コンコン、コンコン。
「はーい。どうぞぉ。」
「こんにちは。」
「あれ、どうしたの?」
「あのぉ、実は・・・」
これが昨日の驚きの始まりだった。部屋を訪れたのは、かれこれ15年以上のつきあいになる女性・・・(オホン,そこの君,その疑いの目は早計だ)・・・彼女の正体,簡単にいえば小学生の時に私が学級担任をしていたAさんだ。今は教育学研究科で博士課程の学生をしている。
「久しぶり。どうしたん?」
いつもはつらつして,はちきれそうなくらいの元気な子(決して服がはちきれそう、という意味ではない)が、今日はなぜかガラにもなくモジモジしている。なによりそのすぐ後ろに男性が立っている・・・私もよく知っている男性だ・・・不審だ・・・Aさんのことだから、何かまずいことをやらかして、この男性に捕まって私のところに謝りにきたのか?イヤイヤ、さすがに博士課程に進学した者が、それはないだろう。ではいったいこの組み合わせを解くカギは?いったい何だ?
心の中には「なんでこの二人がここにいるのだ???」という思いも巡りつつ、勘が鋭くない方でもない私としては、すでにその状況に気づき始めていた。そう、その通りなのだ。
「あのぉ、先生、実は・・・今度、私たち、
結婚します。」
ぎょえーーーーっ!!
ぐはぐはっ
!なぬぅ
???
前述したように、決してピーンとこなかったわけではない。しかし、しかしだ。それにしても、この驚きは衝撃以外のナニモノでもなかった!その証拠に,目の玉が飛び出してしまったので、慌てて拾って元の通りに押し込まざるを得なかった(ウソウソ)くらいだ!
昔から人を驚かすのが好きな子だった。何度といわず驚かされ、あげくに笑われたものだ。しかしなんだ、小学校を卒業してすでに15年近くが経過しているというのに、その子にまたもしてやられるとは・・・不覚であった。
とはいえ、めでたい話だ。
「おめでとう!
」
少しだけ平静を装い、さわやかにお祝いの言葉を発したのは言うまでもない。
それにしてもクリスマスイブにこのような報告をするとは、なかなかしゃれた女性に育ったものだ。きっと小学校の時の担任の先生がよっぽど良かったのだろう。一人アゴに手をやり悦に入る私であった。