D946/1&2 は、シューベルトピアノ曲自筆譜の中でも、「粗い」書法である。何をそんなに急いだのだろう?
ドイチュ「シューベルト主題カタログ」新版(1978)を開く。D946 前後を見る。1828年5月に「作曲が確定した曲」は以下の通り。
となっている。他の作曲家ならば充分な作曲量かも知れない。しかし「後期シューベルト」としては随分少ない感触だ。そんなハズは無い!
直前の時期に作曲していたのが、幻想曲ヘ短調D940 である。
となっており、4ヶ月の月日を費やしたことが判明している。
であり、幻想曲ヘ短調D940 は貴重な例外である。
「少々後に作曲したことになっている作品」4作品には、大量の下書きが遺されている。
幻想曲ヘ短調 D940 に4ヶ月掛かったことを考えるとこの4曲が1828年5月には既に手が付けられていた可能性は極めて高い。特に、ミサ曲 D950 は、1827年9月27日に出版された 「バスとピアノのための3つの歌曲」作品83 D902 の自筆譜の続きに下書きが遺されているから、随分早い時期に手掛けたようだ。
をここに指摘しておく。「姉妹作」と呼んで差し支えないだろう。
自筆譜が存在しない曲についても考察してみよう。
10月2日には既に完成しており、ライプツィヒのプロープスト宛へ売り込んでいることは判明している。ピアノソナタ以上に月日を掛けて作曲した可能性が大きい。
なことをここに指摘しておこう。6拍子と3拍子の「書法の違い」はあるのだが、聴感上は極めて似ている。
ベーレンライター新シューベルト全集で「ピアノ三重奏曲変ホ長調作品100 D929」より後に作曲されたと断定され順番が逆にされた時は、違和感を覚えた人が多かったことと推測する。「作品99」は、死後の1836年出版だが「作品99」はシューベルト自身が付けた可能性が高いからだ。
1828年2月9日現在では、D898 は完成していなかったと考えられている。楽譜出版社との交渉に全く出て来ないからである。そして1828年10月の売り込み時には既に掲載されていないので、3月~9月の間に 完成 → 売り込み成功 した可能性が高い。
第4楽章が D959 と D960 に似た構造(コーダで Presto)になっており、遅い時期の作品の可能性が高い。
まとめてみよう。1828年5月に作曲されていた作品は
の9曲が最大で考えられる。作曲順はよくわからない。また9曲全てが「1828年5月」に作曲中だったかどうかもわからない。但し ミサ曲D950、変ロ長調ソナタD960、ピアノ三重奏曲変ロ長調D898 は作曲中だった可能性が極めて大きい。
これだけを同時進行で作曲していたならば、D946/1&2 の自筆譜が粗くなったのも無理は無いか!!!
ドイチュ「シューベルト主題カタログ」新版(1978)を開く。D946 前後を見る。1828年5月に「作曲が確定した曲」は以下の通り。
- ピアノ小品 D946(カタログでは「3曲」扱い、楽譜では「2曲のみ1828年5月」
- 連弾のためのアレグロ イ短調 D947
- 「聖霊賛歌」:「男声4重唱 + 合唱」版D948 & 「男声8重唱 + 合唱 + 管楽器伴奏」版D964
となっている。他の作曲家ならば充分な作曲量かも知れない。しかし「後期シューベルト」としては随分少ない感触だ。そんなハズは無い!
直前の時期に作曲していたのが、幻想曲ヘ短調D940 である。
- 下書き 1828年1月 の日付
- 完成浄書稿 1828年4月 の日付
となっており、4ヶ月の月日を費やしたことが判明している。
「下書き」には「日付を入れない」が 後期シューベルトの基本習慣
であり、幻想曲ヘ短調D940 は貴重な例外である。
「少々後に作曲したことになっている作品」4作品には、大量の下書きが遺されている。
- ミサ曲第6番変ホ長調 D950(1828年6月が浄書譜)
- ピアノソナタ第19番ハ短調 D958(1828年9月が浄書譜)
- ピアノソナタ第20番イ長調 D959(1828年9月が浄書譜)
- ピアノソナタ第21番変ロ長調 D960(1828年9月が浄書譜)
幻想曲ヘ短調 D940 に4ヶ月掛かったことを考えるとこの4曲が1828年5月には既に手が付けられていた可能性は極めて高い。特に、ミサ曲 D950 は、1827年9月27日に出版された 「バスとピアノのための3つの歌曲」作品83 D902 の自筆譜の続きに下書きが遺されているから、随分早い時期に手掛けたようだ。
D960第1楽章第2主題 は、D946/2第2エピソード に極めて似た箇所
をここに指摘しておく。「姉妹作」と呼んで差し支えないだろう。
自筆譜が存在しない曲についても考察してみよう。
弦楽五重奏曲ハ長調 D956
10月2日には既に完成しており、ライプツィヒのプロープスト宛へ売り込んでいることは判明している。ピアノソナタ以上に月日を掛けて作曲した可能性が大きい。
D956 第3楽章の構成は D946/1 を拡大した感触
なことをここに指摘しておこう。6拍子と3拍子の「書法の違い」はあるのだが、聴感上は極めて似ている。
ピアノ三重奏曲変ロ長調作品99 D898
ベーレンライター新シューベルト全集で「ピアノ三重奏曲変ホ長調作品100 D929」より後に作曲されたと断定され順番が逆にされた時は、違和感を覚えた人が多かったことと推測する。「作品99」は、死後の1836年出版だが「作品99」はシューベルト自身が付けた可能性が高いからだ。
1828年2月9日現在では、D898 は完成していなかったと考えられている。楽譜出版社との交渉に全く出て来ないからである。そして1828年10月の売り込み時には既に掲載されていないので、3月~9月の間に 完成 → 売り込み成功 した可能性が高い。
第4楽章が D959 と D960 に似た構造(コーダで Presto)になっており、遅い時期の作品の可能性が高い。
まとめてみよう。1828年5月に作曲されていた作品は
- ピアノ小品 D946/1&2
- 連弾のためのアレグロ イ短調 D947
- 「聖霊賛歌」:「男声4重唱 + 合唱」版D948 & 「男声8重唱 + 合唱 + 管楽器伴奏」版D964
- ミサ曲第6番変ホ長調 D950(1828年6月が浄書譜)
- ピアノソナタ第19番ハ短調 D958(1828年9月が浄書譜)
- ピアノソナタ第20番イ長調 D959(1828年9月が浄書譜)
- ピアノソナタ第21番変ロ長調 D960(1828年9月が浄書譜)
- 弦楽五重奏曲ハ長調 D956
- ピアノ三重奏曲変ロ長調作品99 D898
の9曲が最大で考えられる。作曲順はよくわからない。また9曲全てが「1828年5月」に作曲中だったかどうかもわからない。但し ミサ曲D950、変ロ長調ソナタD960、ピアノ三重奏曲変ロ長調D898 は作曲中だった可能性が極めて大きい。
これだけを同時進行で作曲していたならば、D946/1&2 の自筆譜が粗くなったのも無理は無いか!!!