<韓国農業は日本依存度が極めて高い。ミカンは94%が日本品種で、イチゴは日本品種を交配して開発した。さらに農機具も...... >
2020年7月、農林水産省は輸出重点品目の稲、イチゴ、サツマイモ、柑橘、リンゴ、ブドウ、茶など737品種を選定して、中国と韓国のインターネットで販売されている種苗の調査を委託し、日本で品種登録された名称が少なくとも36品種あることが判明した。
中国のサイトで日本品種とみられるイチゴが10品目見つかった。「佐賀清香」は佐賀県の「さがほのか」、「紅顔」は静岡県の「紅ほっぺ」と見られ、韓国でも日本品種と想定される品種が販売されていた。実際に日本の登録品種か、名称だけを使用したかは不明である
「べにはるか」は韓国のサツマイモ栽培面積の4割
20年11月、日本の農研機構が開発したサツマイモ「べにはるか」が韓国で無断で栽培されている実態が明らかになった。「べにはるか」は韓国のサツマイモ栽培面積の4割を占めていた。韓国の農業者らが日本の産地を視察した際に種芋を無断で持ち帰って流出したとみられている。
韓国でサツマイモは、チャプチェやタッカルビなどの食材として使われているが、「べにはるか」の栽培がはじまった2015年頃から焼き芋が広がり、サツマイモケーキやサツマイモラテが登場した。
K-POPアイドルグループ「少女時代」のソヒョンや19年に解散した「miss A」のスジが火付け役となったサツマイモダイエットが注目を浴び、乳製品メーカーの「ビンクレ」は、サツマイモを原料に加えたヨーグルトの販売を開始した。
日本のサツマイモは、アジアやカナダなどでも人気があり、直近10年間で輸出額が10倍以上に膨らんだ。韓国も日本品種のサツマイモの輸出をはじめており、日本の輸出が影響を受ける懸念があるが、国際法上で違法性を問うことは難しい。
「白色エノキ不買運動」、しかしエノキタケは75%が日本品種
韓国農業は日本依存度が極めて高い。ミカンは94%が日本品種で、イチゴは日本品種を交配して開発した。
リンゴはフジが最も多く、津軽も生産量が3番目に多い。韓国の祭礼で欠かせない梨や桃も日本品種の生産量が最も多く、玉ねぎは生産量の1位から3位までを日本品種が独占する。
韓国で日本製品不買運動が続いていた2020年11月5日、韓国大手テレビ局のSBSがバラエティ番組で、韓国で栽培されているエノキタケは75%が日本品種で「日本に毎年10億ウォン(約9400万円)以上のロイヤルティーが支払われている」と紹介し、インターネット上に「白色エノキ不買運動」を呼び掛ける掲示板が登場した。
韓国品種は茶色エノキで、栽培農家は2軒しかなく、白色エノキが95%を占めている。茶色エノキは、腐っていると考える消費者が多いと生産農家は話す。
韓国農村振興庁は、エノキタケは大量生産作物で、国内生産量の60%を占める農家が日本品種に合わせた生産設備を有しており、費用をかけて品種を変えることは難しいと話している。
韓国製農機具のエンジンは50%が日本製
農機具も日本依存が極めて高い。韓国農協がまとめた「農機購入支援事業の融資実績」によると、2013年から2018年5月までの5年間に韓国で販売された農機のうち、トラクターの13.6%、田植え機の40.5%、コンバインの29.9%が輸入機械で、ヤンマー、クボタ、イセキが多かった。なかでも田植え機は、ヤンマー製が26.1%を占めていた。
韓国農機具市場で日本メーカーが占める割合は30%程度だが、韓国製農機具のエンジンは50%が日本製で、自動変速機や電装技術、統合制御システムなどの核心部品は日本製が60-100%を占めており、100%日本製部品で作られた韓国製農機具もあるという。
韓国農業機械1位の大同工業は、自社製エンジンを搭載するが、主要部品を日本から輸入しエンジン以外の核心部品も多くを日本から輸入している。業界2位の東洋物産はヤンマー製エンジンを搭載する。日本政府の輸出管理強化で、米国製やドイツ製への切り替えを検討したが、輸送コストが増える上、エンジンを変えると機械の内部設計をやり直さなければならなくなる。
大同工業は日本政府の韓国向け輸出管理を強化で、部品需給に影響が出る事態を憂慮し、国産化を推進するため政府支援を求めたが、容易ではない。
農業機械の購入者はほとんどが個人農家で、トラブル時の大規模修繕や入れ替えは容易ではなく、同じ農機具を同じ時期に使う特性から代替機の確保も難しい。さらに農家が、信頼性が高く広く普及しているヤンマー製エンジンを搭載した機械を選ぶなど、日本製のニーズが高いのだ。
特許の壁もある。ヤンマーやクボタなど、日本の農機具メーカーは、1999から2017年の間に、トラクターは58%、コンバインは96%、田植え機は89%の核心部品の特許を韓国で取得した。農業機械は需要が限られ、研究開発費の回収は難しい。特許侵害を避けるとなると尚更だ。
韓国の種子自給率は26.2%
韓国の19年の種子自給率は26.2%で、1億2000万ドル余りを米国、中国、日本などから輸入した。稲、麦、唐辛子などは100%自給だが、リンゴ81%、ブドウ96%、ミカン97.7%など、多くを海外に依存している。
韓国農村振興庁は、国産品種の開発と普及に取り組むが、供給量に限界があり、また農家が日本品種を最高と認識していることも普及を妨げる要因になっている。