田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

夜行性/夕日の中の理沙子(2)  麻屋与志夫

2009-04-12 04:07:31 | Weblog
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暗いところでもよくエレナはものが見える。

洞窟の苔むしたたたずまいをたのしんでいる。

うれしそうにはしゃいでいる。

「おれには過激派のサブロウたちの党派を支配する力はもうない。彼らのなすがま

まだ。また千年の眠りにつくことになるだろう。いやもう目覚めなくてもいいよう

な気がしてきている。彼らが平城遷都1300年の奈良に集結する理由すらよくはわか

らない。人の世にさらに介入して、この世を混乱させようとしているのかもしれな

い。翔太。しかしよく訪ねてきてくれた。おれの居場所がよくわかったな」

「え、それっておかしいよ。翔太。サブロウがミヤさんが会いたがっている。マッ

クラの滝にいる。そういったよね」

エレナが二人の会話に割って入る。

「来るわ。来る」

よくここがわかったな。とミヤが初めにいった。

翔太は暗闇の中をよくここにたどりついたな。という意味だと思っていた。

ミヤはよくここにおれのいるのがわかったな。という意味でいった言葉だった。

「翔太。これ罠よ。大勢くる」

「翔太。逃げろ。サブロウにはここは古巣だ。ここでは、ヤッラの実力は倍増す

る。この洞窟で戦うな」

翔太のリッパーはガードバーの所に止めてきた。

立ち入り禁止の標識を真面目に守ったことが悔やまれた。

車の駐車位置まで引き返すには一本道だ。

「古道がある。林の中を登れば車道にでられる。さらばだ。翔太。エレナと仲良く

な」

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「いるは」

とエレナがつぶやいた。

「いる。アイツラか」

「ちがう。猿よ」

熊笹をわけて移動している。

翔太とエレナの気配におどろいて動き出したのだろう。

「よくこの暗闇でみえるな」

「あらぁ。わたし元をただせば夜行性の吸血鬼ですもの」

エレナが翔太の耳もとでつぶやいた。

翔太は能力を使役することにした。

おぼろにクリッパーが脳裏に浮かぶ。

やはりいた。

車の影に数人かくれている。

車を放棄して歩いて街までてるには遠すぎる。

「翔太の考えていることわかる」

エレナは車道に到達すると走りだした。

車はすぐそこにあった。

わさわさと夜目のきくものたちがエレナにせまってきた。

あいてが女なのでコウフンしている。

エレナは吸血鬼特有の高速歩行に切り替えた。

早い。またたくまに翔太にはその姿の気配すら感じられなくなった。

かすかに月が出た。雲の切れ目から冴えわたった半月が見える。

車のキーを回した。始動させた。


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ああ、快感。