「ねぇ、テレビを消して音楽聴こうよ。」
家にいる時はほとんどテレビがつけっ放しなっているので時折そう声をかける。
テレビの内容がどれ程理解できているのかは解らないが、ほとんど会話をしなくなった近頃でも、時折「うふふっ」と笑ったり「これ何?」と聞いて来る事に私が安心できるので消すのが怖い。
いつもは一緒に歌えるように童謡や、かぁちゃんの大好きな舟木一夫氏のアルバムをかけているのだが、久々に昔彼女がよく聴いていた「マドンナの宝石」(歌劇『マドンナの宝石』間奏曲エルマンノ・ヴォルク・フェラーリ作曲)をかけてみた。かぁちゃんが喜ぶと思ったから。
・・・かぁちゃんは無表情だった。
「ほれほれ、マドンナの宝石だよ~。」と顔を覗き込んで話しかけたのに
「しらない・・・。」と、ぽつりとつぶやいた。
「んじゃ、かずさん、かけてあげるよ。」と、すぐにいつものアルバムに変えると何だがほっとしたような表情で目を閉じて「高校三年生」の前奏が聴こえてくると、体を揺らしてリズムを取り始めた。
へぇ、自分でこんな事をするようになったんだ。
近頃左手が以前に増して硬くなってきているので、歌いながら両手を取って揺らしたり、私が側で踊ったりして笑いを取るのも案外役に立っているのかもなぁ、と少し嬉しくて一緒にリズムを取りながら歌った。
けど心が少し寒いのは「マドンナの宝石」の美しくも物悲しいメロディが頭から離れないせいだろう。
・・・忘れてしまったのだろうか。あんなに大好きだったのに。
明日またかけてやろう、かぁちゃんが思い出すまで続けてみよう。
大好きだった曲まで忘れさせてたまるか。
これ以上、いろんな事を忘れさせてたまるか。
家にいる時はほとんどテレビがつけっ放しなっているので時折そう声をかける。
テレビの内容がどれ程理解できているのかは解らないが、ほとんど会話をしなくなった近頃でも、時折「うふふっ」と笑ったり「これ何?」と聞いて来る事に私が安心できるので消すのが怖い。
いつもは一緒に歌えるように童謡や、かぁちゃんの大好きな舟木一夫氏のアルバムをかけているのだが、久々に昔彼女がよく聴いていた「マドンナの宝石」(歌劇『マドンナの宝石』間奏曲エルマンノ・ヴォルク・フェラーリ作曲)をかけてみた。かぁちゃんが喜ぶと思ったから。
・・・かぁちゃんは無表情だった。
「ほれほれ、マドンナの宝石だよ~。」と顔を覗き込んで話しかけたのに
「しらない・・・。」と、ぽつりとつぶやいた。
「んじゃ、かずさん、かけてあげるよ。」と、すぐにいつものアルバムに変えると何だがほっとしたような表情で目を閉じて「高校三年生」の前奏が聴こえてくると、体を揺らしてリズムを取り始めた。
へぇ、自分でこんな事をするようになったんだ。
近頃左手が以前に増して硬くなってきているので、歌いながら両手を取って揺らしたり、私が側で踊ったりして笑いを取るのも案外役に立っているのかもなぁ、と少し嬉しくて一緒にリズムを取りながら歌った。
けど心が少し寒いのは「マドンナの宝石」の美しくも物悲しいメロディが頭から離れないせいだろう。
・・・忘れてしまったのだろうか。あんなに大好きだったのに。
明日またかけてやろう、かぁちゃんが思い出すまで続けてみよう。
大好きだった曲まで忘れさせてたまるか。
これ以上、いろんな事を忘れさせてたまるか。