国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

マドリッド・ジブラルタル間航空路の12/16開設は英・イスラエル連合による地中海帝国の終焉か?

2006年12月19日 | 欧州
12月16日にジブラルタルとマドリッドの間の定期航空便が開始された。イベリア航空は現在1日1往復運行しており、英国航空も5月から定期便を運行する。1713年にスペインから英国に割譲されて以来スペインはジブラルタルの返還を要求しており、この30年間スペインからジブラルタルへの航空便を禁止してきた。そのため、ジブラルタルへの航空路線はほぼ全てが英国からの路線であった。1969年から1985年までの期間は陸上国境の道路まで封鎖されていた。しかし、2006年9月に航空便再開の協定が両国間で合意され、今回の就航になった。  wikipediaによるとジブラルタルは経済の70%を英国軍基地に依存している。ジブラルタルは地中海の西の端の地政学的要地にあり、ここからマルタ島やキプロス島の英国軍基地を経てイスラエルに至る経路を英国が支配することは国際金融資本の「地中海帝国」支配の要であった。 スペインとジブラルタルの間の国境線の閉鎖や航空路線の禁止といった処置は、一見スペインの英国に対する領土返還要求を反映しているように見えるが、実態は逆であると思われる。 ジブラルタル空港の付近のスペイン領には空港はなく、最も近い空港は直線距離で200km弱離れたマラガ空港とヘレス空港で、年間利用者はマラガ空港で1267万人、ヘレス空港で130万人である。マラガ周辺からジブラルタルにかけての海岸地帯はコスタ・デル・ソル(太陽海岸の意味)と呼ばれる日照日の多いリゾート地帯であり、英国人やドイツ人などが多数訪問している。ジブラルタル空港が英国以外の航空会社に解放されるならば、ドイツ人を含めた英国以外の欧州北部の観光客が押し掛けることは間違いない。また、ジブラルタル観光がコスタ・デル・ソル観光と一体化することで、ジブラルタル経済がスペイン南部のアンダルシア州の経済に吸収統合される効果もあるだろう。人口約10万人のアルヘシラスなど、隣接スペイン領土地域の住民の数も多く、地域住民の利用も見込まれる。 このように考えると、ジブラルタル・スペイン間の陸上国境閉鎖や航空路線禁止は、ジブラルタルの観光業の発展、ジブラルタル経済のアンダルシア州への実質的吸収を抑制し、英国と強い繋がりを持つ軍事基地としてジブラルタルを存続させることに貢献してきたと思われる。 . . . 本文を読む
コメント (2)