国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

中国政府が自衛隊機派遣を要請したのはなぜか?

2008年05月29日 | 中国
5月28日に、中国政府が自衛隊機の派遣を要請したというニュースが報道された。実現すれば、日本軍が中国領土内で活動するのは第二次大戦以来初めてとなる。地震の被災地である四川省は第二次大戦中の重慶爆撃の記憶が残っていると思われ、地元民は複雑な感情だろう。中国国内では航空輸送力が不足しているとは思えず、自衛隊の派遣は政治的意味合いが深いと思われる。地震発生から二週間以上経過した今なぜ自衛隊機派遣を中国政府は要請したのだろうか?その答えはダライラマ訪欧にあると思われる。 5月13日から5月末までの予定で現在、ダライラマがドイツとイギリスを訪問している。ダライラマは各地で講演会を開催している他、ドイツではウィチョレクツォイル経済協力開発相が政府代表として会談、対中支援停止を決定しているし、英国ではブラウン首相やチャールズ皇太子と会談している。先の聖火リレー騒動の時にはフランスが中心になっていたが、今回は残る欧州の大国である英独両国の政府がダライラマを支持したことになるのだ。このことは中国政府にとっては大打撃である。また、中国政府が厳しく批判するダライラマを欧米の世論は歓迎している(シャロン・ストーンの発言はその象徴)ことも重要である。ダライラマ訪欧で国際的孤立が更に悪化した中国は、難局を打開するためにG8の一員である日本との友好関係の推進がどうしても必要になったのだと思われる。 5月18日に既に米軍機が成都に到着していることは、中国が米国との友好関係を望んでいることを示していると思われる。米国は現時点では日本と同様に中国の仮想敵国であるが、第二次大戦中は同盟国であった。第二次大戦中に敵国で現在も仮想敵国である日本の自衛隊機の派遣は中国の国民感情から考えてより抵抗が大きいと思われる。しかし、その抵抗を乗り越えねばならないほど現在の中国の国際的孤立は深刻である、ということだろう。 なお、自衛隊機が日本からもし北京までの輸送を行う場合は韓国の領空を通過することになるが、韓国政府がそれを容認するかどうかという問題も注目される。竹島問題で日韓両国の関係が冷却化している今、韓国政府も難しい選択を迫られそうだ。 . . . 本文を読む
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