奥様はvampire 3
○つきあいはじめてまもない頃、打ち明けられた。
「わたしは人間ではあるけど、人間のカテゴリイには、入らないかもしれないの」
「それでもいい。なんでもいい。結婚しよう」
うそだぁ。
わたしのような男が、こんな美人と結婚できるわけがない。
「ほんとにいいのね。ほんとに、ほんとにいいのね」
「ああ、いい。いいよ。はやく結婚しょう」
つまりおそらくだれの場合でも同じなのだろう。
むかしからいわれてきた「結婚は人生の墓場」ということの真の意味をしらずに結
婚して、それを認知せずに死んでいったものは幸いなり。ということだろう。
それをしてしまって…‥。
それでも幸せに暮らせたものは、さらにさらに幸せな賢者なのだ。
○「mima!! それって、すごいと思うよ。mimaってどんどん若くなっていくみた
い」
孫娘の麻耶がいった。
お化粧しているカミサンの後ろで鏡を覗き込んでいた。
三歳の時のことだ。
○愛とはHすること。
Hのない愛なんて「クリープのないコーヒーみたい」なものだぁ。
とわたし的には考える。
「わたしはね、麻耶。子どもをつくるときしかHしなかったの」
「それって、すごい……」
12歳なった孫に話すことではないと思ったのは、わたしだけだった。
孫からは完全理解の回答が戻ってきた。
「それって、すごいと思うよ」
普通の人間は愛していればHする。
Hして。
Hして。
HHHHHHHHHHHHHHHHHして赤ちゃんが生まれる。
わたしは新婚初夜に子どもが欲しい時だけ……。といわれて仰天した。
逃げるのなら今だ。
○孫の麻耶はごく普通の女の子には育たなかった。
現在完了進行形。では……今をときめく女流作家。
それでいてT大学医学部の新入生。これでマスコミが騒がない方がおかしい。
○「父に会いに行きたいの」
心臓が止まるほどわたしはおどろいた。
この50年というものカミサンに家族がいる
などとはきいたこともなかった。
彼女は戦災孤児だと思っていた。
東京は渋谷初台の生まれだとは聞いていた。
○「50年。……だけ許されていたの。あなたとはその歳月だけ一緒にいる許可がで
てたの。いままで……それをいわずにほんとうにごめんなさい」
○永遠に生きられる種族にとっては――彼女にとっては、わたしとの50年の結婚生
活はほんの一瞬だったのかもしれない。
あと一年来年薔薇が咲くころには彼女はわたしから離れていかなければならないら
しい。
悲しいことだ。
胸が張り裂けるようだ。
○カミサンの父は、神代薔薇園の園長をしていた。
これは一族のものには、既知のことだいう。
わたしは部外者だったのでしらされていなかつたのだ。
○あたりは馥郁たる薔薇の芳香に満ちていた。
いうまでもないことだが、義父はわたしよりも若かった。
○「あまり娘が嘆くので、長老会であと一年だけ延期してくれた」
「おとうさん。ありがとう」
カミサンは真珠の涙をこぼした。
カミサンが泣いたのは、子どもたちを出産したときだけだった。
○帰路。
麻耶の「やがて青空」の出版記念イベントにでた。
麻耶の紹介でわたしの「孫に引かれて文壇デビュー」も売り上げを伸ばしている。
でも麻耶の人気にあやかっての売れ行きなのだ。
孫に引かれて、を「牛に引かれて善光寺詣り」のモジリと理解してくれるヤン
グは少ないはずだ。
○「いまこの会場に、麻耶さんのGPがおいでになっています。一言どうぞ」
司会者にふいにマイクをわたされた。
○わたしはこのブログでフイクションを書いていることを告白しそうになった。
わたしをみつめるカミサンの目が赤くひかったのでおどろいてやめた。
○いま書いていることがはたしてフイクションなのだろうか。
●印のある部分の記述はまちがいなく神に誓って事実だが――○で書くことが曖昧
になってきた。
事実と虚実の隔たりが短縮され混然としてきた。
わたしにはなにも分からなくなってきた。
カミサンとはあと一年といいわたされて気がおかしくなったのだ。
いやボケチャカボケチャカボケチャッチャツタ。ということかもしれない。
○あと一年しかカミサンと一緒にいられないなんて……正気でいられるはずがな
い。
one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
↓

ああ、快感。
○つきあいはじめてまもない頃、打ち明けられた。
「わたしは人間ではあるけど、人間のカテゴリイには、入らないかもしれないの」
「それでもいい。なんでもいい。結婚しよう」
うそだぁ。
わたしのような男が、こんな美人と結婚できるわけがない。
「ほんとにいいのね。ほんとに、ほんとにいいのね」
「ああ、いい。いいよ。はやく結婚しょう」
つまりおそらくだれの場合でも同じなのだろう。
むかしからいわれてきた「結婚は人生の墓場」ということの真の意味をしらずに結
婚して、それを認知せずに死んでいったものは幸いなり。ということだろう。
それをしてしまって…‥。
それでも幸せに暮らせたものは、さらにさらに幸せな賢者なのだ。
○「mima!! それって、すごいと思うよ。mimaってどんどん若くなっていくみた
い」
孫娘の麻耶がいった。
お化粧しているカミサンの後ろで鏡を覗き込んでいた。
三歳の時のことだ。
○愛とはHすること。
Hのない愛なんて「クリープのないコーヒーみたい」なものだぁ。
とわたし的には考える。
「わたしはね、麻耶。子どもをつくるときしかHしなかったの」
「それって、すごい……」
12歳なった孫に話すことではないと思ったのは、わたしだけだった。
孫からは完全理解の回答が戻ってきた。
「それって、すごいと思うよ」
普通の人間は愛していればHする。
Hして。
Hして。
HHHHHHHHHHHHHHHHHして赤ちゃんが生まれる。
わたしは新婚初夜に子どもが欲しい時だけ……。といわれて仰天した。
逃げるのなら今だ。
○孫の麻耶はごく普通の女の子には育たなかった。
現在完了進行形。では……今をときめく女流作家。
それでいてT大学医学部の新入生。これでマスコミが騒がない方がおかしい。
○「父に会いに行きたいの」
心臓が止まるほどわたしはおどろいた。
この50年というものカミサンに家族がいる
などとはきいたこともなかった。
彼女は戦災孤児だと思っていた。
東京は渋谷初台の生まれだとは聞いていた。
○「50年。……だけ許されていたの。あなたとはその歳月だけ一緒にいる許可がで
てたの。いままで……それをいわずにほんとうにごめんなさい」
○永遠に生きられる種族にとっては――彼女にとっては、わたしとの50年の結婚生
活はほんの一瞬だったのかもしれない。
あと一年来年薔薇が咲くころには彼女はわたしから離れていかなければならないら
しい。
悲しいことだ。
胸が張り裂けるようだ。
○カミサンの父は、神代薔薇園の園長をしていた。
これは一族のものには、既知のことだいう。
わたしは部外者だったのでしらされていなかつたのだ。
○あたりは馥郁たる薔薇の芳香に満ちていた。
いうまでもないことだが、義父はわたしよりも若かった。
○「あまり娘が嘆くので、長老会であと一年だけ延期してくれた」
「おとうさん。ありがとう」
カミサンは真珠の涙をこぼした。
カミサンが泣いたのは、子どもたちを出産したときだけだった。
○帰路。
麻耶の「やがて青空」の出版記念イベントにでた。
麻耶の紹介でわたしの「孫に引かれて文壇デビュー」も売り上げを伸ばしている。
でも麻耶の人気にあやかっての売れ行きなのだ。
孫に引かれて、を「牛に引かれて善光寺詣り」のモジリと理解してくれるヤン
グは少ないはずだ。
○「いまこの会場に、麻耶さんのGPがおいでになっています。一言どうぞ」
司会者にふいにマイクをわたされた。
○わたしはこのブログでフイクションを書いていることを告白しそうになった。
わたしをみつめるカミサンの目が赤くひかったのでおどろいてやめた。
○いま書いていることがはたしてフイクションなのだろうか。
●印のある部分の記述はまちがいなく神に誓って事実だが――○で書くことが曖昧
になってきた。
事実と虚実の隔たりが短縮され混然としてきた。
わたしにはなにも分からなくなってきた。
カミサンとはあと一年といいわたされて気がおかしくなったのだ。
いやボケチャカボケチャカボケチャッチャツタ。ということかもしれない。
○あと一年しかカミサンと一緒にいられないなんて……正気でいられるはずがな
い。
one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
↓

ああ、快感。