『あざみの歌』は まだ歌えますか

泣いて、笑って、歌って介護!!そんな日常の過去の記録と
新たに今一度自らを見つめてぼちぼちと戯言なりを綴ります。

本とカセットテープとかぁちゃん

2006年03月06日 04時19分46秒 | かぁちゃんにまつわる話
引越し荷物はまだ片付かない。いったいどうしたらこんなに荷物があるんだっていう程、一人暮らしにしては物が多いと思う。
けど、それらはかぁちゃんのあまり平穏ではなかった71年の人生がつまっているのだから、あんまり無碍にはできないなぁと思いつつ、古びた大学ノートに綴られた文字を拾ってつい読んでしまう。セピア色に変色して閉じ糸もほつれてしまい、所々頁が破けた一番古いノートには「歎異抄」が書かれている。私は未読だが、かぁちゃんは随分若い頃に読んだらしく、本を買うお金が無くて先生から借りた物を自分で写し取っていたようだ・・・思えば、元気な頃から我儘の方が目に付いてしまっていたが、かぁちゃんもまた、そういう時代をひたすら生きて来た人だったのだ。ブルーのインクで書かれた文字は美しい。私と違ってとても綺麗な文字を綴っていたのだと思うと、名前さえ満足に綴れなくなってしまった事がやけに悲しい・・・こんな風に思いを過去へ飛ばしてしまうから、いつまでたっても片付かないんだよなぁ(苦笑)

それにしても、本とカセットテープの多さときたら・・・いや、こればかりは人の事は言ってられない。荷物を整理しながら、自分の物も処分していかなくっちゃな、なんて本気で考えてしまう。
このテープを一日一本ずつ聴いたとしても数ヶ月はもつだろなぁと、そのうちの一本、まずはいわゆる「青春歌謡」をかけながら後片付けをしていた。
かぁちゃんは、その傍らで机に座ってコーヒーのマグカップを横ちょに置いて、時折リズムに合わせて首を縦に小さく振りながら文庫本をめくったり、閉じたりしている。「出家とその弟子」・・・若い頃から好きだったようで、私も小学校の時に読まされたのだけれど、当時はあまりよく解らなかったように記憶している。表題はちゃんと読めたので、思わず「えらい!読めた、読めた。」と頭をなでなで、もうまるっきり子供扱いだなと苦笑しつつ、頁をめくるだけで内容は読めていない様子を横目で見ながら、それでも不思議に心が落ち着いた。

ゆるやかに、穏やかに時間が流れる。50年代の音楽のリズムは私にとっても心地よい。・・・しかし、なんだかおとなしすぎやしませんか?

かぁちゃん!!そのままだったら、本当に素敵なおばぁちゃまだったのに。
大きな粗相をしていては、そりゃいかんでしょう。私は一人血相を変えてありゃりゃこりゃりゃと駆けずり回る。「何で言わないんだよ~!」と大きな声で言うと、かぁちゃんは「うふふ。」と笑う・・・おいっ!

こんな風に、これからも時を過ごすのだろうな・・・。一瞬目の前の風景がセピア色に映る。自分自身の過去が一気に押し寄せる。ぎゅっと目を閉じてそれを追い払う。カセットテープは全て出したが、本は悪いけど、極一部にさせてもらおう。しばらくはダンボールの中に保存しておこう。・・・いつかその本を出して私は読む事があるのだろうか。
三日間ほとんど眠らなかったかぁちゃんは、さすがに今日は疲れてしまったようで随分大人しく、ようやく眠る事ができたようだ。どうか、しばらくはこのままで、と祈らずにはいられない。
コメント
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