昨年度末のことになるのだが,3月28日,29日の両日,上越教育大学(新潟県上越市)で美術科教育学会が開催された。
第2日目には写真のように,大学院博士課程前期1年の山本さんが発表を行った(立派でしょ!

)。入学時から,年に1回の学会発表をするよう指導をしていたので,そのスケジュール通りの発表ということなのだが,実は彼女,学部時代は芸術学部で日本画を描いていたのでこれまで一度も論文を書いたことがない。だから本格的に人前で発表したこともなく,そのため一年をかけて準備してきたってわけだが,結局直前までバタバタ(ジタバタ?

),チョーキンチョー

(笑)状態で発表に臨むことになった(^_^;)。
発表題目は,写真で見えるかな? 「中学校美術科授業における導入方法の検討」。
一言で言えば,美術科授業の導入を工夫することが本当に効果があるのかどうかを検討した研究だ。
一般には教育言説として授業の導入をしっかりと工夫することがとても大切だと考えられている。しかし他教科では,必ずしもそうとは言えないとする研究があり,そこでは導入を工夫しても短縮しても実は学習効果が変わらない場合があることを明らかにしている。むしろ,導入を短縮することによって実質の学習時間が多く取れることになり,メリットが発生する場合もあるというのだ。
この知見に着目した山本さん

は,美術科授業において導入を工夫した授業と導入を短縮した授業を二つ実施し,結果に差があるかどうかを検討した。
題材は鉛筆クロッキー。
その結果,導入を工夫したグループでは,全員が高いスコアで技能を習得することが可能であった。しかし導入を短縮したグループでは,高いスコアを示した者がいた一方,低いスコアのままの者が視点を獲得できず置き去りになっており,スコアにばらつきがあった。このことから,導入を工夫することの特性や必要性を明らかにした

。
発表を聴いて戴いた学会員の先生方からは,「精緻」「論理的」「誠実」「好感」などの身に余る言葉を頂戴した。「とても大学院1年生とは思えない充実した発表です

。」とも言って戴いた。とりわけ,本学出身で全国の美術教育学を牽引されている先生からは,「今後はミクロな視点だけでなく,マクロな視点での研究にも発展させていくとよい」とのご指導と共に,個人的には「とても優秀な学生

だね。博士課程へ進学すればいいのに。」とか,「発表の姿勢もとても誠実で好感が持てたよ。これからどんどん研究を進めていくようにするといいと思う。」との言葉を賜った。やはり先輩はありがたい。
ただ,だからといって手放しで喜ぶことはもちろんできない。それは,彼女自身が実際に研究としてまとめてみることを通して,実は自分自身のものの見方や研究の進め方,設計などにさまざまな課題があることに気づいたから。まぁ,M1での最初の発表はそれこそが一番の目的だし,むしろこの課題を明瞭にできたことこそが一番の成果だったのだが。
以前に書いたことがあると思うんだけれど,山本さんの最大の長所はどんなことがあっても常に前向きなこと。どんなに追い詰められようと追い込まれようと,それが自分自身の専門性を高めることにつながると考え,ふんばり乗り越えることができる。ストレス

を楽しむ

ようになればもちろんもっとよいのだが,これは相当ハードルが高い。まぁ次の課題にしておこう

。