【「祭りの威力】
ぺこちゃんを我が家に引き取る話が決まった時、
背の君は「すまん、頼む・・・。」と言った。
そう、私は確かに頼まれたのですよ。それは彼の眉間の皺と共にはっきり覚えてる。
私は「はいよっ!」とニカッ
と笑ってガッツポーズ
うん、うん、確かにそれも覚えてる。
だけど・・・
ちょいと今日は赤裸々告白をば・・・かなり長くなりますが・・・
ぺこちゃんには前の職場で長い間付き合っていた、同じ障害を持つ彼氏がいたのですよ。
ある日、義母から「どうしたもんじゃろ?困った事ねぇ・・・。」と悩ましく電話。
ぺこちゃんが彼の為に、色んなものをつけで買っては貢いでるから注意するようにと
寮母さんが怒って電話をしてきたとの事。
・・・いやぁ、それは・・・だって、生活指導は身近な人しか出来ないじゃん?
それから程ない暮れの事、背の君の実家に帰ると、何とその彼氏がおりまして・・・
うん、ぺこちゃん好みのなかなか男前の青年でありましたが
その彼、何故かこちらの存在は全く無視でチェーンスモーク・・・。
義母は気を遣って何も言わず、ただ息子に「何とか言ってくんしゃい。」とぽつりと告げた。
背の君は、最初は黙って一人で二階へ行ってしまったのだけど、
暗くなってもただ煙草を吸い続けるだけの彼に、ついに怒っちゃった
もちろん、ひどくじゃないけれど「とにかく今日は家に帰りなさい。」って。
彼をタクシーに乗せた後で、兄として妹を嗜めたのだけれど、
それは当たり前の事なんだけど、ぺこちゃんに普通の言い方で伝わる訳もなく、
その日から、ぺこちゃんは兄ちゃんが大嫌いになっちゃったのだと思う。
障害の有るな無しに関わらず、人は誰でもオトナになって行く。
相手を好きだと言う思いも、体を求める事も、もっと純粋にストレートなのだと思う。
それから数年後、寮母さんから今度は我が家へ電話があって、
ぺこちゃんが彼と公園で性的行為をしていたので、警察に補導されたと連絡があった。
「問題行動のある人は、工場縮小の折に最初に出ていってもらいます。
ぺこちゃんはそのリストに上がっています。」だって・・・
だからさ、生活指導は、普段一緒に生活してない私達には出来ないって!!
電話を受けたのは私・・・私だって少なからずうろたえて夫にストレートに報告した。
背の君がぺこちゃんと暮らしたのは、彼女が小学校1年生まで。
障害のある妹の事をいつも心配していたのは事実で、
背の君だけが兄弟の中で自分の結婚式にぺこちゃんを呼んだ事を考えると
きっと今もそうなのだ。表現が下手なだけで。
ただ、小さい頃の妹は受け入れられても、大人になった妹は受け入れ難いのかな??
それに、小さい頃の辛い思い出がトラウマになっているような所もある。
私に、そういう配慮が少しでも出来ていたら良かったのだけど、
何と言っても、右を向けって言われたら右を向いて来た(嫌でも
)嫁なもんで、
全てを任せられる存在だった訳だから、彼のそいう苦しさが私には理解できていなかった。
ぺこちゃんを迎えに閉鎖された工場へ行った時、
帰りの、家へ向かう電車の中で、背の君は同じ車両に乗る事も出来なかった。
どうしようもない拒否感はそこまで厳しいものだったようだ。
ぺこちゃんにしたって、「行け!」と言われたから仕方なく
大嫌いな兄ちゃんの所に「来てやった!」のである。
・・・うまくいく筈、ねぇじゃねぇかぁぁぁ・・・
かぁちゃんの事も、甥っ子の障害の事も、すんなり受け入れてくれた背の君なのに、
ぺこちゃんの事だけは、未だに受け入れられない。
もしも、ぺこちゃんの事について、私達夫婦が二人で向き合えていたなら、
最初の頃に私が壊れてしまう事はなかったと思う。
だって、話題にする事さえはばかられたのだもの。
私が壊れかけたのは、かぁちゃんの事もあるにはあるけど、
ぺこちゃんの事を何も分からないのに、一人で受け入れなきゃいけなかった事。
家族の誰もが義母も義姉も、ぺこちゃんの障害の度合いが認識できていなかった事。
同じ障害を持っていても、サポート次第で日常生活が出来る人達は、
工場側の手助けもあって結婚し、新生活をしている友達も何人かいらっしゃるようで、
義母も、そしてぺこちゃん自身も「結婚」と言う事を当然の事と理解していたようだけど、
近くで見ている人達は、それを不可能だと判断していたんだって・・・。
そこにたどり着くまでに、随分時間がかかってしまった。
でも、たどりついた所で、それは私だけが納得する事で、周りは何も変わらないのだもの。
・・・あれぇ?誰もいないじゃないよ~~~っ・・・
・・・気がつけば一人・・・。
一人でいるのは大好きだけど、この時の孤独感だけはあまり思いだしたくない。
その二人が、この夏初めてぺこちゃんのデイの長期の夏休みがあったので、
九日間、同じ屋根の下で朝から晩まで一緒だったのだ。
兄ちゃんの気配を感じると、ぴしゃりと自分の部屋のガラス戸を閉め
「もうっ!暑い~っ!」と舌打ちを繰り返す妹と、
眉間に皺を寄せて、黙して語らずの兄。
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
ご機嫌を取るのも限界があるってもんで、
加えて、小刻み睡眠状態が2週間程続いていた最中で、体調も絶不調。
ついに、途中から、忘れていたあの感覚が蘇って来てどうしようもなくなっちゃった
このまま落ち込んで、またあのわけの解らない状態に・・・と思った時の
「休みが終われば何とかなる!・・・祭りが私を待っている
」
この自己暗示の強力さと来たら。全ての薬に勝る効き目があるってもんで・・・
それにね、多分私は強くなっているのですよ。
「あのなぁ、あんたら、もう5年過ぎたんやで、ええかげんにし~や~。」
「ちょっとぉ。私の妹とちゃうねんで・・・あんたの!!妹やで!!」
と、心の中で凄む技をいつしか習得していたのですよ。
ふふふふ・・・「祭り」は私を強くした
それにぺこちゃん、前回の診察で、肺の影が悪化している事が判明。
やっと減らしたステロイド剤が、また増える事になってしまった。
どうやら数年単位での長い目で病気と向き合わねばならなくなったようだ。
もしかしたら、一生なのかもしれない・・・。
いつまでも柔な事は言ってられないのだよ、背の君。
しかしね、いつも思うの。
もし、私が突然いなくなったら、どうするんだろうね、あの兄妹
・・・ねぇ・・・祭りに行ったまま帰らないって事もあるかも・・・よ
・・・ギターを持った渡り鳥みたいに・・・
ぺこちゃんを我が家に引き取る話が決まった時、
背の君は「すまん、頼む・・・。」と言った。
そう、私は確かに頼まれたのですよ。それは彼の眉間の皺と共にはっきり覚えてる。
私は「はいよっ!」とニカッ
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うん、うん、確かにそれも覚えてる。
だけど・・・
ちょいと今日は赤裸々告白をば・・・かなり長くなりますが・・・
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ぺこちゃんには前の職場で長い間付き合っていた、同じ障害を持つ彼氏がいたのですよ。
ある日、義母から「どうしたもんじゃろ?困った事ねぇ・・・。」と悩ましく電話。
ぺこちゃんが彼の為に、色んなものをつけで買っては貢いでるから注意するようにと
寮母さんが怒って電話をしてきたとの事。
・・・いやぁ、それは・・・だって、生活指導は身近な人しか出来ないじゃん?
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それから程ない暮れの事、背の君の実家に帰ると、何とその彼氏がおりまして・・・
うん、ぺこちゃん好みのなかなか男前の青年でありましたが
その彼、何故かこちらの存在は全く無視でチェーンスモーク・・・。
義母は気を遣って何も言わず、ただ息子に「何とか言ってくんしゃい。」とぽつりと告げた。
背の君は、最初は黙って一人で二階へ行ってしまったのだけど、
暗くなってもただ煙草を吸い続けるだけの彼に、ついに怒っちゃった
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もちろん、ひどくじゃないけれど「とにかく今日は家に帰りなさい。」って。
彼をタクシーに乗せた後で、兄として妹を嗜めたのだけれど、
それは当たり前の事なんだけど、ぺこちゃんに普通の言い方で伝わる訳もなく、
その日から、ぺこちゃんは兄ちゃんが大嫌いになっちゃったのだと思う。
障害の有るな無しに関わらず、人は誰でもオトナになって行く。
相手を好きだと言う思いも、体を求める事も、もっと純粋にストレートなのだと思う。
それから数年後、寮母さんから今度は我が家へ電話があって、
ぺこちゃんが彼と公園で性的行為をしていたので、警察に補導されたと連絡があった。
「問題行動のある人は、工場縮小の折に最初に出ていってもらいます。
ぺこちゃんはそのリストに上がっています。」だって・・・
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だからさ、生活指導は、普段一緒に生活してない私達には出来ないって!!
電話を受けたのは私・・・私だって少なからずうろたえて夫にストレートに報告した。
背の君がぺこちゃんと暮らしたのは、彼女が小学校1年生まで。
障害のある妹の事をいつも心配していたのは事実で、
背の君だけが兄弟の中で自分の結婚式にぺこちゃんを呼んだ事を考えると
きっと今もそうなのだ。表現が下手なだけで。
ただ、小さい頃の妹は受け入れられても、大人になった妹は受け入れ難いのかな??
それに、小さい頃の辛い思い出がトラウマになっているような所もある。
私に、そういう配慮が少しでも出来ていたら良かったのだけど、
何と言っても、右を向けって言われたら右を向いて来た(嫌でも
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全てを任せられる存在だった訳だから、彼のそいう苦しさが私には理解できていなかった。
ぺこちゃんを迎えに閉鎖された工場へ行った時、
帰りの、家へ向かう電車の中で、背の君は同じ車両に乗る事も出来なかった。
どうしようもない拒否感はそこまで厳しいものだったようだ。
ぺこちゃんにしたって、「行け!」と言われたから仕方なく
大嫌いな兄ちゃんの所に「来てやった!」のである。
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かぁちゃんの事も、甥っ子の障害の事も、すんなり受け入れてくれた背の君なのに、
ぺこちゃんの事だけは、未だに受け入れられない。
もしも、ぺこちゃんの事について、私達夫婦が二人で向き合えていたなら、
最初の頃に私が壊れてしまう事はなかったと思う。
だって、話題にする事さえはばかられたのだもの。
私が壊れかけたのは、かぁちゃんの事もあるにはあるけど、
ぺこちゃんの事を何も分からないのに、一人で受け入れなきゃいけなかった事。
家族の誰もが義母も義姉も、ぺこちゃんの障害の度合いが認識できていなかった事。
同じ障害を持っていても、サポート次第で日常生活が出来る人達は、
工場側の手助けもあって結婚し、新生活をしている友達も何人かいらっしゃるようで、
義母も、そしてぺこちゃん自身も「結婚」と言う事を当然の事と理解していたようだけど、
近くで見ている人達は、それを不可能だと判断していたんだって・・・。
そこにたどり着くまでに、随分時間がかかってしまった。
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一人でいるのは大好きだけど、この時の孤独感だけはあまり思いだしたくない。
その二人が、この夏初めてぺこちゃんのデイの長期の夏休みがあったので、
九日間、同じ屋根の下で朝から晩まで一緒だったのだ。
兄ちゃんの気配を感じると、ぴしゃりと自分の部屋のガラス戸を閉め
「もうっ!暑い~っ!」と舌打ちを繰り返す妹と、
眉間に皺を寄せて、黙して語らずの兄。
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それにね、多分私は強くなっているのですよ。
「あのなぁ、あんたら、もう5年過ぎたんやで、ええかげんにし~や~。」
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ふふふふ・・・「祭り」は私を強くした
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それにぺこちゃん、前回の診察で、肺の影が悪化している事が判明。
やっと減らしたステロイド剤が、また増える事になってしまった。
どうやら数年単位での長い目で病気と向き合わねばならなくなったようだ。
もしかしたら、一生なのかもしれない・・・。
いつまでも柔な事は言ってられないのだよ、背の君。
しかしね、いつも思うの。
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