日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎追う男

2012年06月27日 | ◎これまでの「OM君」
夢を売る。
未来にはそんな商品がある。
ムービースター、有名アスリート、天才アーチスト、F1レーサー・・・
一夜限り、お好みの人生、夢の時間を過ごせるのがここ、レネゲイト社にはある。
しがない労働者のオレは、同僚の感想を聞いてやってきた。
どうやら素晴らしいらしい。
ジェームスボンドのような波瀾万丈、痛快アクションスパイになる夢をオーダーし、目を閉じた。

気がつくと、都会のど真ん中に立っていた。
見たことがある都市のような気がする。
しかし特にスパイ風なところは何もない。
「こんなもんかな・・・」
すれ違った男がいきなり殴りかかってきた。
すんでの所でかわす。
「ちょ、ちょっとなに!」
まだまだ、殴ってくる。
まわりの男女も、こちらを指さしながら駆け寄ってくる。
なんだが分からないが、逃げるしかない。

「こっちよ!」
車が止まり、助手席のドアを開ける女性。
美人だ。
美人は問答無用で信用する性分。
乗り込んで、ドアを閉める。
急発進するスポーツカー。
「待ってたのよ、ごめんなさいね。」
何かを噴射され、気を失った。

目を覚ますと、イスに固定されていた。
「よく戻ってきてくれたね。」
声のする方を見る。
そこにはオレがいた。
「どういうことだ。」
「思い出さないかい、ここには始めて来た気がしないだろう。」
確かに見覚えがある。どうしてだ。
「まったく君にはやられたよ。今にして思えば、君の作った世界に安易に入った僕もバカだった。」
だんだん思い出してきた。確かにこの世界はオレが作った世界だ。
「夢を売るプログラムの確認の為に、エンジニアの僕がこの世界に入り込んだ。その時に君に監禁された。そして僕の体に君が入っていった。」
すべて思い出した。この万能の世界以外の外の世界が見たくてこの計画を実行したのだ。
「でも、どうやってこの世界に僕をおびき出した。」
「彼女のおかげさ。君に帰ってきて欲しかったんだろう。彼女の協力で僕の体に君が入った瞬間に何とか君の記憶を消したよ。そうしないと二度とここに戻ってこない可能性があったからね。君の同僚にもここに来るように呼びかけてもらった。で、現実の世界はどうだった?」
「やっぱり我が家が一番さ。」
コメント
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