冷たい風が真正面から挑んで来る。
坂道でもないのに自転車を立ちこぎして、やっとこさ前進。耳元でひゅうひゅうと風が唸りながら通り過ぎる。
普段なら結構好きなシチュエーションだ。「負っけてたまるかぁ!」と足に力が入って♪こ~や~をわたるかぜ ひょぉひょ~ぉと~♪なんて鼻歌も出てくる。
けど、今日は自分でも目が据わってるし眉間に皺が寄っているのが分かる。
ぺこちゃん、腰を痛めて痛いのはよく分かる。分かりすぎる程分かる。
横になったり、その姿勢から起き上がる時が一番辛いんだよね。私も寝るのが億劫だった。けどさ~、ちゃんと歩けるんだからトイレは早めに行こうよ。
風邪をひいた時もそうだけど、具合が悪い時にはどうしてもトイレに間に合わない。と言うより、起きるのが辛いのでギリギリまで我慢しすぎてしまう傾向は以前からあり、トイレのドアを開けるとそこは大洪水だった何て事も何度かある。
かぁちゃんをデイサービスに送り出して洗濯を済ませて帰宅すると、ぺこちゃんはまだ起きていない。かぁちゃんの診察の日だったので程なく出かけて、ついでにぺこちゃんの高血圧の薬をもらって帰って来たらまだ布団を頭から被っている。昼過ぎに「そろそろ起きれば。」と声をかけても知らんふり。
さては前日「自分で頑張って起きないと知らないよ。」と突き放した事にすねているのかと思ったのだが・・・う~。
布団を通り越して、マットレスまでびっちゃんこ。自分でもどうしていいのか分からずに狸寝入りを決め込んだらしい。
三日連続で少々失敗したばかりだったので、私も幾分頭に血が上ってしまって
「早く起きてシャワーに行っておいで。」と、明らかに冷たく言ってしまった。
「痛くて起きれない。」と言うので「頑張ってみて出来なかったら手伝ってあげるから。」と振り返らずに引き戸を閉めると。しばらくして自分で起きて部屋から出てきた。わわっ、めちゃくちゃ機嫌が悪い。
よく見ると、足元にボアシーツが丸めて置いてあったし脱いだ服も積んである。
ちゃんと夜中に自力で着替えているのだから、動けない訳でもないと思うのだが本当がわからない。どの程度痛いのか、本当はどこまで出来ないのか。本当は何をして欲しいのか・・・いつものお喋りはいつも通りに元気なのに、本当の気持ちがわからない。もどかしいし、正直言って腹立たしい。
いや、少しは分かってる・・・。手を貸せば全体重をかけてしまう辺り、ぺこちゃんが求めているのは小さな子供が母親に求めるような、そんな風に甘えられる相手だ。それは電車に乗っていても隣に座るなり頭を肩にずっしりと乗せてくるので気付いていた。接触拒否傾向の私にとっては苦痛以外の何者でもないが、邪険にはできない・・・。けど、私はそんな風に甘えるのも甘えさせるのも大の苦手。
冷たいと自覚しているがどうしようもない。
ぺこちゃんやかぁちゃんに接していると、自分の中の弱さや脆さ、冷酷さ、狡さや高慢さと嫌でも向き合う事になってしまう。
私ってこんなに嫌な奴だったかなって思う事も少なくはない。
一夜明けて今朝。ぺこちゃんは何事もなかったように自分でさっさと準備をしてディサービスへいそいそと出かけて行った。
おい!いったい昨日までのは何だったんだ?
ベランダの窓を開放してから、ぺこちゃんの部屋に息を詰めて入る。窓を開けると一気にカーテンが大きく後ろになびき、こもった空気が一瞬にして新しく生まれ変わる。頬打つ風が思いっきり冷たい。
風よ吹け!向かい風なら尚の事もっと強く吹け。ついでに私の心も洗い流せ。
坂道でもないのに自転車を立ちこぎして、やっとこさ前進。耳元でひゅうひゅうと風が唸りながら通り過ぎる。
普段なら結構好きなシチュエーションだ。「負っけてたまるかぁ!」と足に力が入って♪こ~や~をわたるかぜ ひょぉひょ~ぉと~♪なんて鼻歌も出てくる。
けど、今日は自分でも目が据わってるし眉間に皺が寄っているのが分かる。
ぺこちゃん、腰を痛めて痛いのはよく分かる。分かりすぎる程分かる。
横になったり、その姿勢から起き上がる時が一番辛いんだよね。私も寝るのが億劫だった。けどさ~、ちゃんと歩けるんだからトイレは早めに行こうよ。
風邪をひいた時もそうだけど、具合が悪い時にはどうしてもトイレに間に合わない。と言うより、起きるのが辛いのでギリギリまで我慢しすぎてしまう傾向は以前からあり、トイレのドアを開けるとそこは大洪水だった何て事も何度かある。
かぁちゃんをデイサービスに送り出して洗濯を済ませて帰宅すると、ぺこちゃんはまだ起きていない。かぁちゃんの診察の日だったので程なく出かけて、ついでにぺこちゃんの高血圧の薬をもらって帰って来たらまだ布団を頭から被っている。昼過ぎに「そろそろ起きれば。」と声をかけても知らんふり。
さては前日「自分で頑張って起きないと知らないよ。」と突き放した事にすねているのかと思ったのだが・・・う~。
布団を通り越して、マットレスまでびっちゃんこ。自分でもどうしていいのか分からずに狸寝入りを決め込んだらしい。
三日連続で少々失敗したばかりだったので、私も幾分頭に血が上ってしまって
「早く起きてシャワーに行っておいで。」と、明らかに冷たく言ってしまった。
「痛くて起きれない。」と言うので「頑張ってみて出来なかったら手伝ってあげるから。」と振り返らずに引き戸を閉めると。しばらくして自分で起きて部屋から出てきた。わわっ、めちゃくちゃ機嫌が悪い。
よく見ると、足元にボアシーツが丸めて置いてあったし脱いだ服も積んである。
ちゃんと夜中に自力で着替えているのだから、動けない訳でもないと思うのだが本当がわからない。どの程度痛いのか、本当はどこまで出来ないのか。本当は何をして欲しいのか・・・いつものお喋りはいつも通りに元気なのに、本当の気持ちがわからない。もどかしいし、正直言って腹立たしい。
いや、少しは分かってる・・・。手を貸せば全体重をかけてしまう辺り、ぺこちゃんが求めているのは小さな子供が母親に求めるような、そんな風に甘えられる相手だ。それは電車に乗っていても隣に座るなり頭を肩にずっしりと乗せてくるので気付いていた。接触拒否傾向の私にとっては苦痛以外の何者でもないが、邪険にはできない・・・。けど、私はそんな風に甘えるのも甘えさせるのも大の苦手。
冷たいと自覚しているがどうしようもない。
ぺこちゃんやかぁちゃんに接していると、自分の中の弱さや脆さ、冷酷さ、狡さや高慢さと嫌でも向き合う事になってしまう。
私ってこんなに嫌な奴だったかなって思う事も少なくはない。
一夜明けて今朝。ぺこちゃんは何事もなかったように自分でさっさと準備をしてディサービスへいそいそと出かけて行った。
おい!いったい昨日までのは何だったんだ?
ベランダの窓を開放してから、ぺこちゃんの部屋に息を詰めて入る。窓を開けると一気にカーテンが大きく後ろになびき、こもった空気が一瞬にして新しく生まれ変わる。頬打つ風が思いっきり冷たい。
風よ吹け!向かい風なら尚の事もっと強く吹け。ついでに私の心も洗い流せ。