する人々の足元を見つめていた。もしや、あの季節はずれの赤とんぼがとびたちやしないかと期待して。
●カミサンがチサンホテルの「だいだい」に誘ってくれた。珍しいこともあるものだ。前回宇都宮に来た時食事をして、とてもおいしかった。リピーターというところだ。店の内装も和風の趣を取り入れて明るくおちつける。イスの布の色調もいい。わたしの頼んだランチ、金曜日の特別メニューのカレイの香味野菜オイスターソース煮? おいしかった。カミサンにもつまませた。恥ずかしそうに箸をのばした。「おいしいわ」そして、じっとわたしをみつめている。
「誕生日おめでとう」それで誘ってくれたのだ。
「たべもののことはなにもわからない。おいしいものをおいしいなと思ってたべるだけだ。ほんとうにおいしかつた。でもそれではブログ書くのに困る。このカレイのメニュー書き写しておいてよ」
カミサンはじっとわたしをみつめていた。わたしも沈黙。原稿が売れたらこの「だいだい」で夜の懐石料理でもカミサンに御馳走してあげよう。彼女の誕生日は12月だ。